耳栓してても通話、押しこめるタッチパネル――KDDIの「新聴覚/新感覚スマートフォン」を体験する:CEATEC JAPAN 2011
端末に触れた耳に振動で音を伝える「新聴覚スマートフォン」と、画面の押しこみ具合を認識できる「新感覚スマートフォン」をKDDIがCEATECに出展している。使い心地はどんなものか――会場で実際に体験してみた。
「耳栓をしても通話できます」――10月4日に開幕した「CEATEC JAPAN 2011」で、KDDIが“音”や“触感”に関する新技術を搭載したスマートフォンを参考出品している。端末の振動で音を伝える「新聴覚スマートフォン」と、キーの押し心地などをタッチパネル上で再現する「新感覚スマートフォン」だ。どちらも京セラと共同開発したもので、商用化は未定だが技術的には実用化できるレベルにあるという。
耳の軟骨に振動を伝える「新聴覚スマートフォン」
新聴覚スマートフォンは、端末に特殊な振動子を搭載したスマートフォンだ。端末を耳に当てると振動子の振動が体に伝わり、音として聞こえる。体の中で振動を音に変換する方法としては骨伝導がよく知られているが、説明員によれば仕組みが異なるという。
骨伝導が頭蓋骨を振動させることで聴覚神経に音を伝える一方、新聴覚スマートフォンでは耳の軟骨を振動させることで鼓膜に音を伝える。KDDIと京セラは今回、耳の軟骨に最適化した振動子を開発し、端末に組み込んだ。耳の軟骨を使うことで骨伝導よりも小さな振動で音を十分に伝えられるという。体験してみると、端末を耳にあてた途端、音が聞こえてきた。ためしに耳からすこし離れた場所にあてると、音はほとんど聞こえなくなった。
振動子から耳の中に振動が伝わり、耳の中で音に変換されるため、耳の穴がふさがっていても音が聞こえる。耳栓やカナル式イヤフォンなどを付けた状態でも通話の音が聞こえ、不思議な感覚になった。また、ヘッドフォンをしている場合も、ヘッドフォンに端末をあてることでヘッドフォンが振動し、音として耳に伝わる。
新聴覚スマートフォンでは、騒音下でも端末をピッタリと耳につければ周りの音が遮断され、音が聞き取りやすいほか、イヤフォンやヘッドフォンで音楽を楽しみながら通話ができるメリットがある。またスピーカー用の穴を必要としないため、防水性能やデザインの自由度も確保しやすい。振動子は厚さ0.6ミリ以下と薄型で、通常サイズの端末に問題なく組み込むことが可能という。
ゲームやWebブラウザにも応用できる「新感覚スマートフォン」
新感覚スマートフォンは5月の「ワイヤレスジャパン2011」でも展示されていたもので、「Haptic(ハプティック)」と呼ばれる京セラの疑似体験技術を応用したデバイス。ディスプレイ部分に押圧センサーと振動機能を組み込み、押した力に応じて振動のフィードバックを返すことが可能だ。ディスプレイ上のキーを指で触れるとキーがフォーカスされ、キーを深く押しこむと押した感触とともにキーが入力される――といった使い方ができるようになる。
触れただけでキーが確定されてしまう従来型のタッチパネルでは押し間違いが多くなりがちだが、この弱点を補う技術としてKDDIは新感覚スマートフォンに期待を寄せている。さらに今回の展示では、文字入力のサポートだけでなくWebブラウザやゲームの操作への応用も提案されていた。
新感覚スマートフォン専用の「新感覚ブラウザ」では、Webリンクにふれるとフォーカスが現れ、自分がどのリンクを選択しているかが分かるようになっている。目的のリンクが選択されていることを確認し、画面を強く押せば、リンクに遷移する。こうした機能で、小さいリンクなどの押し間違いを減らせるという。また、ドラッグ操作後に画面を押しこむことで、画面が自動スクロールする機能もあった。押した力加減に応じて、スクロールの速度が5段階に変化するのが面白い。
「新感覚ゲーム」では、“ボタンを押した力に応じてパンチの届く距離が変わる”というゲームが体験できた。宇宙船から敵が降ってくるのだが、弱く押しこめば手前のターゲットにパンチがあたり、強く押しこめば奥のターゲットにパンチがあたる。ボタンを押すと振動のフィードバックがあり、物理キーを押しているような感覚が楽しめた。
端末は試作機のため分厚い形状となっていたが、すでに市販サイズの端末に組み込めるようになっており、「消費電力なども問題なく実用化できるレベル」(説明員)。また、新感覚スマートフォンが商用化される場合は、専用のAPIを公開して対応ゲームなどを開発できるようにする考えだという。
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