地下よりも空が最適? 都市型ロープウェーに注目だ:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/4 ページ)
箱根山の噴火警戒レベルが2になって、箱根ロープウェイが全面運休になった。ところで、ロープウェーのメリットは観光地だけではなく、都市でも有効だ。東京都江東区が都市型ロープウェーを提案している。区長は「夢」と言うけれど、意外と良い案かもしれない。
江東区が提案する「都市型ロープウェー」
2014年6月6日。東京都江東区長は定例記者会見で「江東湾岸エリアにおけるオリンピック・パラリンピックまちづくり基本計画アウトライン」を発表した。江東区湾岸エリアは中央区湾岸エリアと並んでオリンピック競技場が集積する。そのための街作りを進めるにあたっては、オリンピック後も見据える必要がある。
オリンピック後の街作りは、オリンピックの遺産(レガシー)活用という意味で、オリンピック・レガシー問題と呼ばれている。東京都は同年11月にこの問題を検討する委員会を設置した。江東区の発表はこれに先駆けた提案という意味合いがある。「アウトライン」とした理由は、江東区が進める街作り基本計画の中から、特に競技場整備関連の事項について東京都に提案する「抜粋案」だからだ。
江東区案は「オリンピック・パラリンピック施設設計に先立つ提案」の交通手段として「都市型ロープウェーの導入」「水上バスステーションや水陸両用バス用スロープの整備」を挙げている。水辺を生かし、道路にとらわれない交通手段を検討したいようだ。都市型ロープウェーの建設予定地は「有明北」「有明南」「豊洲地区」を挙げた。有明北地区は格闘技アリーナとして知られるイベントホール「ディファ有明」、「有明テニスの森公園・有明コロシアム」がある。有明南地区は「東京ビッグサイト」があり、豊洲は江東区の湾岸新都心というべきエリアで、東京メトロ有楽町線とゆりかもめが接続する。
報道によると、総工費は約215億円とのこと。ロープウェーの相場より高めの気がするけれど、きっとフニテル式のような最新式を想定しているのだろう。それでも大江戸線1キロメートル分より安い。
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