“dマガジンのブラウザ対応”は来店者の声がきっかけ――スマホ時代におけるドコモショップの工夫と苦悩(1/2 ページ)
「dマガジン」がPCブラウザからも閲覧できるようになりました。この対応は「大画面でも読めるようにしてほしい」というユーザーからの声がきっかけでした。その意見を顧客からヒアリングしたというドコモショップの担当者に、スマホ時代におけるショップの工夫を聞きました。
NTTドコモが提供する「dマガジン」がPCのブラウザでも閲覧できるようになりました。dマガジンはこれまでiOSとAndroidのみ対応していましたが、2016年2月以降、WindowsおよびMacのブラウザでも読めるようになっています。
実はインターネットブラウザへの対応は、ユーザーからの「大画面でも読めるようにしてほしい」という声がきっかけでした。
その意見を顧客からヒアリングして、本社へ直接要望を出したのが、ドコモショップ代々木店で働く寺内さんです。今回、当時の様子を振り返ってもらうとともに、普段の仕事について話を伺いました。そこには顧客満足度向上のためのたゆまぬ努力と、スマホ時代におけるショップの苦悩、そして工夫がありました。
自分のPC持参でdマガジンをPCで見る方法を聞かれた
―― dマガジンの要望を出した経緯を教えてください。
寺内さん dマガジンが始まってからしばらくたったあと、操作案内でご来店されたのが、dTVやdマガジンをよく使ってくださっているお客さまでした。その方は実際にご自分のPCを持ってカウンターにいらっしゃって(!)、dマガジンをPCで見る方法を聞かれたんです。お客さまはPCを使うことが多く、大画面で見たいということもあって、「PCで読めたらいいよね」という話を伺いました。私自身も確かにdTVのように大きな画面の方が雑誌は読みやすいと思い、CS情報に書かせていただきました。
―― CS情報とは何ですか。
寺内さん 日々業務をしていく中で気づいた改善点や、お客さまからの要望を上げるところです。例えば私達の業務をサポートするシステムの確認ツールでも、「この項目を増やしてくれるとお客さまに説明しやすい」といった意見を毎月提出しています。
―― どうやって要望を上げているのか具体的に教えてください。
寺内さん 空き時間や仕事が終わったあとを利用して、それぞれのスタッフが業務用PCから入力しています。毎月25日が締切で、少なくても1人月2件以上は提出しなければいけません。提出状況はリーダーがチェックしていて、日々の朝礼で入力を周知させているため、改善点がないか普段から意識して仕事をしています。
―― 提出後、本社からのレスポンスはあるのでしょうか。
寺内さん 要望は全ての店舗から出されており、その中で改善に結びついた事例やお客さまによって有益になるものは、スタッフ向け冊子の「気付きの声」に選ばれます。冊子は各店舗に毎月1冊ずつ配布され、選出された際はコメントを添えます。賞を受賞することもありますよ。あとは自分で「機能改善されたな」と気付くこともあります。
―― dマガジンのブラウザビューア以外で寺内さんが上げた改善点はありますか。
寺内さん 「海外1dayパケ」のサービスが始まったばかりの頃、パンフレットには主要国の金額しか載っていませんでした。それ以外の国の料金はスタッフの案内ツールにも掲載がなく、サイトを見るしかなかったんです。PCで印刷してお客さまに渡していましたがちょっと大変だし、お客さまの中にはPCを持たない方もいらっしゃいます。そのためパンフレットに詳細な料金を記載してほしいと書いたところ、それも反映されました。
―― 寺内さんの要望が改善につながったんですね。顧客側からは他にどんな要望がありますか。
寺内さん Android端末は対応していますが、「ドコモ電話帳」をiPhoneに対応してほしいと言われます。すごく前に「伝言メモ」をiPhoneでも使いたいという声もありました。それはApple側の問題で……と思いますが、お客さまはそこまでご存じない方も多いので。
ヒアリングは押しつけにならないよう配慮
―― スマートフォン時代になり、顧客からの要望や質問の種類も変わってきたのではないでしょうか。
寺内さん スマホの操作案内では、アプリの使い方を聞かれることがよくあります。LINEなど自分も使っているアプリの範囲内であれば分かりますが、聞いたこともないようなアプリの使い方を聞きに来られることもあります。しかしむげに追い返しても問題解決にはならないので、「ドコモが提供するアプリではないのでご案内はできませんが、分かる範囲で調べてみますね」とできる限りのことをやります。
―― それは大変ですね……。顧客と接客する際に心掛けていることはありますか。
寺内さん 私が先輩スタッフからずっと言われてきたのは、「気配り」と「気遣い」。常にお客さまの立場になって考えるようよく教えられました。またdマガジンの要望を伺ったときのように、お客さまへのヒアリングも心掛けています。
―― ヒアリングで工夫している点はありますか。
寺内さん 私たちは獲得率を上げるための提案をしなければならない。しかしお客さまはガンガン来られるといい気持ちはしない。だから押し付けにならないよう気を付けています。例えば自宅Wi-Fiの話が出たら、利用状況をヒアリングした上でドコモ光のメリットを伝えます。最初から訴求モードのときもありますが、なるべくお客さまの要望や普段の使い方を把握した上で、お客さまの目的をかなえつつ満足してもらえるように考えています。
お客さまによっては壁を作られることもありますが、その際は「言われたことだけやって早く終わらせたほうがいい」と判断します。サラッと案内して頭の片隅にでも覚えてもらい、後々思い出してもらえればいいかなと。
―― そういったコミュニケーションの技術は研修で学んだりするのでしょうか。
寺内さん ドコモショップには資格認定制度があり、実技ではヒアリングがすごく重要になるんです。試験に合格すると資格がもらえるのですが、知識量だけでなく、ヒアリング力と提案力が試されます。私は故障対応などの技術系の資格である「テクノマイスター」です。最高位のフロントスペシャリストになると、スワロフスキーのついたゴールドのバッジをつけることができます。
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