インタビュー

スマホ1億台出荷の中Huawei 海の向こうで華開いたニッポン的物作り日米展開の今後は?(3/3 ページ)

2015年に1億台以上のスマホを出荷したHuawei。数から品質への戦略転換を果たし、世界的なブランドイメージの向上に努めている。躍進の原動力とはなにか? グローバルの担当者に聞いた。

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口コミが強いSIMフリー市場で先手 IoTや家、車でのエコシステム拡大を目指す

 プレミアム路線で数から品質重視への脱却に成功しつつあるHuawei。今後の製品は、ハイスペックなモデルが中心になるのだろうか?

 シュウ氏は、「プレミアム戦略は全てのクラスに適用している。ミッドハイでも、エントリーでも。どの価格帯でもより良い体験を提供するためで、それは正しい方向に向かっている」と説明する。

 ウォン氏は端末のスペック、特に付加価値機能について、「シンプルに回帰するだろうが、ニーズ次第だ。ただし、リテールで存在感を高めるには、機能面でのアピールが必要。指紋認証などがそうだが、ニーズを先取りする機能を提供したいと思う」と話す。

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 その中で「伸び代がある」(ウォン氏)というのがカメラだ。Huaweiの製品はビューティーモードなど、自撮り(セルフィー)の利用を意識した機能を積極的に展開している。またクラスを問わず多くのユーザーの関心事として、「バッテリーの持ちと画面の見やすさ。そして処理能力」を挙げた。

 製品スペックは販売戦略にも影響する。スマホの場合、高価なフラッグシップモデルはキャリアモデルとして、割引きを前提に販売される。その点Huaweiは、キャリア市場の日米でSIMロックフリーモデルに力を入れ、なおかつMateシリーズなど上位価格帯の製品を押し出している。

 ウォン氏は、「どの市場でもよりよい選択肢を提供したい。そして、どうしても高いスマホがよりよい体験を提供できる。オープン市場でも、高価格帯ですぐれた性能を体験してほしい」と説明する。またシュウ氏は、「格安だけではないHuaweiを知って欲しい。業績が伸びたのは、ミドルハイ、そしてフラッグシップを押したことにある。またオープンマーケットが発達した地域は、口コミがブランドイメージに大いに影響する」と述べ、SIMロックフリー市場でのスペック競争に先手を打つ意味もあることを示唆した。


深センにあるHuaweiショップ。取材日は「Mate 8」の発売日で、当日分は完売していた。ちなみに中国本土もオープン市場だ

 さらにHuaweiのブランド戦略はスマートデバイスだけでなく、IoTやスマートハウス、そして自動車など、さらに大きなコンシューマー市場が視野に入っているという。自動車分野ではAudi(アウディ)やVolksWagen(フォルクスワーゲン)との協業がスタート。R&Dではエコシステム拡大のため、常にオープンなスタンスを取っていることをアピールした。

 「個人が使うスマホの次は、SOHOや中小企業で使うもの。例えばタブレット市場が成長するだろう。そしてIoT、家、車と、エコシステムを拡大したい。そのために、われわれは常にオープンだ。またハードだけでなく、ソフト(アプリ)やクラウドを生かした、総合的なサービス提供がこれからの潮流。Huaweiのデバイスは独自UIの『Emotion UI』を搭載しているが、将来は端末を問わず、どの接点でもこのUIからサービスを利用できるようにしたい」(シュウ氏)


 MVNOが中心となったSIMロックフリー市場が広がり、さまざまな海外メーカーのスマホが身近な存在となった。中でもHuaweiの製品はコストパフォーマンスが高く評価されている。またP8liteやMate 7/Sなどは、ボディのデザイン性やスリムさでライバルに差をつけていると言って良いだろう。

 今回の取材では、「Huaweiは技術を重視する、研究・開発の会社」であることが度々強調された。コンシューマー部門では7割、また全社でも5割近くがR&Dに従事しているという。デザインの研究にも力を入れているのが非常に印象的で、その結果が製品に反映されているのも納得だ。そして、競争力ある製品をグローバルで、しかも1億台レベルで展開するには、非常に高い製造・生産技術が必要で部品の調達力も問われる。

 HuaweiはSamsung、Appleをさらに追い上げる姿勢で、できるだけ早く全世界シェアで2位の座を取りたいとしている。そのためにはさらなるブランドイメージの向上が必要だろう。ハイスペックモデルが求められる日本市場でどこまで成功できるのか? それが今後の世界戦略の行方を左右するかもしれない。

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