太地町のイルカ漁を追い込むと“得”をするのは誰だ?:スピン経済の歩き方(3/4 ページ)
和歌山県太地町の「イルカ漁」が、またまた叩かれている。さまざまな団体が「環境問題」や「自然保護」の視点からイルカ漁をやり玉に挙げているが、問題はそれだけなのか。筆者の窪田氏は、「関係各位の『ビジネス』における戦略だ」と指摘している。
寄付ビジネスは「見える化」しなければいけない
この手の「寄付ビジネス」というのは闘争がうまく「見える化」していないと回らない。愛くるしい動物を自分たちの利益のために残酷に殺すという悪者の前に、信念をもつ活動家たちが立ち塞がるという分かりやすい構図によって、ハリウッドセレブとか環境系企業からチャリンチャリンという流れができるのだ。
実際に産経新聞が入手したシーシェパードの活動報告書によれば、2004年の収入は120万ドル(約1億4000万円)に過ぎなかったが、2012年では1365万ドル(約16億2000万円)に拡大。この8年で11倍強という急成長の原動力はなにかといえば、日本の捕鯨船への体当たりやらイルカ漁の網を切るなどの“過激なパフォーマンス”が世界的に注目されたことが大きい。環境をテーマにした専門チャンネル、アニマルプラネットでは「クジラ戦争」なんてレギュラー番組ができたし、OBが制作したドキュメンタリー映画『ザ・コーヴ』はアカデミー賞もとった。
つまり、シーシェパードのような反捕鯨活動事業というのは、日本のような「敵」がいて、バチバチと火花を散らすことで右肩上がりの成長ができるというわけだ。
そう考えて、彼らの市場環境を見てみるとどうか。先に述べたように、IWCと国際司法裁判所によって調査捕鯨自体が「絶滅危惧」へと追い込まれている。実はこれは反捕鯨団体にとって最もマズい。「敵」がいなければ寄付が集まらないし、「イルカとクジラの味方」という事業の根幹も見直さなくてはならないからだ。
ならば、どうするか。もしも自分が反捕鯨団体ならば、相手に適度な嫌がらせをするだろう。追い込むことで窮鼠猫を噛むではないが、逆上してより過激により独善的になる。その方が、かわいい動物を大量殺戮する「ヒール」にふさわしくないか。
JAZAへ圧力をかければ、太地町について離脱する水族館も現れる。怒りにふるえる漁業関係者が過激な活動に走るかもしれない。日本の伝統を守れという世論が高まれば、調査捕鯨もガチガチに態度を硬化していく。そうなれば、シーシェパードが正義の暴力を行使する「大義名分」ができて、寄付もじゃんじゃん集まるというわけだ。
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