連載

NTTコムとニフティも参入――音声通話サービスを提供するMVNOが増えてきた理由石野純也のMobile Eye(11月26日~12月5日)(2/2 ページ)

この2週間は、MVNOに関するニュースが相次いだ。中でも注目したいのが、音声通話サービスを提供するNTTコミュニケーションズとニフティ。今回は「OCN モバイル ONE」と「NifMo」の2つのサービスについて解説していきたい。

前のページへ |       

2つのお得と3つの安心で差別化――老舗のニフティも音声サービスを開始

 光コラボレーションモデルやMVNOの仕組みを活用し、固定からモバイルまでをワンストップで手がけようしている事業者は、NTTコミュニケーションズだけではない。むしろ、ISPのほとんどが、同様のビジネスモデルを検討しているといってもいい。老舗のISPであるニフティもその1社で、代表取締役社長の三竹兼司氏は「(光回線の)卸を受けて、その(値引きの)原資を受けての割引のようなことは、今後も積極的にやっていきたい」と語る。そのニフティが11月27日に開始したサービスがNifMoだ。


11月27日にスタートした「NifMo」。ISPのMVNOとしては後発となる

 料金プランはデータ量ごとに分けられ、「2GBプラン」「4GBプラン」「7GBプラン」がある。料金は2GBプランが月額900円、4GBプランが月額2500円、7GBプランが月額3500円。回線交換の音声通話に対応させると、基本使用料が700円かかる格好だ。通話料は30秒20円かかる。MNOの料金プランよりは安い部分が多いが、こうした料金プランはMVNOで一般的。2Gバイトが900円は“相場”で他社も同様の水準だ。4Gバイト以上のプランでは優位性があまりない。先に挙げたOCN モバイル ONEと比べても割高で、データ量のシェアや無料のIP電話などの特徴もない。


データプランは2GB、4GB、7GBの3つで、そこに音声通話やSMSを組み合わせられるイメージ

 こうした状況を受け、同社のネットワークサービス事業部長 三浦信治氏も「どんぐりの背比べ」と語る。料金の安さでは、MVNO同士の差別化は難しいというわけだ。端末は各社とも、SIMロックフリーモデルをメーカーから調達することが一般的。フリービットのように独自端末を開発するMVNOもあるが、ここでの差別化はMNO以上に難しい。そこでニフティが訴求するのが、「2つのお得と3つの安心」(三浦氏)だ。

advertisement

「NifMo」の狙いを語る、ネットワークサービス事業部長 三浦信治氏
MVNOの料金を「どんぐりの背比べ」として、2つのお得と3つの安心を訴求する

 同社は「NifMoバリュープログラム」を用意。これは、専用アプリから買い物をすると割引を受けられるアフィリエイトプログラムで、「(たくさん)買い物をした月なら、500円、600円にスマホの料金が収まる」(三浦氏)。専門ショップに加え、Yahoo!ショッピングなどのモールも入っているため、欲しいものが見つからないことはなさそうで、NifMoバリュープログラムを経由すれば確実に割引が受けられそうだ。もう1つのお得が「NifMoコネクト」。公衆無線LANサービスの「BBモバイルポイント」を利用できる。


「NifMoバリュープログラム」を用意。専用アプリで行った買い物の割引は、通信料に充当できる

 三浦氏が述べていた「3つの安心」とは、サポートや保証を充実させたこと。ISPとして歴史の長いニフティの実績を生かしたサポート体制を敷き、端末の水濡れ、故障、破損などに対応する「NifMoあんしん保証」も開始する。また、ISPで一般的な訪問サポートをMVNOでも行う。接続設定だけでなく、基本操作なども教えてもらえるサービスとなる。


サポートや保証を充実させ、初心者ユーザーの取り込みも狙う

 満を持して参入したニフティだが、厳しい見方をすると、これでも「どんぐりの背比べ」であることに変わりはない。Wi-FiがセットになったサービスはIIJのBIC SIMやBIGLOBEなどほかにも多く、保証サービスやサポートに力を入れるMVNOも増えている。訪問サポートは、先に挙げたOCN モバイル ONEも開始した。後発として参入したニフティが、どこまで魅力的なサービスに育て上げていけるのかは未知数。三竹氏が「MVNOは、格安スマホを目的でやっているのではない」と述べているように、ニフティの長期的な目標は、IoT(Internet of Things)のサービスを提供するところにある。NifMoはその第一歩という位置づけだが、少々インパクトに欠けていたというのが筆者の率直な印象だ。

IoT(Internet of Things)を見すえたMVNO参入であることを語る、代表取締役社長 三竹兼司氏

 また、後発にも関わらず準備不足な点も目についた。例えば、現状では音声通話を開通させようとすると、SIMカードが郵送になってしまう。本人確認をするためだが、即時開通する手段がまったく用意されていないのは、一部の他社と比べて見劣りする部分だ。三竹氏は「量販店でコーナーを置いていただけるところがあればやりたいが、交渉も必要。今のところはご不便をおかけしてしまう」と述べていたが、サービスインに合わせてどこか1店舗とでも始める周到さは必要だっただろう。「将来的にはMVNO市場の10%ぐらいをNifMoで取っていきたい」(三浦氏)というなら、なおさらだ。今後の改善に期待したい。

シェア10%を目指すうえで、販路がWebと電話のみというのは少々心もとない。先行する他社がリアルな店舗で契約数を伸ばしているだけに、どう対抗するのかを示してほしかった
前のページへ |       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.