太地町のイルカ漁を追い込むと“得”をするのは誰だ?:スピン経済の歩き方(2/4 ページ)
和歌山県太地町の「イルカ漁」が、またまた叩かれている。さまざまな団体が「環境問題」や「自然保護」の視点からイルカ漁をやり玉に挙げているが、問題はそれだけなのか。筆者の窪田氏は、「関係各位の『ビジネス』における戦略だ」と指摘している。
関係各位の「ビジネス」における戦略
ただ、日本も黙って引き下がるわけにはいかない。来年のIWC総会の結果いかんでは、国際司法裁判所にIWCの決定無効を求めて逆提訴をする準備を水面下で進めており、その中心人物が鶴保庸介参議院議員だ、と情報誌『FACTA』が伝えている。
鶴保議員といえば、太地町が選挙区ということもあり、「シーシェパードを入国拒否にすべき」なんてことも訴えるので、反捕鯨団体からすれば“目の上のたんこぶ”ともいうべき憎き存在だ。
太地町を締め上げれば、かわいいイルカちゃんも助かる、小生意気なクジラ議員にもダメージを与えることができる、こりゃ一石二鳥だわ、と反捕鯨団体が喜んだかどうかは知らないが、圧力をかける「動機」としては分からない話でもない。
ただ、個人的には今回はそういう話ではなく、関係各位の「ビジネス」における戦略だった思っている。
追い込み漁で捕獲されたモノを買えない場合、日本の水族館に残された道は「繁殖」と「迷いイルカ」のような“自然保護ルート”しかないのだが、まず日本には繁殖のための設備やらノウハウがない。となると、WAZA加盟の欧米の水族館関係者にすがるしかないのだが、もちろんタダなわけはないので人材育成、設備、研修……とさまざまなビジネスチャンスが欧米の水族館業界に転がり込む。また、“自然保護ルート”を活用させていただくとなると、イルカを保護する自然保護団体関係者にもさまざまな形で“ご指導”していただくことになるので彼らへのフィーも発生していく。
つまり、今回の圧力によってイルカビジネスのボトルネックを日本の漁村から剥奪して、欧米の水族館、自然保護ビジネスに関わる人々の元へもってくることができたというわけだ。だが、そんな彼らよりも“旨味”を得た人々がいる。
他でもない反捕鯨団体だ。
ご存じの方も多いと思うが、反捕鯨団体に限らず動物愛護団体には多額の寄付が寄せられる。個人はもちろんのこと、「自然保護」などでブランディングしている企業のスポンサーも受けている。アウトドア用品などを扱うパタゴニアや、化粧品や入浴剤などを扱うラッシュなんかが有名だ。
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