根底にあるのは“ユーザー第一主義”――「GALAXY S 4」の開発思想を聞く:石野純也のMobile Eye(特別編)(3/3 ページ)
GALAXY Sシリーズの最新モデル「GALAXY S 4」が4月27日から世界各国で発売される。これに先立ち、26日には韓国でも発売され、「WORLD TOUR」も開催された。今回のMobile Eyeでは、特別編として韓国のWORLD TOURや開発者への取材を通じて、GALAXY S 4の魅力に迫る。
デザインやUIにもユーザー中心の発想を取り入れる
S IIIの発展というコンセプトは、本体のデザインにも表れている。スリムで丸みを帯び、手にフィットするのは「S IIIに続き、人間のことを考えた機能をシルエットに生かそうとした」(製品デザインチーム 課長 パク・ヒョンシン氏)ためだ。一方で背面に細かなパターンを入れたのは、「高級感が出る」(同上)ことを狙ったため。光の当たり方によって、カラーが異なって見えるのも、S 4の特徴だ。
「S IIIのグリップ感や、オーガニックな形状にはいい反応をもらった。S 4では、それを継続しながら、違う印象も出そうとした。S 4では、高級感を与えることに集中している。そのため、ディテールなど、細かなところまで気を遣った」(パク氏)
“高級感”というと、ほかのメーカーは、端末に金属やガラスといった素材を使用することもある。ところが、S 4ではあえてこうしたアプローチを取っていないという。主な理由は、バッテリーパックの交換にある。
「お客様に配慮することに目的と意味がある。それはデザインチームの哲学でもある。基本的には、バッテリーが交換できるデザインにすることが重要。これは製品デザインの側面から見ても、本当に大切なことだ」(パク・ヒョンシン氏)
耐久性を持たせるため、S 4では背面や側面にポリカーボネートを採用。「ポリカーボネートも部品によって、少しずつ成分を変えている」(パク・ヒョンシン氏)とのことで、細かな部分にもこだわった。
また、S 4はS IIIと比べ、設定メニューや通知上のボタンといったUIも大きく変わっている。例えばメニューは、4つのジャンル別にタブを分け、項目がすっきり整理されている。通知のボタンは種類が増え、カスタマイズも可能だ。これも数々の新機能と同様、「いろいろな国での調査をした結果」(UXデザインチーム 課長 パク・ヨンソ氏)だという。
「すべてはユーザーの利便性のため。設定については、項目が多すぎるとスクロールに手間がかかる。そこで、カテゴリーを4つに分け、スクロールの負担を減らして。(各項目がどこにあるのか分かりやすくなるため、搭載されている機能の)認知度を上げる効果もあるのではないか。通知のボタンは各国のサーベイ(調査)を生かし、これだけ載せることになった」(パク・ヨンソ氏)
Androidは4.0以降、標準でキーを画面内にソフトウェアとして実装することが各メーカーに推奨されるようになった。Googleが自社のブランドで販売するリファレンスモデルのNexusシリーズはもちろん、ほかのメーカーの多くもこれを踏襲している。一方で、GALAXYシリーズは、一貫してホームキーを物理的なボタンに、バックキーと設定キーを本体上のセンサーにしている。S 4でも、この点は変わっていない。ここにも、「ユーザーのため」という発想が貫かれている。
「中央をホームボタンしているのも、ユーザーの利便性のため。何かの作業をしているとき、慣れたボタンですぐにキャンセルができる。これを押すクセがつくと、ないと不便だと感じる。ボタンについては、電話がかかってきたとき、押すだけで出られるメリットもある。すべてにユーザーの調査を何回もかけているが、こうした声はなるべく反映させたい」(パク・ヨンソ氏)
フラッグシップとして、より広いユーザー層に向けた取り組みも行っている。ドコモから発売された「GALAXY S III α」にも搭載されていた「かんたんモード」を、S 4にも採用。ベーシックな機能の大きなアイコンを並べ、機能を絞って操作がしやすいように工夫した。
「初めて使う方やお年寄りの方が使えるインタフェースを作りたいというのが、かんたんモードのコンセプト。3ページの画面が出て、(ホーム画面の)編集などをなくし、動作を最小限にした。また、フォントサイズを大きくして、より使いやすくすることを目的にしている」(パク・ヨンソ氏)
このようにS 4は、新機能と同様、デザインやUIにも“ユーザー第一主義”が貫かれている。実際の評判もよく、滑り出しも上々だ。DJ・リー氏は「数字を具体的に言うことは難しいが、世界的に反応がいい。実際に予想していたより、多くの受注が入っている」と述べている。
一方で、以前この連載でも指摘したように、総合力が高く、対象ユーザーが広い分、機種の特徴を一言で表現しにくい。日本版のS 4は、LTEとの兼ね合いもあるためクアッドコアCPUになる可能性が濃厚。ハードウェアスペックをアピールするのも難しくなりそうだ。もちろん、端末の完成度は抜群に高く、世界で大ヒットしている実績もある。こうした事実をきちんと伝えていくことが、日本で成功するためのカギになりそうだ。
関連キーワード
ユーザーインタフェース | バッテリー | カスタマイズ | ポリカーボネート | Android | CPU | フラッグシップ | GALAXY S II | GALAXY S III | GALAXY S 4 | Google | インタフェース | LTE(Long Term Evolution) | マルチコア | クアッドコア | GALAXY S III α SC-03E | TouchWiz
関連記事
- 「石野純也のMobile Eye」バックナンバー
S4とSIIIを並べてみました:韓国でGalaxy S4専用オプションをチェックした
Galaxy S4が世界に先駆けて韓国で出荷を開始するという。その前日に行われた製品発表会では、Galaxy S4本体と一緒に数多くの“オプション”も登場した。Samsung GALAXY S 4、米国では7キャリアが発売へ
Samsung GALAXY S IIIの後継であるGALAXY S 4は、米国では4月24日にT-Mobileが発売する他、7キャリアが扱う。Samsung、4月末発売予定の「GALAXY S 4」のCM動画3本を公開
GALAXY S 4に搭載される音声翻訳機能「S Translator」、音声付き写真「Sound Shot」、コンテンツ共有機能「Group Play」を紹介する3本のCM動画が公開された。スペックだけじゃない「GALAXY S 4」の見どころ/「ダブルLTE」の狙い/「タップでコンシェル」の新しさ
3月14日にはSamsung電子のフラッグシップモデル「GALAXY S 4」が米ニューヨークで発表され、世界中で話題を集めた。ソフトバンクのiPhone 5でイー・モバイルのLTE網を使えるようになったことも大きなトピックだ。ドコモが発表した新サービス「タップでコンシェル」も取り上げる。S IIIとの違いは?――写真で見る「GALAXY S 4」の外観と新機能
GALAXY Sシリーズのフラッグシップモデル「GALAXY S 4」が発表された。フルHDのスーパー有機ELや8コアCPUなどのスペックに目が行きがたいだが、ユーザー体験を高める数々の新機能も注目したい。S IIIとの違いも含め、見どころをリポートする。Samsung、5インチフルHDスーパー有機EL+オクタコア搭載の「GALAXY S 4」を発表
Samsungの新型フラッグシップスマートフォン「GALAXY S 4」が発表された。世界初のフルHD表示対応スーパー有機ELと、オクタコアプロセッサーを搭載するなど、最先端の機能を有する。2013年4~6月に世界で発売される予定。開発陣に聞く「GALAXY Note II」:“誰もがクリエイティブになれる”――「GALAXY Note II」が描く次のストーリー
5インチ強のディスプレイに専用ペン機能を備えたGALAXY Noteの2世代目のモデル「GALAXY Note II」が日本でも発売される。Note IIでは何が変わったのか。そして初代Noteが日本では「想定したほど売れなかった」理由は。韓国のSamsung電子本社にて開発陣に話を聞いた。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.