「S660」はホンダの問題を解決できない:池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/4 ページ)
ホンダがグローバル戦略の遂行に苦心している。特に欧州、アジアではシェアが低く厳しい状況だ。突出したブランド力を持つ同社がなぜ伸び悩んでいるのだろうか……。
にもかかわらず、欧州でシェアがとれないのには理由がある。ホンダは、日本国内の数字をとるために日本市場に最適化し、主力商品をミニバンに切り替えてしまった。ところが、欧州では日本式のワンボックスミニバンは需要がない。日本のマーケットに特化しすぎたラインナップが融通性を低下させているのだ。本来ならフィットをベースにさまざまなモデルをバリエーション展開し、それなりに売れていなくてはいけない。
理想的なルートマップでは、リードした北米マーケットを死守しつつ、日本と欧州をリンクさせた全体最適化の中でラインナップを構築すべきだった。仮にその結果、欧州マーケットで5%前後のシェアがとれていれば、次の展開として新興国専用モデルに注力できたはずなのだ。
しかし欧州での拡販がまだ途上にあるうちに、アジアマーケットの争奪戦が始まってしまった。ホンダは今、限られたリソースで多方面作戦を展開しなくてはならない。たび重なるリコールと発売スケジュールの遅延からもそうしたリソース不足がうかがえる。アジア戦略車は、日本のリソースでは間に合わず、アジア拠点への設計生産拠点の移行が発表されている。それではメイドイン・ジャパンのブランド力が生かし切れないし、モジュラー化を含めた効率戦略が選択肢として選べない。
さらに、あちらこちらに力が分散して選択と集中ができない。ダイムラー(ベンツ)がAクラスやBクラスで、BMWが次世代の1シリーズや2シリーズでプレミアムBセグメントのFFモデルをリリースしているのを見ると、欧州マーケットはこれまで以上に高付加価値モデルが重要になっていきそうな気配がある。もしこの2社が台数的にそれなりの数を売るようになれば、競争はより激化し、リソースの足りないホンダの欧州での立ち位置はかなり厳しくなる恐れがある。
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