「Lumia抜き」で立ち上がる日本のWindows 10 Mobile市場:「モバイル・ファースト」時代のWindows最前線(2/2 ページ)
国内でのWindows 10 Mobile端末の展開について、新たに3社を加えた6社が発表された。だがそこに本命だったはずの「Lumia」シリーズの姿はなく、日本マイクロソフトの判断に疑問の声が上がっている。
「ポストPC」を先取りするContinuum
Lumia抜きとはいえ、Windows 10 Mobileの市場は日本でも確実に立ち上がるだろう。確かに、一般向けのアプリが充実するかどうかは大きな課題として残っている。だが法人ユーザーが求めるのは、OS標準の管理機能、OfficeやWebブラウザ、VPN接続といった機能だ。それでカバーできない用途は、アプリを内製するという手も残されている。昼休みにゲームで遊びたい従業員は、個人のiPhoneを使えばよいというわけだ。
だが、Windows 10 Mobile独自の機能にも注目しておきたい。それがスマートフォンや小型タブレット向けの「Continuum for Phones」だ。一般には2in1型PCにおいて変形時に画面を切り替える同名のContinuum機能が知られているが、Windows 10 Mobileではスマートフォンなどを外部ディスプレイに接続し、キーボードやマウスとともにPCのように利用できる機能になる。
iPhoneやAndroidにも外部ディスプレイへの出力機能はある。だがContinuumでは、アプリのユーザーインタフェース自体がPCのように変化することが、最大の違いになる。単に大画面で動画を楽しんだり、プレゼンをしたりする用途だけでなく、ExcelのようなアプリにPC用のキーボードを使って入力できるのだ。
これは、いわゆる「ポストPC」を想定した機能でもある。ここ数年、新入社員が現場に配属される時期になると「PCが使えない」携帯電話育ちの若手の存在が話題になっていた。さらに最近では「フリック入力のほうが速い」と主張する、スマホ世代も増えているという。
もちろん、若手なら簡単なトレーニングを受けることで、すぐにWindowsやOfficeを使いこなせるようになるはずだ。だが、ビジネスにおいてPCを利用することが当たり前であると考える世代は徐々に年齢を重ねており、毎年一定のペースで引退していく。やがてはiPhoneとiPadで育った世代が主流を占めるようになるだろう。
ビジネスの現場にスマートフォンが普及すれば、やがてスマホだけで仕事をしたいという要求が高まっていくのではないだろうか。Continuumに対応したスマホなら、モニターとキーボードがある場所ならどこでも仕事場になる。やがて「ノートPCとスマホの2台持ち」が非効率に思える時代がやってくる可能性がある。
マイクロソフトはモバイル市場における戦略を誤った一方で、過去のしがらみにとらわれず、方向性を大胆に切り替えながら、未来を先取りした新機能を搭載しようとしている。Continuumが成功すれば、iPhoneやAndroidが同等の機能を模倣することは想像に難くない。マイクロソフトが優位に立てる期間はそれほど長くないかもしれないが、そのときこそWindows 10 Mobileの先進性が評価されることになるだろう。
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