望む場所で死ぬために
現在、現役世代の働き方は昔とかなり変わってきた。能力や成果による処遇差が大きくなり、サラリーマンも自分のキャリアを多少でも考えるようになって、ステップアップを求めて転職する人も増えた。大企業であっても浮き沈みが激しくなり、それなりの将来不安を多くの人が持つようになって、自営業ほどではないにしても、サラリーマンの“気楽さ”は低下してきている。働きぶりを見てもモーレツは死語になり、ワークライフバランスの掛け声も大きくなってきて、労働時間の短縮、休日の取得はさらに進むはずだ。
このような働き方の変化によって、次世代以降は自分の意思で物事を決められる、現役時代から人生を楽しんできた人が増えるかもしれない。「周囲に迷惑をかけたくない」といった単なる感情ではなく、具体的にこうして欲しい、これはしないで欲しいという、死に方や終末期の生き方について意思を表明できる人が増えていけば、医師や家族の勧めに盲目的に従って病院死をする人の割合は低下していくだろう。
いずれにしても、病院死の減少は制度面の改革や住宅の整備だけでなく、人生の最期のありようを自分で決められる人が増えるかどうか、そして周囲がその判断を受け入れられるかどうかにかかっているのである。(川口雅裕)
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