日本人がビザ取得でハマる、大学の専攻と現在の職種の違い:新連載・日米のビジネス事情の違いを知る(前編)(4/7 ページ)
米国でビジネスに力を入れている日本の起業家は、何を考え、どう動いているのか。米Six ApartのCEO 兼 米Infocom Americaの取締役を務める関信浩氏と機楽株式会社代表取締役兼ロボットデザイナーの石渡昌太氏が語り合った。
関: いろいろあると思います。興味深いのは日本人にありがちな、“大学時の専攻”と“現在の職種”の乖離(かいり)が原因になること。例えば日本でソフトウェアエンジニアとして働いている人のうち、大学でもその分野を専攻していた人は実は結構少なくて、文系出身者も多いんです。そういう人がビザを申請しようとすると、引っかかることもあると聞きます。
そもそもビザというのは、米国人にはできない仕事を、特殊な技能をもった外国人にやってもらうために発行することが原則となっているので、その原則に反しているとビザの取得が難しくなります。米国では、大学で学んだことはその人の専門性を表すと考えられているんです。私の知り合いに大学を中退したソフトウェアエンジニアがいるのですが、大学での専攻がないためビザの取得は難しそうだと判断してあきらめたと聞きました。
石渡: 日本ではいろいろな職種を経験し、キャリアを築いていくことが多いですよね。今のお話を聞くと、米国は働き方という観点でも、キャリアの一貫性が求められるのでしょうか?
関: ええ、米国では専門性を高めていく人が多いですね。もちろん昔はエンジニアだったけれど、ある年からマネージャーになってくださいと言われてそういうルートをたどる人もいますが、そうじゃない人のほうが多い印象です。特にエンジニアの場合は、エンジニア職を続けたいからという理由で、そろそろマネージャーに……という話が出てくると、他の企業に転職する人もいるくらいですからね。これは、日本でもそうですが。
石渡: そういう話は私も米国人からよく聞きます。エンジニアを続けたいから、たとえ給料が下がっても、別の会社に移ると。
関: あと米国だとキャリアに一貫性のない人は、専門家じゃないとみなされて転職できにくい傾向にもあるんです。だから米国でキャリアチェンジを希望する場合、社会人大学に通って、学位を取る人もたくさんいます。転職時に、「私はこのキャリアが合っていないと思ったので、2年かけてこういう学位を取りました」とアピールできるからです。米国では、苦労して卒業証書を取ったというのは、十分アピール材料になります。「そこまで力を入れたのだったら、この新しい分野にかける情熱があるな」と判断されるようです。日本だとあまりない視点かもしれないですね。
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