新iPhoneのトピックは「A12 Bionic」と「eSIM」 そのメリットと業界へのインパクトは?(2/3 ページ)
「iPhone X」が発表されてから1年、ノッチのあるディスプレイや機械学習を強化したプロセッサは他社も取り入れるようになった。その1年後に発表された「iPhone XS/XS Max」は何が新しいのか。2つのトピックを中心に解説する。
デュアルSIM、eSIM対応で業界にもインパクトが大きい
通信関連で大きなトピックといえるのが、デュアルSIMに対応したことだ。デュアルSIM自体はAndroidスマートフォンで一般的な機能になりつつあるが、iPhoneでは、2つ目のSIMカードがeSIMになったところに先進性がある。発表会では、Apple SIMを搭載したiPadや、eSIMを搭載したApple Watch Series 3が挙げられ、過去の実績として紹介されたが、実際、AppleはeSIMに積極的に取り組んでいるメーカーの1社である。
残念ながら秋以降に予定されるアップデートでの対応となり、現時点ではハードウェアとしてeSIMのチップが内蔵されていることが設定画面で確認できるのみだが、海外旅行に出かけた際に現地の通信事業者と直接契約したり、ビジネスとプライベートの回線を使い分けたりすることが可能で、iPhoneの使い方を広げる機能といえそうだ。
eSIMを採用したのは、業界に対するインパクトも大きい。洋の東西を問わず、キャリアはデュアルSIMの端末を嫌がる傾向にある。2枚目のSIMカードスロットに他社のSIMカードを挿すだけで、簡単に乗り換えができてしまうからだ。これは日本特有の事情というわけではなく、海外で発表された端末でも、キャリア版のみシングルSIMということがしばしばある。
これに対し、iPhoneは原則としてそのままの仕様でキャリアに納入される。つまり、キャリアがデュアルSIMモデルを販売することになるわけだ。もちろん、日本の場合は販売時点ではSIMロックがかかっており、恐らくだが2つ目のeSIMもそのままの状態では国内で利用できない可能性が高い。ただ、SIMロック解除のハードルは大幅に下がっており、解除不可期間も短くなっている。
今のところ、日本の大手キャリアは様子見状態といったところだが、eSIMにプロビジョニング(SIMの情報を書き込むこと)する設備は各社とも保有している。Apple Watchと同様、iPhoneに搭載されたeSIMは業界団体GSMAの標準にのっとっており、Apple SIMのような独自規格ではないようだ。
もしIIJのように加入者管理機能(HSS/HLR)を持つMVNOがこれに対応できれば、大手キャリアのデータプランを使わず、通話だけで済ませてしまう人も出てくるだろう。小さなiPhoneの中で、ユーザーの獲得競争が起こるというわけだ。あくまでキャリア次第といったところもあるが、どこか1社が対応すればそれが競争の呼び水になる可能性もある(ソフトバンクはeSIM対応を表明している)。
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