法人部隊も“新ドコモ宣言”――法人市場開拓に向けたドコモの新戦略
コンシューマー市場が頭打ちになる中、ケータイキャリアが次の主戦場として注力するのが“法人市場”だ。“新ドコモ宣言”の発表以来、次々と新戦略を打ち出すドコモが、法人市場開拓に向けた戦略を明らかにした。
コンシューマー市場の契約数が頭打ちになる中、ケータイキャリアが“次の主戦場”として注力するのが“法人市場”だ。10月23日、NTTドコモが法人市場開拓に向けた戦略説明会を開催。法人部隊のキーパーソンが、法人市場の現状とドコモの戦略、注力分野について説明した。
ドコモでビジネスが加速する――スローガンは「Mobile Driven Solutions」
ドコモは4月に“新ドコモ宣言”を発表し、顧客満足度の向上を第一に考える戦略へと舵を切った。7月にはそれを加速させるため、地域ドコモを1社化するなど、さまざまな変革に取り組んでいる。
ドコモの常務執行役員で法人事業部長を務める大嶋明男氏は、法人市場についても“変革とチャレンジ”をテーマに、新しいことに取り組んでいきたいと話し、「Mobile Driven Solutions――ドコモでビジネスが加速する」というスローガンの元、法人市場のさらなる開拓を目指す考えだ。
同氏は携帯電話の特徴について、(1)パーソナルであること(2)リアルタイム性があること(3)ウェアラブルであること を挙げ、“携帯電話ならでは”の特徴を生かしたビジネスソリューションを提供することで、法人顧客の満足度向上に努めたいとした。
法人ソリューション分野は開拓の余地がある
「(法人市場において携帯電話は)本当の携帯電話の価値を存分に生かした形で使われているのか。付加価値の高いソリューションをお使いいただいているかというと、そこにはまだまだ開拓の余地がある」――。こう話すのは、NTTドコモ 法人ビジネス戦略部長の三木茂氏だ。
これまで法人市場では、“通話料の安さ”や“端末購入コストの安さ”が求める顧客が大半だったが、最近では“モバイルソリューション”に対する興味が高まってきたという。このモバイルソリューション市場に対して、ドコモの強みを生かしながら、コアビジネスの強化と新規ビジネスの開拓を目指すのが、ドコモの基本的な戦略だ。
ドコモの強みとして挙げるのは「便利な商品・サービス」「お得な料金」「充実したアフターサービス」「安心のネットワーク」の4点。だた一方で、「法人向けのネットワークや携帯電話、サービスについて、強みを持っていると認識しているが、外に対してそういうところが十分にPRできていない」というのが課題で、今後、営業活動を通じて認知拡大を目指すとしている。
「顧客に対応する法人営業部門のスタッフ、それを支えるネットワークの担当スタッフ、端末開発スタッフなど、全社が一丸となって法人営業をバックアップし、顧客に最適なモバイルソリューションを提供する」(三木氏)
携帯電話の法人利用は、規模や業種などによってニーズが異なることから、ドコモでは販売チャネルを3つにカテゴライズし、全国規模で事業を展開する大規模法人はドコモ直営の営業スタッフ、地域を中心に活動する中堅企業は代理店やパートナー企業が営業を行う。小規模法人については、マスマーケットに近いことから、マス向けと同様のプロモーション活動でリーチする考えだ。
モバイルだけにとどまらない、トータルソリューションを提供
ドコモはモバイルソリューション事業の拡大に向け、従来から提供しているコアビジネスの強化と、新たなビジネスの創出という2つを軸にした戦略で臨む。
コアビジネスは、BlackBerryなどの端末を利用したスマートフォンソリューション、企業IP内線システム「PASSAGE DUPLE」(パッセージ・デュプレ)などのオフィスソリューション、紛失時の情報漏洩を防ぐセキュリティソリューション、自販機や検針などを通信モジュールで管理するマシンコムソリューションを指す。
新たな領域については、グローバルソリューションやプラットフォームビジネス、ASPビジネスといった領域の開拓を目指す。「特定利用に向けたプラットフォームを用意し、ASP的なサービスを展開する」(三木氏)
具体的な取り組みとしてはまず、これまで注力してきた企業のモバイルソリューションについて、モバイルのみのソリューションを提供するのではなく、モバイルと固定、情報システムを合わせた形で提供するという。「企業のニーズが高まっており、高度な課題に対応できるソリューションをトータルで提供する」(三木氏)
次に挙げるのは、今後の成長が期待されるBtoBtoC分野への取り組み強化だ。「コンシューマー相手のビジネスを展開している企業に、バリューチェーンの構築用途でモバイルを活用してもらう。モバイルCRMなどで培ったノウハウを武器に、顧客企業のコンサルティングを行い、システムを提案する」(三木氏)
もう1つはオペレーションビジネス。BtoBやBtoBtoCのシステムをデータセンターで統合管理したり、システムの運用や携帯電話の管理までをアウトソーシングで受けるといったビジネスも柱の1つになると見る。
また法人ビジネスでは、モバイルを起点としたトータルなソリューションの提案が、顧客企業のビジネスの効率化につながるとし、多様な企業のニーズをくんだ提案ができる体勢を整える。
具体的には法人営業の組織を大きく4つに分け、第一営業部で「モバイル活用による社会インフラの推進」、第二営業部で「モバイル活用による企業・産業の推進」、ソリューションビジネス部で「技術支援の推進」、法人ビジネス戦略部で「コアビジネスの活性化、新規ビジネスの創出」を手がける。第一営業部にBtoBtoCビジネスを推進する「モバイルデザイン推進室」、ソリューションビジネス部に、法人端末やネットワーク、ソリューションを開発する「モバイルデザイン開発室」や「スマートフォン事業推進室」を置くなど、法人ビジネスのトレンドにきめ細かく対応する体勢で、法人市場のニーズに応える。
「顧客企業のニーズや経営課題を把握し、モバイルを入り口にしてトータルなソリューションを提案することで、ビジネスを加速させるところを目指す」(三木氏)
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