通信と放送は融合しない――KDDIの出した答えは?:地デジ+モバイルが生み出す世界(8)(2/2 ページ)
1セグ放送受信の試作機開発など「通信・放送連携」を着実に具現化していくKDDI。その先には、ITSとの連携も視野に入っている。同社の考えを聞いた。
車載端末には、KDDIの「モバイルルータ」技術(2003年11月7日の記事参照)を提供した。これにより、地上デジタル放送のハイビジョン放送とデータ放送に加え、携帯、無線LAN、PHSといった複数の通信経路を自由に選択しながら放送関連の情報を取得できる。これらの情報は、画面に放送番組と統合して表示されることになる。
このように、携帯のみならずカーナビなど車載端末での放送受信に関する検討に積極的な点も、KDDIの特徴といえる。地上デジタル放送とITSを連携させるサービスも、視野に入れられているわけだ。
とはいえ、業界内では車載向けの「通信と放送の連携サービス」は、まだサービス開始時期も定まっていないのが現状だ。昨年12月に地上デジタル放送を開始し、現在は2006年春ごろのサービス開始に向けて、1セグ放送サービスの規格化や協議の真っ最中。
「この1セグ対応放送受信サービスの議論が落ち着いてから、ようやく車載向けの検討に本腰を入れられるのではないか」と、中村氏は見ている。
車載向け放送については、先ず決着を付けなければならない問題が存在する。3セグメントの“車載専用”の放送を用意するか、あるいは携帯端末向けの1セグメント放送や、家庭内の固定向けテレビと同様の12セグメント放送を受信するか、といった議論だ。
高度なアンテナ技術の開発により、自動車で移動しながらでも12セグメントのハイビジョン放送を受信できる環境が整いつつある中、12セグメントのハイビジョン放送を受信できるのであれば、それに越したことはないという意見がある。
それに対し、中村氏は、3セグメント放送を推奨したい考えだ。
「1セグメント放送を受信して、カーナビなど車載端末の画面サイズに引き伸ばして見るとなると、どうしても画質が劣ってしまう。一方、12セグメント放送だと、固定テレビのユーザーを中心としたコンテンツになりがちで、運転中のユーザーにとって有効な、ローカル情報や道路情報などをデータ放送の中に盛り込むための領域を確保しにくいことが予想される」
だから、本当に魅力的なサービスを実現するには、車載向けに別途3セグメント放送を用意する必要があるのだと、中村氏は強調した。
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