映画界を変える団体「IndieTokyo」のすべて:現代映画を考える(後編)(2/4 ページ)
自分たちで映画の現場を変えていく――そう話すのは、映画団体「IndieTokyo」の主宰者で映画評論家の大寺眞輔氏。いま、東京の映画のシーンでは何が起きているのか。前回に続き、今回はインタビューの後編を紹介する。
――どうしてジョアン・ペドロ・ロドリゲス監督の映画を日本で上映しようと思ったのですか
大寺: ジョアン・ペドロ・ロドリゲスはとてもパンチのある映画を作る人でもともと大好きな監督でした。
ただこのときは、どうしても彼の映画の上映を実現したかったと言うよりは、さまざまなな偶然と幸運が重なることで、自分の意志を超えてプロジェクト自体が実現に向けて動き出したというのが実感ですね。
――ジョアン・ペドロ・ロドリゲス・レトロスペクティブをやると決めてからの経緯を教えてください
大寺: 衝動的にプロジェクトを始めたものの、そこからがものすごく大変でした。普通はこうしたプロジェクトには何十人もの人が関わるものですが、ノウハウもない中全てを1人でやらないといけません。だから、結果的に全部がインディペンデントでDIYの映画祭になりましたね。
でも、話を進める段階で篠崎誠監督(※4)が手伝ってくれたり、京都や大阪、仙台といった地方でも上映をし、劇場の人との人脈もできました。みんな、こういう試みは面白い、DIYでやることが大事だと言って映画を上映する現場の人が支援してくれたんです。
最初は本当に無謀な試みでしたが、やってみると賛同者がいろんなところから集まってきてなんとか開催できました。ジョアン・ペドロ・ロドリゲス自身やポルトガル大使館の協力があったのも大きいですね。ジョアン・ペドロには、本当にいくら感謝しても足りないくらいです。
こうした活動がいま頑張っているIndieTokyoの基盤になりました。
Dot DashのあとにIndieTokyoを立ちあげる
――どうしてDot Dashの後、IndieTokyoを立ち上げようと思ったのですか
大寺: Dot Dashで上映活動をして、普通なら第二弾で何を上映するのかという流れになりますよね。でも、上映だけするなら「上映をする人」になっちゃうわけです。僕はただ上映をするだけじゃなくて、映画全体を変えて行く現場で自分もまた何かの役に立ちたいと思ったんですね。
映画は確かに変わりつつある。あるいは、変わらなくちゃいけない。その現場で、自分もまた何かの役に立ちたいと思いました。
また、Dot Dashをやる中でその時できなかったものも見えてきたんです。それは、映画について語ることば、メディア、映画のために何かをやろうという人たちが共闘する場所、そして人間のつながりです。
いま海外ではどんな面白い動きがあるのかということをどの映画雑誌でもリアルタイムでは詳しく紹介していません。そういうことを知らないとどんどん日本の映画人も遅れていってガラパゴスになっていきます。
世界で戦うには、情報とネットワークとフットワークが必要です。その全てが今の日本の映画を囲む状況に欠けていると思いました。
でも、それじゃ世界と勝負はできません。世界中で映画の友達を作ったり、ネットワークを広げたりもできない。それで、誰もやらないのなら自分たちでやろうと思ってメディアを立ち上げたんです。
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