大手キャリアの“逆襲”が目立った2017年/MVNOは「勝ち組」「負け組」が明確に:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
2017年は大手キャリアにとって「逆襲の1年」だった。大手3社の解約率は大幅に下がり、MVNOへの流出は止まりつつある。その影響を受け、MVNOは成長が鈍化するところや、事業が破綻するところも出た。
はっきり分かれたMVNOの「勝ち組」「負け組」
大手キャリア自身の料金プラン改定と、サブブランドの勢いに押されたのが、その他のMVNOだ。その象徴的な例が、プラスワン・マーケティング(POM社)のFREETEL SIMといえるだろう。経営不振に苦しんだPOM社は、会社を端末部門とMVNOに分割。後者を楽天に約5億円で売却した(関連記事)。
その後、POM社はSIMロックフリースマートフォンの製造、販売で会社を再建するはずだったが、12月には裁判所に民事再生法の適用を申請(関連記事)。テレビCMに女優の佐々木希を起用するなどの大々的な宣伝が裏目に出て、経営破綻にまで追い込まれてしまった。
堅実な経営を続けているMVNOにも、大手キャリアやサブブランドの影響が出始めている。IIJmioは純増数の伸びが鈍化。2016年度までは、四半期ごとに4万契約前後、契約者を上乗せしていたが、2017年第1四半期に入り、成長に急ブレーキがかかる。2017年度第2四半期は純増数が6000にとどまり、1年前の勢いはない(関連記事)。IIJは、MVNEとしてMVNOの支援に力を入れ、法人部門は大きく伸びているため、一概に不調とまではいえないが、いわゆる格安SIM、格安スマホの勢いが衰えている1つの証拠といえるだろう。
とはいえ、市場そのものは成長しており、全てのMVNOが一律で大手キャリアやサブブランドの影響を受けているというわけではない。自力での成長と買収、両方で140万契約を突破した楽天モバイルは、その1社。「Fun with Fans」をスローガンに掲げ、ファンのコミュニティーを軸に集客やサービス開発を行うケイ・オプティコムのmineoも、順調にユーザー数を伸ばしている。
2017年にはニフティがノジマに、BIGLOBEがKDDIに買収されるなど、MVNOに関連した会社の統廃合が大きく進んだ。楽天によるPOM社の買収劇も、その1つだ。その意味では、MVNOが、勝ち組と負け組に分かれ始めているともいえるだろう。総務省の統計では、600社以上あるMVNOだが、かつてのISPと同様、今後は徐々に数を減らしていく可能性もありそうだ。
こうした状況のなか、楽天モバイルを運営する楽天は、1.7GHz帯および3.4GHz帯の周波数獲得に名乗りを上げた(関連記事)。2025年までに6000億円を調達し、自力で基地局を整備していくというのが楽天の計画だ。新規周波数の免許が下りれば、楽天は2019年にもサービスを開始する予定。「第4のキャリア」として、1500万の加入者獲得を目指す。
周波数の新規割当は2018年3月を予定しており、既存事業者のドコモ、KDDI、ソフトバンクも対象。割当の枠が限られていることから、楽天の動向次第では、既存3社のネットワーク計画にも影響が出る可能性はある。楽天がどのような計画で大手3社に立ち向かっていくのか、まだ不透明な部分は多いが、周波数獲得の審査に向け、徐々に全貌が明らかになっていくだろう。モバイル業界は、2018年も話題に事欠くことはなさそうだ。
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