世界一をかけて戦うトヨタに死角はないのか?:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ)
フォルクスワーゲン、GMとともに自動車業界の「トップ3」に君臨するトヨタ。しかし、この2社をはじめ、世界のほかの自動車メーカーにもない強みがトヨタにあるのだという……。
トヨタは数多ある日本の上場企業の中で売上高トップを誇っている。2014年の売り上げは25兆7000億円。2位の伊藤忠の1.66倍。金額だけ聞いてもピンとこないかもしれないので、1ドル=124円でドル換算した2070億ドルを、各国の2012年歳入ランキングに置いてみると、20位スイスの2127億ドルと、21位オーストリアの1873億ドルの間に入る。ちなみに日本の歳入は2兆250億ドルで世界2位である。
円安が進んだ現在でこれだから、今より35%も円高だった2012年当時のレートだと16位スウェーデンと17位韓国の間まで上がる。念のために書いておくが、為替レートが変われば輸出台数も変わるので、現実的な比較ではなく、あくまでもモノサシであることをご理解いただきたい。トヨタという一企業の経済活動がどういう規模なのかをイメージする助けにはなるだろう。
創業家一族のプリンス、豊田章男社長。創業家というとどうも実力の方はというイメージが強いが、少なくとも社長就任以来、強い指導力を発揮して改革を進めてきたことは間違いない。世界一を争う局面はまさに実力が問われるシチュエーションだろう
トヨタとフォルクスワーゲンの縄張り
世界の自動車業界で言えば、2015年の上半期販売台数で、フォルクスワーゲンがトヨタを抜いてトップになった。僅差でトヨタは2位。ともに年間販売台数で1000万台を超えている。1000万台にギリギリ届かないGMがこれに続いて、トップ3を形成している。
全体をざっくりみると1000万台ラインのトップ3に続いて、ルノー/日産と現代自動車が800万台近辺。フォードが600万台近辺。400万台のところにフィアット/クライスラーとホンダが入ってくる。プジョー/シトロエンとスズキが300万台。ここまでがベスト10だ。ちなみにマツダは130万台、スバルは90万台となっている。トップ3がほかを突き放していることがよく分かる。
販売台数だけでも驚くべき数字だが、トヨタの特徴は利益率の高さにある。フォルクスワーゲンの利益は円換算で1兆円。トヨタはその倍の2兆円だ。販売台数で抜かれようとも、今後の経営に再投資する体力は圧倒的にトヨタが上なのである。
中期展望はどうだろうか。トヨタは日本と東南アジアで強い。フォルクスワーゲンは欧州と中国で強い。マーケットとしてはトヨタとフォルクスワーゲンは意外にもすみ分けていて、エリアごとの勝ち負けがはっきりしている。フォルクスワーゲンが欧州と中国で強いという現実は恐らくトヨタに有利に働くだろう。
欧州は目の前のギリシャ問題の破たんを回避したものの、それは本質的な解決ではなく単なる先送りに過ぎない。ギリシャの問題は、EUがギリシャに対する債権放棄を実行しない限り、着地のしようがないだろう。ドイツ単独で見たときのギリシャ一国分の負債額は金額的にどうという額ではない。ただし、ドイツにしてみれば今後EUの劣等生各国にそれを悪しき前例として示してしまうことになり、そう簡単に債権放棄できない事情がある。
また、ドイツにとってははした金でも、他国にとってはそうはいかない。EU加盟国のうち、ギリシャより貧しい国にしてみれば「なぜ我が国がギリシャを救済しなくてはならないんだ」という割り切れない思いもある。それを無視すればEUの結束が維持できなくなる。どうしてもモラルハザードに対する何らかの痛烈なお仕置きを一罰百戒として、今後簡単に債権放棄を言い出せない状況を作らなくてはならない。
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