インタビュー

薄いけど頑丈――Xperia Zで“厚さ7.9ミリ”を実現できた秘密開発陣に聞く「Xperia Z SO-02E」(後編)(2/2 ページ)

機能は進化させながら、ボディはどんどん薄くなるスマートフォン。Xperia Zでは、厚さ7.9ミリという数値に到達しながら、最厚部のないフラットなボディを実現した。開発者インタビュー後編では、こうした機構設計に加え、ソフトウェアに焦点を当てた。

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グラフィックデザインにも“One Sony”を体現


ヒューマンインターフェースデザイン担当の秋山氏

 ホーム画面やグラフィックデザインなどを含むソフトウェアについては、ヒューマンインターフェースデザイン担当の秋山氏に話を聞いた。

 Xperia Zの電源を入れると、これまでにない新しいロック解除画面が表示される。この画面では、上下どちらかにフリックさせると、ブラインドのようなアニメーションとともにロックが解除される。今までのXperiaのロック解除画面の中では特に遊び心が感じられる部分だ。「いくつかスタディをした中で、『一番やり過ぎじゃないの?』と思ったものをあえて採用しました。使い勝手を損なわず、でもくすっと笑えるような、面白いものを目指しました」と秋山氏は話す。

 一方、Xperia GXやAXで見られた、ロック解除画面を右側にフリックすると、よく使うアプリなどのショートカットが表示される機能は見送られている。これはあえて外したのではなく、「最初のリリース時に(採用が)間に合わなかったものもある」(秋山氏)そうで、ショートカット機能も今後のアップデートで復活する可能性がありそうだ。また、Xperia Zには画面下部(ナビゲーションバー)に戻る/ホーム/タスクがオンスクリーンキーとして表示されているが、秋山氏によると、ホーム画面でのみ、ナビゲーションバー上にオンスクリーンキーを透過表示できるように調整しており、今後の搭載を検討中とのこと。さらに使い勝手の向上するアップデートは歓迎したい。

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 ホーム画面上でピンチインをすると、設置しているウィジェットが1画面に集合してふわふわ浮かび上がる仕掛けもXperia Zでは外され、ピンチインをするとホームの編集画面に切り替わる。ほかの機種にはないグラフィックだっただけに残念だが、この変更は、AndroidのOSバージョンアップ(仕様変更)を視野に入れたためだという。「ほかのAndroidから乗り替えても違和感なく使えるようにすることが、ベースにあります。ユーザーにとって使いやすさのバランスを考えました」(秋山氏)

上下にフリックすると、ブラインドのようなアニメーションとともにロックが解除される(写真=左)。ホーム画面(写真=中)。ピンチインをすると、ホームの編集画面になる(写真=右)

 ホーム画面の壁紙は、従来は「Flow」というテーマで統一していたが、Xperia ZはFlowを継承しつつ、「Experience Flow」としてさらに深化させている。「Xperiaを中心にソニー機器につながる――“One Sony”を打ち出していこうという方向性のもと、壁紙のデザインを刷新しました」と秋山氏は説明する。

 壁紙デザインの中核を成すのが、「Watch」「Listen」「Play」「Create」「Discover」「Connect」から成るソニーのエクスペリエンスカラーだ。これらの5色はWALKMAN、アルバム、ムービーなどXperiaのオリジナルアプリのアイコンのほか、壁紙のテーマにも反映されている。初期状態のXperiaホームの壁紙に設定されている壁紙には、これら5色を集約させ、「よりダイナミックに見せた」(秋山氏)。ただし、従来のXperiaには入れていたライブ壁紙の「Flow」は、「消費電力との兼ね合いを考慮して」(秋山氏)Xperia Zには入れていない。

Xperiaホームのテーマ

 秋山氏によると、以前から、Xperiaのグラフィックデザインには、建築業界などで使われている「パラメトリシズム」というコンセプトを採用してきたという。「パラメーターで形状を指定して、有機的に手で書いたのではなく数値で形を作りながら、壁紙やUIを作れないか考えました。従来はパラメーターは書いていくものの、あまりロジカルには数値を出しませんでした」と秋山氏は説明する。今回はこのパラメトリシズムを、ちょうどいい落としどころに調整したが、あまり今までとかけ離れていても違和感があるので、小さい改善を積み重ねて使いやすくしたそうだ。

 「ロック画面とホーム画面の担当は違いますが、使い勝手などを考慮しつつ、今回は自分が担当するもの以外のデザインも横断して見ようという動きがありました。Xperia Tablet Zにも同じグラフィックデザインを採用していますが、そこの部分も苦労しながら最後まで調整しました」(秋山氏)


 ソニーの完全子会社になってから初めてゼロから開発したスマートフォンであるXperia Zは、デザイン、機構設計、UIのいずれにも、新しい要素が盛り込まれている。ガラスの一枚板を美しく表現した薄型ボディは、まさに“新しいXperia”と呼ぶにふさわしいだろう。一方で、ボディの持ちやすさや使いやすいUI、日本向けでは外された「スタミナモード」など、改善を期待したい部分もある。すでに夏モデルの足音が聞こえてきているが、次期モデルではどんなXperiaを見せてくれるのだろうか。大いに期待したい。

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