“失敗覚悟”の多角展開 LINEは「生活×エンタメ」密着のプラットフォームで世界一目指す(1/2 ページ)
LINEの事業戦略発表会で、森川亮CEOは「生活」と「エンタメ」の両軸プラットフォームとしてLINEを成長させていくことを発表。うわさされている上場については明言を避けた。
10月9日に開催した事業戦略発表会「LINE CONFERENCE TOKYO 2014」で、続々と新サービス・新事業について発表したLINE。狙いは、オフラインとオンラインの結びつきをより強固にし、「毎日の生活をより豊かに、楽しくすること」(森川亮CEO)だ。
矢継ぎ早に新サービスを投入することにより、「LIFE(生活)」と「エンターテインメント」を両軸としたプラットフォームとしてLINEを世界一のサービスにしていく方針だが、森川氏は「全てが成功するかどうかは分からない」とも発言。“失敗覚悟”の多角展開で世界市場を果敢に攻め、安定的な収益の確保を目指す。
ユーザーは順調に増加 欧州や北米進出も視野
LINEユーザーは2014年8月10日5億6000万人を超え、名実ともに世界一のコミュニケーションプラットフォームの座を確立している。月間のアクティブユーザーも1億7000万人を超えており、1日に送信される総メッセージ数は130億件、無料通話は3400万回、タイムラインの投稿数は1億6000万件とユーザーは活発にLINEを利用している。LINEの成長をけん引している存在とも言えるスタンプも、1日18億回送信されている。一般ユーザーが自作スタンプを販売できる「LINE Creators Market」も好調で、23万以上のクリエイターが登録している。スタンプの種類は計2万セットに達した。
LINEは世界一のプラットフォームになることを掲げており、まだユーザー数が多くない欧州や北米にも積極的に挑んでいく姿勢だ。
地図、決済、オープンIDで「生活」を豊かに
生活の分野では、LINEの出澤剛COOが「地図」「決済」「LINE@IDの一般開放」の3つを新たに展開することを発表。いずれもLINEが得意としてきたオンラインのつながりを軸に、オフライン展開を主軸に置くパートナー企業と連携を図るものだ。
今秋リリース予定の屋内専用地図アプリ「LINE Maps for Indoor」は、渋谷ヒカリエなどの大規模施設で道に迷ってしまうユーザーのために店舗情報を公開し、目的店までのルートをナビゲートしてくれるというもの。訪日外国人需要も考え、日本語、英語、中国語(繁体字、簡体字)、韓国語の5種類の言語に対応する。
決済サービス「LINE Pay」は、クレジットカードと連携するほか、コンビニエンスストアや提携銀行の口座に事前にチャージすることにより、提携店舗やWebサービス内での支払いをLINEアプリで行えるというもの。LINEの友達同士での送金や割り勘ができるなど、メッセージアプリとしてのLINEの強みを生かした機能を備えているのが特徴だ。LINEアプリ内で二次認証を行うなど、セキュリティ面にも配慮している。2014年冬に提供予定で、海外向けにはクレジットカード機能のみを付与する。
また、LINE Payは、日本交通と提携したタクシー配車アプリ「LINE TAXI」(今冬リリース予定)や、食品を始めとする配達サービス「LINE WOW」(今秋リリース予定)とも連携し、それぞれLINE Payで決済できる。出澤COOは「生活そのものをモバイル化させる」と語ったが、今後はこのように払ったものがすぐ届くオンデマンドECの分野をさらに強化していくという。
LINEはクローズドなコミュニケーションを基盤としているが、法人向けに提供しているLINE@のアカウントを一般ユーザー向けにも開放することが発表された。LINE@はTwitterのようなオープンなIDで、1人で複数のアカウントを持つことが可能。実店舗から情報を受け取ったり、飲食店の常連客とのコミュニケーションをしたりと、人間関係を広げて幅広い情報を受発信できるようにする。
ゲーム、漫画、音楽で「エンタメ」を強化 それぞれ新会社設立
「スマホ時代のコミュニケーションは感情と結びついたものになる」と話すLINEの舛田淳CSMO(最高戦略・マーケティング責任者)は、エンターテイメントの分野で「ゲーム」「漫画」「音楽」の3軸を強化すると語った。各分野でパートナー企業と新会社を設立し、本格的に新規事業を拡大していく。
ゲーム分野では、舛田氏が「カジュアルコア」と表現するように、カジュアルに遊べる手軽なゲームと、コアなゲーマーにも満足してもらえる本格的なゲームの両軸で世界展開をしていく。カジュアルゲームでは「LINE POP2」や「LINE Trio」、コアゲームでは本格的なMMORPG「LINE 英雄の軍団」などをリリース予定。サイバーエージェントやグリーと共同してそれぞれ新会社を設立することも明らかにした。
漫画については、2013年4月にリリースした電子コミックサービス「LINE マンガ」の世界展開を発表。講談社、小学館、メディアドゥの3社とともに新会社「LINE Book Distribution」を設立し、日本のコンテンツを海外向けに積極展開していくことを明かした。LINE マンガのダウンロード数は800万を超えており、8万5000ものタイトルをラインアップしている。
音楽については、「ユーザーに新しい音楽体験を届ける」(舛田氏)ことを目指し、エイベックス・デジタル、ソニー・ミュージックエンタテイメントとともに新会社「LINE MUSIC」の設立を発表した。サブスクリプション型(定額制)ストリーミングサービスを提供する予定で、詳細については近日中に明らかになるという。
また、LINEはアーティストやタレントなどとファンをつなぐ仕組みとして、「LINE公式ブログ」と「LINE公式アカウント」を提供する。いずれも一般ユーザーは利用できない著名人のためのもので、LINE公式アカウントは有料で限定した情報を配信するなどファンクラブ的な機能を持たせるという。
「LINEを使い、コンテンツのデリバリーのあり方を変えていきたい」と舛田氏は意気込みを語った。
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