MVNOのSIMが手元に届くまでに行われていること:MVNOの深イイ話(3/3 ページ)
スマートフォンの利用に欠かせないSIMカード。大手家電量販店の携帯電話コーナーでは、MVNO各社のSIMカードがパッケージに入れられて並んでいるほか、カウンターで渡してくれる場合もあります。SIMカードが手元に届くまで、何が行われているのでしょうか?
物流と黒SIMのコスト
MVNOはキャリアが発行するSIMカードの提供を受けていますが、これにかかるコストはどのように処理されるのでしょうか。ドコモの場合、新規開通の手続き費用として2000円(税別、以下同)、USIMカード貸与にかかる費用として394円がかかることが約款に定められており、SIMカードのプロビジョニングを行ったタイミングでこの費用が発生します。また、プロビジョニングを行ったSIMについては、基本使用料として毎月97円が請求されます。これは、通信を全く行わなかった場合でも発生します。
つまり、量販店の店頭に並んでいる黒SIMが入ったパッケージは、店頭に在庫しているだけで97円が毎月請求されるのです。これはMVNOにとっては地味に痛い出費です。多くの店舗にSIMを配置することができれば、自社のSIMが手に取られる可能性は上がるでしょう。しかし、そのためには店頭に在庫されるSIMの量が増え、それが月々のコストとなって跳ね返ってくるのです。
支払金額が決まっているプリペイドタイプのSIMだと、長期在庫してしまうと赤字になる恐れさえあります。特に旅行者向けの短期間利用のプリペイドSIMではその傾向が強くなっています。MVNOの負担を押さえるために店頭在庫をなるべく減らし、回転をよくしなければなりません。その上で売り切れを回避するためには、適切な生産調整と頻繁な納品が必要になります。まるで生ものを扱っているようです。
この状況は、SIMカードを自分で発行できず、キャリアが定めたプランの中でビジネスを組み立てなければならないライトMVNOの制約の1つです。フルMVNOであれば、SIMカードの調達コストや設備コストをどのように回収するか、自社でプランを組み立てられるため、別の解を見つけられるかもしれません。
使い終わったSIMは返却が必要なの?
最後に、解約などによって使わなくなったSIMの扱いを取り上げましょう。規約を見ていると、使わなくなったSIMカードはMVNOに返却するように、と指示されていると思います。実は、MVNOに提供されるSIMはキャリアからの貸与(レンタル)品なので、MVNOはそのSIMを利用者にまた貸ししています。MVNOとしては、キャリアから借りたSIMを勝手に処分してよいというわけにはいきませんので、利用者にもSIMの返却を求めているのです。
ちなみに、キャリアにSIMを返さなかった場合でも、MVNOがキャリアからペナルティを受けることは今のところないようです。IIJでも利用者からSIMが返却されなかった場合のペナルティは今のところ特に設けていません。
著者プロフィール
堂前清隆
株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ) 広報部 技術広報担当課長
「IIJmioの中の人」の1人として、IIJ公式技術ブログ「てくろぐ」の執筆や、イベント「IIJmio meeting」を開催しています。エンジニアとしてコンテナ型データセンターの開発やケータイサイトのシステム運用、スマホの挙動調査まで、インターネットのさまざまなことを手掛けてきました。
- Twitterアカウント @IIJ_doumae
- IIJ公式技術ブログ「てくろぐ」 http://techlog.iij.ad.jp/
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