架線柱倒れにトンネル白煙、相次ぐJR事故からビジネスマンが学ぶこと:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/5 ページ)
先日のJR東日本の架線柱倒壊事故は大きな交通マヒを起こした。しかしその前にJR北海道が青函トンネル内で白煙事故を起こし、JR西日本は北陸新幹線で給水ホースを外し忘れた。事象も原因も異なるが、3つの事故に共通する失策がある。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP。
4月から新年度が始まり、大都市のラッシュ時間帯の電車が遅れ気味だ。通勤電車に慣れない新入生や新入社員が奮闘しているからだ。冬の着ぶくれラッシュのようなもので、季節の風物詩とも言える。対応する駅員や車掌も大変だ。皆さん頑張ってください。通勤しない私が言うなんて、大きなお世話だけど。
さて、新入社員の皆さんは研修で「ホウレンソウ」を教わったころだろうか。26年前、新入社員の私もそうだった。ホウは報告、レンは連絡、ソウは相談。「困ったことがあったら、失敗したら、迷ったら、先輩や上司にすぐ伝えなさい」という標語だ。Wikipediaによると、ホウレンソウの始祖は山種証券社長の山崎富治氏。1986年に著書「ほうれんそうが会社を強くする」がベストセラーになったという。山崎氏は2014年4月16日に亡くなったそうで、昨日が一周忌だった。
山崎氏の著書を拝読していないけれど、私にとってホウレンソウの意味は、失敗を最小限にとどめる知恵だ。何かに失敗した場合、上司や先輩に連絡する。それは失敗の告白や叱られるためではない。なぜなら、上司や先輩も、たいていは似たような失敗をやらかしており、そのまた上司や先輩の助けを借りて解決した経験があるからだ。
失敗が深刻な場合は、上司や先輩が適切に対処してくれる。自分だけで失敗を解決しようとすると事態を悪化させてしまうかもしれない。逆に、自分が考えているほど深刻な失敗ではない場合もある。相談すれば、実は一人で悩んでいるよりも深刻ではなかったりする。いずれにしても、わずかなことでもホウレンソウは大事だし、失敗を隠すよりも好印象だ。解決の後は「これで成長できたな」と励まされるだろう。
そして、新入社員にホウレンソウを教えるからには、上司もホウレンソウの対処を心得ておく必要がある。最近良き反面教師が現れた。JR東日本、JR北海道、JR西日本だ。ありがたい。彼らに学ばせていただこう。
関連記事
- 鉄道のトンネルは、安全なのか
中央高速道路の笹子トンネルで天井に張られたコンクリート板が崩れ落ちるという、残念な事故が起きた。鉄道にもトンネルがあり、過去にいくつも事故を経験している。現在の鉄道トンネルの安全性はどうなっているのだろうか。 - 鉄道会社の「虚偽申告」 鉄道事故の原因究明は十分か?
2012年2月に起こった鉄道の脱線事故で、JR北海道が提出した記録に「改ざん」があった。事故調査委員会はJR北海道の虚偽を見破った。この改ざんは直接の事故原因ではなかったが、過去の事故はどうか。再検証が必要なのではないか。 - フランスの列車事故は他人事でない――日本にも警鐘を鳴らしている
フランスで大きな列車事故が起きた。7両編成の特急列車が駅を通過しようとしたところ脱線し、少なくとも7人が死亡。重傷者多数。原因は線路にあるという。その背景に鉄道経営のトレンド「上下分離」がありそうだ。 - 運転士の失神・発作……列車は大丈夫なのか
京都でクルマが交差点に突入し、8人が死亡する事故が起きた。ドライバーが病気で失神していた可能性もあるという。鉄道の世界はワンマンカーが増えているが、もし運転士が運転中に意識を失えばどうなるのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.