“携帯で音楽もアリだ”と思わせた──「D903i」:ITmediaスタッフが選ぶ2006年のベスト端末(編集部後藤編)
これまでは、どこかもの足りないところがあって本気で使っていなかった携帯の音楽機能。しかし、この端末が“ケータイで音楽”という利用スタイルにシフトするきっかけになった。
順位 | 端末名 | 概要 |
---|---|---|
1位 | D903i | スライドボディ、着うたフルとWMAに対応、2.8インチディスプレイ、FMトランスミッター、GPS |
2位 | SO903i | 3インチ液晶、1Gバイトの内蔵メモリ、MP3、ATRAC3、AACに対応、背面の音楽操作用ボタン、GPS |
3位 | W42SA | ダイヤルキーを使った手書き入力、2.4インチ液晶、LISMO/SD-Audio対応、コンパクトなボディ |
スライドボディとNapsterがニーズにぴったり合った──「D903i」
1位に「D903i」を選んだ理由は大きく2つある。1つはポータブルオーディオプレーヤーを持ち歩かなくてすむと思わせた点。もう1つはスケジュール管理をしやすい点だ。
音楽機能については、端末の機能というよりもNapsterに対応したことのほうがポイントが高い。洋楽を聴くことが多いため、洋楽中心の150万曲というラインアップは魅力的であり、実際、ポータブルオーディオプレーヤーに入っていた6~7割ほどの曲をNapsterで入手できた。
iTunes Storeで買ったため携帯では聴けなかった曲も、Napsterにラインアップされていれば聴けるようになる。欲しかったけどiTunes Storeになかった曲もNapsterにあったので、個人的には満足度が高かった。ただ、当然のことながらiTunes StoreにはあるけどNapsterにはない曲も多々ある(特に日本の曲)。曲送り/戻しが遅いとか、リストに曲名がすべて表示されないとか、改善の余地はいろいろとあるが、“携帯だけで音楽を聴く気にさせた”功績は大きい
PC内にある楽曲ファイルは、CDから取り込んだMP3やAAC、iTunes Storeで購入したAAC、オンラインで購入したATRAC3やWMAなど、さまざまなフォーマットのものが混在している。一方で、携帯に内蔵されたプレーヤーで再生できる圧縮方式は限られており、これらを変換して転送する手間を考えると面倒で、結局使わなくなるというのが、いつものパターンだった。
しかし、PCの中にある曲の多くがNapsterで配信されているなら、ダウンロードも端末への転送も(時間はかかるが)さほど面倒ではない。外部メモリが最大2Gバイトなのが、ポータブルオーディオプレーヤーと比べてつらい部分だが、もともと4Gバイトのポータブルオーディオプレーヤーを使っており、あまり聴かない曲を転送しないことで対応できた。月額1980円というNapster To Goにかかる出費も痛いところだが、“興味はあったけれど聴く機会がなかった曲”も聴くようになったことでよしとした。
Napsterが気に入っただけなら、「F903i」や「SH903i」という選択肢もあるが(11月9日の記事参照)、それでもD903iを選んだのは、端末を開くことなく情報を確認できる、スライドスタイルの利便性によるところが大きい。
メールを確認したり、Webを見るだけなら端末を開く必要がなく、「待受カスタマイズ」機能を使えば、待受画面上にカレンダーや直近の予定を表示できる。予定の詳細にも待受画面からアクセスできるので、メニューの深い階層をたどる煩わしさがない。
携帯電話としての利便性とNapsterの組み合わせがニーズに合ったため、D903iを1位に選んだ。
音楽の取り込みやすさと使いやすさがポイント──「SO903i」
2位の「SO903i」を選んだ理由は、音楽機能と予定表の使い勝手のよさだ。SO903iはNapsterには対応していないが、PC内にあるMP3をドラッグ&ドロップで転送できるなど、音楽データを簡単に取り込める点が便利だ(11月17日の記事参照)。私の場合、PC内に保存したMP3データがわりと多かったため、ポータブルオーディオプレーヤーに比較的近い環境を、簡単操作でSO903iの中に再現できた。
予定表は、待受画面上に「ライフタイムカレンダー」を表示できる点が便利(12月7日の記事参照)。ライフタイムカレンダーは、予定だけでなく、その日に送受信したメールや撮った写真なども合わせて表示する機能だ。1週間分/1カ月分のいずれかを待受画面に表示できるので、直近の予定を把握するのに重宝する。こちらも待受画面上から予定の詳細にアクセスできるので、確認や修正も簡単だ。
こんな方法で手書き入力を!という驚き──「W42SA」
「W42SA」は、手書き機能を実現するための方法がユニークで驚かされた端末だ。ちょうど、携帯の文字入力が苦手な親のために、文字入力しやすい携帯を探していたところで、“こんな方法があったのか”と思わず膝を打った。
ダイヤルキー部分を入力エリアに見立てて、指先で字を書くように入力するというアプローチは、携帯の文字入力が苦手な人の敷居を低くしてくれる。携帯メールを年齢や性別、携帯の習熟度を問わず、ふだんの作法の延長線上で使えるようにした“やさしさ”のようなものを感じさせる端末として、強く印象に残っている(9月5日の記事参照)。
番外編:ワンポイントで印象に残った端末
- 「F903i」の横UI
今年はアクオスケータイのサイクロイド型や、「W44S」のデュアルオープンスタイルなど、画面を横にして使う機構を取り入れた端末が多数登場し、新しい携帯の利用スタイルを提案した。しかしいずれも、すべての機能のユーザーインタフェース(UI)が横用に作り込まれているわけではなく、その点が惜しまれた。
そんな中、徹底的に横UIを作り込んだスイングスタイルの富士通製端末「F903i」が強く印象に残った。メール閲覧時やカメラ利用時、フルブラウザ利用時には横画面をフルに生かしたUIになっているなど、工夫されており、今後の進化が楽しみだ。
- 「G'zOne W42CA」「SO902iWP+」の防水機能
“半身浴をしながら携帯を使う”という、新しい利用シーンを提案したことで印象に残ったのが「G'zOne W42CA」「SO902iWP+」の防水携帯2モデル。たまったメールの返事を書いたり、電子コミックを読んだり、音楽を聴いたり──と、お風呂タイムを楽しくしてくれた。
- 「DOLCE SL」の3つのワンタッチキー
DOLCE SLのディスプレイ下にある、3つのワンタッチキーは、想像以上に便利に使えた。このボタンには特定の相手の電話番号やメールアドレスだけでなく、各種機能も割り当てることができ、私の場合はこのボタンの1つを予定表にしていた。いちいちメニューをたどることなく予定表にアクセスできるのは本当に便利で、すべての携帯にこのようなボタンをつけてほしいと思ったほど。ボタンのデザインが「いかにもなボタン」ではないところも好感が持てた。
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