マイナンバー制度で“ふるい”にかけられる保険代理店:マネーの達人(2/2 ページ)
「マイナンバー」とは複数点在する個人の情報を1つにまとめるためのもので、2016年1月にスタートする予定です。今回は、マイナンバー制度による保険業界への影響を考えてみます。
保険業界におけるマイナンバーの影響
話を保険業界に絞って考えてみます。2016年5月の改正保険業法施行に合わせて、全ての保険代理店は保険募集人を社員化することが義務付けられています。つまり、小規模な保険代理店であっても社会保険への加入が必要になります。
2015年4月より、社会保険の「加入逃れ」や、「加入漏れ」企業に対する年金事務所による取り締まりが強化されてきましたが、これには人を介した「社会保険調査」が必要でした。それが、マイナンバーと法人番号が導入されることにより、社会保険未加入の保険代理店をシステム上で瞬時にあぶり出せるようになります。
改正保険業法施行による代理店体制整備とマイナンバー導入による社会保険加入により、保険代理店の経営コストはますます増加することになります。すると、保険代理店は社員に対してノルマを課すことにより、売上の増加と安定を確保せざるを得なくなります(収入保険料増加による保険会社からの手数料増加)。
しかし、手数料目当ての保険募集ができないようにルールが改正されますので、全体的に保険募集の質は上がろうとも、必ずしもそれが売り上げ増につながるとは言えないので、保険代理店の経営の質も同時に問われることになるでしょう。
私は、2015年後半から2016年にかけて保険代理店の身売りや買収、合併などが増えると予想しています。特に、乗合代理店や保険ショップなど、増えすぎた保険代理店の淘汰(とうた)にマイナンバーが一役買うに違いありません。人口減社会に対応した、といっても過言ではないでしょう。
結局、資本力のある大規模の代理店や、提案力や保全力などに特長のある保険代理店しか生き残れなくなるのではないでしょうか。これをビジネスチャンスと捉えて動き出した代理店もあります。時代の大きな変化に対応できるか否かが問われます。
また、保険業界だけでなく、他の業界でもマイナンバーの導入は大きな変化の波となるでしょう。特に中小企業にとっては、マイナンバー管理システムの導入は大きなコスト負担です。しかし、こういった変化の潮目をチャンスと見れらるか、経営者の覚悟も試されているように感じます。(伊藤克己)
著者プロフィール:
伊藤 克己
ゆうゆうFP事務所 代表FP
電機・半導体メーカー退社後、外資系生保と乗合代理店で実務を学び、独立系FP事務所を開業。リスク・ファイナンシングを現場実践している「実践派FP」として顧客利益優先に活動。
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