“ゲームのSH”イメージ継続したい~「SH901iC」
901iシリーズ第1弾となる「SH901iC」は、キャッチフレーズ“3D×3D”をどう形にしたのか。シャープ開発陣に聞いた。
FOMA 901iシリーズの先陣を切って11月26日に発売される「SH901iC」(11月17日の記事参照)。特徴は、FeliCa対応、AV機器につないでの動画録画、シリーズ唯一の回転2軸ヒンジなどがあるが、ここでは3Dグラフィックスと3Dサウンドにまず焦点を当ててみたい。
“ゲームならSH”のイメージ継続
「iアプリのゲームで、シャープはいい、というイメージを継続したい」。シャープの通信システム事業本部パーソナル通信第一事業部商品企画部の河内巌副参事は、SH901iCの3D関連に対する思いをこう話す。
「(ゲームは)今は端末の購入動機になるほど」と、N900iでドラクエをプリインストールしたNECが話すように(9月24日の記事参照)、携帯をゲーム機と見なすユーザーが増えている。ドコモ・ドットコムも「明らかにゲームに使う時間が増えている」と話すなど(6月10日の記事参照)、ハイエンド端末にはゲーム性能が求められている。
そんな中、シャープ製の前機種「SH900i」は、有名なプリインストールゲームこそないものの、対応ゲームの多さや動作速度の速さが評価されてきた(3月26日の記事参照)。このイメージを継続したいというのがSH901iCの狙いの1つだ。
3Dエンジンがバージョンアップ~専用3Dチップ搭載
901iシリーズも、“3D×3D”という表現で3Dグラフィックスと3Dサウンドをアピール。より高品質なゲームができることをウリとしている。しかしその分、これまで以上に端末側に負担がかかったのも事実だ。
3Dグラフィックス面では、エイチアイ製の3Dポリゴンエンジンのバージョンが、900i時のVer3からVer4に上がっている(2003年8月29日の記事参照)。「単純に言うと、描画レベルが細かくなった。奥行き感とかフォグ(霧)の表現ができるようになっている」と河内氏。
「ただこれはすごく処理が重くて、ソフトでCPUだけのパワーでやるとかなりフレームレートが落ちることが分かっていた。だいたい2000ポリゴンくらいで計測した場合、なんとかVer3で出ていた秒8コマくらいはもっていこうと」(河内氏)
そんな思いから、900iではCPUで処理していた3D演算を専用に行うチップを搭載した。携帯向けの3Dチップとしては東芝の「T4G」の採用例が挙がることが多いが、SH901iCは異なるチップ。MPEGのデコードなどにも使わず、「ほとんど3D専用に近いチップ」(河内氏)だという。
「ゲームは、ものすごいものが来てほしい。これだけ、とことんやったので」と、河内氏は胸を張る。
ゲームを主眼に~3Dサウンド
もう一つの3Dがサウンドだ。901iシリーズでは、単にステレオスピーカーを搭載するだけではなく、あたかも前後左右をスピーカーで囲まれているかのように聞こえるバーチャル3Dサラウンド技術を搭載している(11月17日の記事参照)。
同技術では、ダイマジックの「DiMAGIC Virtualizer X」が有名だ。ヤマハ製音源チップ「MA5-Si」に組み込まれ、auの着うたフル端末2機種にも搭載されている(10月15日の記事参照)。しかし901iシリーズでは別の技術を使った。
901iでは、3D変換された楽曲ファイルを再生するのではなく、曲データと定位情報が分かれている。端末側でそれを組み合わせて3Dサラウンドを実現している。
このような仕組みにしたのは、iアプリゲームでの利用が念頭にあったからだ。例えば、レーシングカーゲームで右カーブと左カーブの音を出す場合を考えてみる。ダイマジックの技術のようにプリプロセス(あらかじめ3Dに変換した音を用意する)であれば3D変換済みの音を2パターン用意しなくてはならないが、端末側で変換するのであれば、カーブの音は1つで、定位情報を2つ用意すれば済む。
こうした3Dサウンドを効果的に表現するため、スピーカーの作りにもこだわった。「液晶とスピーカーが少々かぶっている形。音圧も大事だが、(3Dサウンド対応なので)定位感がどれだけ出るかが大事。音が出て横から逃げるようになっている」(河内氏)。
ゲーム中も画面消灯~ロックスイッチ
ゲームを快適に遊ぶ……という観点からも、面白いのが側面に設けられた「ロックスイッチ」だ。
SH901iCは、液晶を回転させて折りたたんだ「ビューアポジション」が取れることが特徴の1つ。液晶面に十字キーや左右ソフトキーを配置し、端末を開いている時と同様の操作性を実現した。iモードやメールのチェックはもちろん、iアプリの起動も可能。ビューアポジションのままでゲームをすることもできる。
そんなときにゲームを一時中断させたくなったらどうするか。側面にあるロックスイッチをスライドさせれば、「iアプリ動作中やiモード中でも、どこでもすぐに画面が消える。節電にも効く」(河内氏)。
ロックスイッチはプライバシー保護にも役に立つ。「設定」-「表示」-「省電力設定」-「ユーザ設定」から、「スクリーンセーバー」を「ONプライバシー」に設定すれば、ビューアポジション時に電話がかかってきても、「着信あり」と出るだけで相手の名前が表示されない。
背面液晶を備えないSH901iCだが、プライバシーオンの状態では、日付と時間も画面に一定時間表示される。ビューアポジションで持ち歩き、ロックスイッチを使いこなすことでストレート型の携帯のような使い勝手も実現している。
※11月19日付記:ロックスイッチをスライドさせた場合、画面が消えるだけで、iアプリはバックグラウンドで動作し続けます。また、プライバシーモードでの日付・時間表示は一定時間で消えます。お詫びし、訂正させて頂きます。
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