“若手”の「パルム」が、発売後7年で8倍も売れた理由:水曜インタビュー劇場(アイス公演)(4/7 ページ)
発売してから今年で10年目の「PARM(パルム)」(森永乳業)が、ビッグブランドの中に食い込んでいる。アイスクリーム市場は定番商品が強いのに、なぜ“若手”のパルムは売れているのか。その謎に迫った。
発売当初は売れなかった
土肥: 次に「口どけ」について聞かせてください。私の知り合いは「パルムは口の中に入れるとチョコとアイスが同時に溶ける。それがいい」と言っていました。
谷口: チョコアイスの多くは、チョコがパリパリしていて、食べるときに落ちたり、口の中でアイスが先に溶けてチョコが残りますよね。パルムのチョコは、口の中の温度で液状になるように融点をコントロールしています。その結果、とろけるスピードを同じにすることができました。
土肥: 当時のチョコアイスはチョコがパリパリしていたんですよね。それが主流の味だったわけですが、あえてそのパリパリを否定するかのようにチョコをはがれにくくした。新しいことにチャレンジするとなると、社内からいろいろな声があったのでは。
孫田: 開発をした人間は、チョコのやわらかさを追求していましたが、社内からは「パリパリのほうがいいんじゃないの」という声がありました。最終的には、担当者が「やわらかいほうがいいんだ」と説得して、開発が進んでいきました。
土肥: ただ、パルム専用の機械を導入するわけですよね。「なめらかに」とか「口どけをよく」などとコンセプトを掲げたわけですが、売れなかったらどうしていたのでしょうか。「やっぱり口当たりは普通でいいんじゃないの。急速凍結の技術なんていらないよ。チョコもパリパリしようよ」となったら、機械はそれに対応することができるのでしょうか。
谷口: いえ、一度決めたら切り替えることはできません。
土肥: ということは、相当な覚悟がいりますよね。工場に新しい機械を導入するって、莫大な費用がかかるわけですから。
孫田: おっしゃる通り、関係者は腹をくくっていました。
土肥: 新商品を開発しても、どのくらい売れるかなんて分かりません。当たるかもしれませんが、外れるかもしれません。ましてやアイスクリーム市場は、新商品はなかなかヒットしにくい環境ですよね。パルムの場合は、売れたからよかったものの……。
孫田: 発売当初は売れなかったんですよ。
土肥: えっ?
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