KDDIの小野寺氏、LTEの導入検討は「マーケットを見れば、お分かりいただける」
KDDIの小野寺正社長が決算発表の席で、3.9Gへの採用を検討している通信方式について言及。採用を検討していると報じられたLTEも、Ultra Mobile Broadbandも技術的な差異はないとし、市場を見ながら決めるとした。
KDDIの小野寺正社長は4月24日、決算発表の場で3.9Gへの採用を検討している通信方式に言及した。
KDDIは、他の日本の携帯電話キャリアが3Gの通信方式としてW-CDMA方式を採用する中で、唯一CDMA2000方式を採用し、その特徴を生かした高速通信やサービスを提供してきた。しかし、2010年にもスタートすると見られる次世代高速通信については、CDMA2000の後継に位置づけられるUMB(Ultra Mobile Broadband)方式ではなく、W-CDMAの後継にあたるLTE(Long Term Evolution)を採用する方向と、一部メディアが報じていた。
これについて小野寺氏は、「LTEもUMBもOFDMを採用しており、技術的な差異はない。最終的には市場を見ながら決める」と説明。3.9Gで採用する通信方式については何らかの形で説明の場を設けるとしながらも、「非常識な選定をするつもりはない。決定してはいないが、マーケットを見ればお分かりいただけるのではないか」と含みをもたせた。
2008年の課題は“auらしさを取り戻すこと”
新年度を迎えて初の会見ということもあり、小野寺氏は同社の業績を牽引する携帯電話事業の課題についても説明。auケータイの“先進的”なところが薄れ、「auの特徴が失われた」(同)と、2007年を振り返った。2008年度はauらしさを追求することが必要であり、その中で他社との差別化をはかるとした。
また、auが抱える反省点として「商品に対する管理が少し甘くなった」ことと、「(買い方セレクトなどの)サービス周知の不徹底」を挙げ、新年度での改善を目指す。「(バッテリーで問題を起こした)W42Kの問題もふくめ、商品に対する管理が少し甘くなり、その結果、電池の問題やKCP+の遅れが生じて端末の出荷が遅れた。その遅れがいろいろなところに悪影響を及ぼすなど、端末については残念ながら、かなり課題を残してしまった」(同)
NTTドコモが発表した“新ドコモ宣言”については、市場シェアが半数以上のドコモでは“既存顧客の囲い込みが重要な戦略になる”という見方を示し、KDDIは「既存顧客を守りながら新規も取るという両輪」(同)を戦略とする方針だ。
2007年度はケータイキャリア各社が一定期間の継続契約を条件に、通信料金を下げる料金プランを導入したことから、新規契約の伸びが見込みづらくなることが予想される。こうした中で純増数を増やすためには、法人やモジュール市場が重要になるというのが小野寺氏の見方だ。
「モジュールは、将来的にはかなり大きく伸びる可能性があると見ている。例えば、全国で6000万台といわれる車のすべてにモジュールが乗れば、だまっていても6000万(契約が)増え、それ以外のモジュール市場もかなりあると見ている。ソリューションを含めたところでいうと、1億台で止まるのではなく、2億台という数字もあり得ると考えており、そういうところを目指すべきだと思う」(小野寺氏)
フィルタリングの導入方式は“総務大臣の説明待ち”
小野寺氏は、導入方式に関する問題が取りざたされているフィルタリング問題にも触れ、“総務大臣の説明待ち”であると話した。「総務省から再度、大臣から話があるといわれており、その状況を見ながらどうするか再検討したい」(小野寺氏)
ケータイキャリア各社は総務省の意向を受け、未成年を保護する目的でフィルタリングサービスの原則義務化に踏み切ったが、公式サイト以外の健全なサイトにもアクセスできなくなるなどの問題から、その導入方式について懸念を示す声が相次いだ。こうした声を受けて総務省の検討会は、(ホワイトリスト、ブラックリストなどの)フィルタリングの方式は、利用者が選択できるような仕組みが必要――という素案を公表している。
小野寺氏は、ユーザーが携帯電話を使う上で起こる問題などについて勉強する機会を増やすとし、昨年度まで関連会社が運営していた勉強会をKDDI本体でも行うとともに、対象についても中高生まで範囲も広げるとした。「こういう場を通じて、ケータイの正しい使い方をお知らせしていきたい」(同)
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