日本人がビザ取得でハマる、大学の専攻と現在の職種の違い:新連載・日米のビジネス事情の違いを知る(前編)(6/7 ページ)
米国でビジネスに力を入れている日本の起業家は、何を考え、どう動いているのか。米Six ApartのCEO 兼 米Infocom Americaの取締役を務める関信浩氏と機楽株式会社代表取締役兼ロボットデザイナーの石渡昌太氏が語り合った。
キックスターターで出資を狙うのであれば
石渡: クラウドファンディングで海外からお金を集めようとするなど、「外貨を得る」動きに対して、日本政府はもっと支援するべきじゃないでしょうか。例えば税制面で優遇するとか。そうすれば日本のスタートアップはもっと思う存分、クラウドファンディングに挑める気がします。
近年、日本からたくさんのスタートアップがキックスターターを始め、海外のクラウドファンディングサービスでの資金集めに力を入れていますが、目覚ましい成果を挙げているところは、あまりありません。小さな会社に限らず、大きな会社でさえもです。例えば「プロダクションIG」(映画『マトリックス』のモデルになったとされる、「攻殻機動隊シリーズ」の製作会社。同作品は海外では、「GHOST IN THE SHELL」というタイトルで親しまれている)という有名なアニメの会社がキックスターターに出したことがあるんですけれど、彼らでさえ2000万円しか集められませんでした。私はプロダクションIGのアニメが好きで応援していたので、これだけ有名なアニメメーカーのプロジェクトでさえ、数千万円しか集めることができないのかと大変ショックを受けました。
関: 目標金額に達しなかったんですか?
石渡: 達することは達しましたが、プロダクションIGの人も「思ったほど集まらなかった」とおっしゃっていました。2000万円なんて、出資者に完成した作品のDVDやグッズを送ったりしたら、すぐなくなってしまいますからね。また不慣れな現地の会社を使ったことで予想外のコストがかかったという話をプロダクションIGの講演で聞きました。彼らで2000万円しか集まらないなんて、何でそうなるんだろうと気になりますね。
関: スタートアップの出品者でも、億を超えるものがいくつもありますからね。プロダクションIGの件は石渡さんから見て、どの辺が課題だったと?
石渡: プロモーション不足だったのもあるかもしれませんし、あと彼らは、プロレスアニメを作ろうとしたんですよね。もちろん、商業ではなかなか企画の通らない“コアなテーマ”の作品だからこそクラウドファンディングに賭けたのだとは思いますが、そこに問題があったんじゃないかと見ています。
大きな会社にありがちなんですが、“一番コアな玉”を使って2000万円しか集まらないと責任問題になるから、余力で、“外してもいい玉”を打つ。だから期待外れの結果になったのではないかと。大手企業はクラウドファンディングという新しいことに挑みつつ、何で本気の玉を込めないんだろうなって思いますね。日本の大企業が社運を賭けてやります! と言ったほうがカッコイイのに。
関: じゃあ逆に米国だったら大企業がそれをできるか? というと、同じくできないと思います。大企業にいると上司に刃向かえないことをネタにした映画もあるくらいですから(笑)。できないから、そこをスタートアップがやるんです。失敗してもまた挑戦できる土壌がありますからね。大企業の中で挑戦しにくいのは、日本に限らず国が違っても一緒だとは思いますが、米国であればオプションとして、外でスタートアップを立ち上げて、そこで一か八かで挑戦してみる姿勢が肯定されているのは、違いと言えるかもしれませんね。
石渡: なるほど。
関: 私が前職の日経BP社で記者をしていた時代は90年代なんですが、例えばインテルやシスコがコーポレートVC(ベンチャー・キャピタル)を作っていました。彼らは、社内でスピード感をもってできないものは、外でやるべきと考えています。外に出した会社に出資して、成長したら買収する。社内でやるよりも、そのほうが効率的に進みます。インテル100%でやっていると社内の事業と変わりませんが、彼らはあくまでVCなので、2割、または1割しか株を持っていないかもしれません。
でも社内でやっていたら10にしかできなかったものが、外に出すことで1000やそれ以上に化けることがある。さっきのプロダクションIGのケースに当てはめて考えると、彼らがどれほど本気でプロレス作品に挑んだのか分かりませんが、仮に本気度が欠けていたのだとしたら、何が何でもプロレス映画を作りたい人を外に出してキックスターターに臨めば、また違う結果になっていたのかもしれませんね。
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