iPhone X「ホームボタン撤廃」に見るアップルの強い意志表示――過去の成功体験から決別し、新しい会社に生まれ変われるか:石川温のスマホ業界新聞
9月12日(米国太平洋夏時間)に発表された新しいiPhone。その中でも一番注目すべきは「iPhone X」だ。iPhoneのシンボルでもあるホームボタンを廃止したことは、Appleにとって新たな“旅立ち”につながる一歩になるかもしれない。
今回のアップル発表会、最大のニュースはやはり「iPhone Xでホームボタンを廃止した」という点だろう。iPhoneのシンボルでもあり、操作がわからなくなってもホームボタンさえ押せば、初期画面に戻るという「作法」は、スマホ初心者でもわかりやすく、とっつきやすさの象徴でもあった。
この記事について
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2017年9月16日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。
それを「次の10年間に向けたiPhone」で採用してきたのだから、アップルとしては相当な英断があったはずだ。
今回の発表会は、アップル新社屋にあるスティーブ・ジョブズ・シアターにて開催された。発表会の冒頭にはジョブズ氏の肉声メッセージとともに、ティム・クックCEOがジョブズ氏の功績を讃えた。
iPhoneが10周年を迎え、一方でジョブズ氏が提案したアップル新社屋がまもなく完成し、スティーブ・ジョブズ・シアターのこけら落として開かれた今回の発表会。
一連の演出を見ると、アップルとしては、「ジョブズが培った成功体験への決別」という強い意志があったのではないかと、うがった見方をしたくなった。
おそらく、「タッチパネルとホームボタン」という組み合わせは、ジョブズ氏が考えたものだろう。しかし、このユーザーインターフェースにしがみついていたら、顧客は飽き始め、いつしかiPhoneにそっぽを向くのは時間の問題だ。アップルとしては成功体験に浸り続け、保守的な体制になってしまえば、いつしかライバルに倒されてしまうという強い危機感があったのではないか。
だからこそ、あえて自分たちでその成功体験にしがみつくことなく、決別するために、ホームボタンをなくしたユーザーインターフェースに挑戦したように思う。
アップルとしては流石にiPhone Xだけにラインナップを絞るということはせず、従来モデルの後継機種となるiPhone 8とiPhone 8 Plusを用意してきた。端末価格や部材の調達から考えれば当然だ。
ただ、将来的にはiPhone Xのラインナップに集約されて行くのではないか。ただし、この1年でホームボタンのない操作性が支持されることが条件だ。
もし、ホームボタンがなくても快適だということになれば、iPadも同様にホームボタンが廃止されてもおかしくない。一方で、操作性が定着しなければ、ホームボタンに逆戻りするかもしれない。
アップルは、過去の成功に区切りをつけ、次の10年に向けて早くもスタートを切った。ホームボタンとの決別は、まさにアップルが自ら変わろうとする強い意志表示と言えそうだ。
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