ヘタすりゃワーキングプア!? いまどきの印税事情:出版社のトイレで考えた本の話(4/5 ページ)
本の著者はどのくらいの印税を手にしているのだろうか。人気作家になれば「印税生活」を送れるかもしれないが、そんな夢を実現できるのはひと握り。ひょっとしたら、ワーキングプアに陥っている人も少なくないかも……。
印税をめぐるトラブル
お金の絡む話だけに、印税をめぐるトラブルは編集部でもよく話題になる。筆者が実際に見聞きした話をいくつか紹介しよう。
トラブル例 その1
本の執筆を始めるあたりで「じゃあ、印税は10%ということで」と口頭で著者の了解を得ていた。制作もだいぶ進み、来月には本が出るというあたりで、そろそろ出版契約書も交わしとかなきゃ、ということで担当編集者が契約書のひな形を著者にメールする。30分後ぐらいに著者から返信がきた。売れっ子著者なのに、もうチェックしてくれたのか、仕事が早いなと思ってメールを開くと「なんで印税率が10%なんですか? もっと増やせるはずでしょう。本に関するインタビューとかイベントは出演料ゼロで受けるんですから、少なくとも12%以上にしてくれないと、出版は取りやめます!」。えっ、そんな……。
初版が1万5000部と大きく、営業が期待している商品でもあり、説得のため発売延期にするわけにもいかないので、結局、ゴリ押しに負けて、重版以降は12%の印税を払うはめになってしまった。
トラブル例 その2
本の執筆を始めるあたりで「じゃあ、印税は10%ということで」と口頭で著者の了解を得ていた。制作もだいぶ進み、来月には本が出るというあたりで、そろそろ出版契約書も交わしとかなきゃ、ということで編集担当者が契約書のひな形を著者にメールする。なんか数行前に見たことあるな、このシチュエーション。で、著者からの返信はこうだ。「契約書を見たら『実売部数で計算する』と書いていましたけど、そんな話は聞いていません。私は発行部数方式じゃないと本は出しません」。ええっ、そんな……。
要は「実売方式」であることを、編集担当者が著者にきちんと説明せずに進めてしまったのだ。ここまで進んだ出版を取りやめるわけにもいかないので、この本に関しては、発行部数方式で契約することになった。
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