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ソフトバンクの「ギガモンスター+」はどれだけお得? 業界への影響は?石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

ソフトバンクが新料金プラン「ギガモンスター+」を提供開始。月に50GBのデータ通信を利用でき、一部サービスの通信量がカウントされない。一方で「月月割」が付かない分離プランとなっている。新プランの狙いと業界に与えるインパクをと解説する。

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ネットワーク中立性の議論が起こる可能性も

 金額面とは話が変わるが、ウルトラギガモンスター+は、ネットワーク中立性の観点からも議論を呼びそうだ。ネットワーク中立性とは、土管の役割を担う通信事業者が、上位レイヤーの扱いを差別してはならないという考え方を指す。データ通信料などの面で特定の事業者だけを優遇すると、そうでない事業者が競争上不利になってしまうという懸念もある。

 ウルトラギガモンスター+の例でいえば、同じ動画配信サービスのジャンルに入るNetflixやニコニコ動画などのサービスがゼロレーティングに含まれていない。もちろん、現実的にはそろえられているコンテンツに差があるため、通信量がカウントさないだけが選択基準にはならないとは思うが、仮に同じコンテンツがあった場合、ウルトラギガモンスター+のユーザーがどちらを選ぶかは明白だ。サービスレイヤーの事業者から、こうした不満の声が挙がる可能性も否定できない。


対象サービスは当初8つだが、徐々に増えていく可能性もあるという

 ただ、「中立性の問題は、日本だとあまり明確なルールがあるわけではない」(郷司氏)状態で、ソフトバンクがゼロレーティングを提供することに法律で歯止めをかけるのは難しい。一方で電気通信事業法では、不当な差別的取扱いが禁止されており、ソフトバンクはこれを守った格好だ。郷司氏は、「恣意(しい)的に(特定の事業者を)排除しないということが大事」だと語り、ゼロレーティングの対象に含めてほしい事業者との協議もオープンに行っていく方針だ。総務省にも事前に仕組みを説明したうえで、発表しているという。

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 ゼロレーティングの通信費をサービス事業者側から徴収するといったことはなく、競合他社とも協議は行っていく構えだ。仮に、ソフトバンクの競合にあたるドコモが、同社のサービスであるdTVを含めてほしいと申し出た場合でも、「技術要件を含めてできれば、合意できるところはあるかもしれない」(郷司氏)。ここでの技術要件とは、データを見分けるための識別子を入れることや、識別子の変更を伴うサービス変更を行う場合、事前に告知する体制のことを指す。

 ゼロレーティングはLINEモバイルやBIGLOBEモバイルなど、一部のMVNOが先立って導入を進めてきたが、市場支配力の観点ではMNOの力は強大だ。それだけに、MNOはネットワーク中立性を破りかねないサービスには慎重になってきた。ソフトバンクのゼロレーティングも、サービス事業者との協議はオープンに行っていくというが、実際どこまで恣意性を排除できるのかは未知数の部分がある。総務省が秋に開く「電気通信事業分野における事業ルール等の包括的検証」では、ネットワークの中立性も議題の一つに挙げられているが、ここでもソフトバンクの新料金プランは格好の事例になりそうだ。

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