KDDIはなぜUQ mobileを統合するのか ターゲットはY!mobileと楽天モバイル?:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
KDDIは、10月1日に傘下のUQコミュニケーションズが運営する「UQ mobile」を統合することを発表した。UQ mobileの統合は、サブブランドを強化するのが目的だ。今の市場環境やUQ mobileの歴史的経緯を踏まえつつ、KDDIの狙いを読み解いていきたい。
KDDIは、10月1日に傘下のUQコミュニケーションズが運営する「UQ mobile」を統合することを発表した。UQコミュニケーションズは会社を分割し、UQ mobile事業をKDDIに移管する。WiMAX 2+のインフラや対応するルーターに関する事業については、UQコミュニケーションズに残る。
UQ mobileの統合は、サブブランドを強化するのが目的だ。auとUQ mobile、2つのブランドの関係性は、ソフトバンクとY!mobileに近くなるといえる。統合後には、どのような変化があるのか。今の市場環境やUQ mobileの歴史的経緯を踏まえつつ、KDDIの狙いを読み解いていきたい。
MVNOの拡大を目指して設立されたUQ mobileがたどったサブブランド化の歴史
派手なプロモーション展開もあり、UQコミュニケーションズのMVNOとして認知度も高いUQ mobileだが、2014年にブランドを発足させたのは、KDDIの100%子会社であるKDDIバリューイネイブラーになる。UQコミュニケーションズがユーザーの拡大を狙って立ち上げた新規事業ではなく、KDDI自身がMVNOの拡大を目的に立ち上げたブランドだったというわけだ。
KDDI自身でMVNOを立ち上げた背景には、当時の劣勢があった。接続料や3Gの通信方式の違いなどもあり、MVNOのほとんどはドコモ回線を採用していた。今ではauやソフトバンクの回線を選択できるMVNOも増えているが、当時はほぼ“ドコモ一択”。mineoはau回線を借りてサービスを開始していたが、auを選ぶこと自体が他社との差別化になっていたほどだ。KDDIバリューイネイブラーは、ここに対抗するために立ち上げられた会社。自ら回線を借り、MVNEに対するお手本として展開したのがUQ mobileだった。
とはいえ、当時はプロモーション展開や販路の拡大も控えめで、ユーザー数は伸び悩んでいた。他のMVNOに対抗したい一方で、移るユーザーが増えると、ARPU(1ユーザーあたりの平均収入)を押し下げてしまう。こうしたジレンマはなかなか解消されず、事業運営そのものをUQコミュニケーションズが受け継ぐことになる。UQ mobileを継承した約半年後の2016年6月には、同社の代表取締役社長、野坂章雄氏(当時※現在は退任)は「営業協力ではそれほど大きな展開にならず、もう一段何かしないといけないとなった」と語っている。
UQコミュニケーションズに移管されてからは、ある程度、KDDIから独立したMVNOとして、徐々に拡大のスピードを上げていった。料金プランの整理、拡充や、端末ラインアップの強化、家電量販店や一部auショップを中心としたリアルな店舗での販路拡大などを地道に行った上で大規模なプロモーションをかけた結果、ユーザー数は急増。他のMVNOと比べ、ピーク時の通信が速い点も好評を博していた。ユーザー数は、2020年1月26日時点で200万を突破。2019年9月末には、楽天モバイルに次ぐシェア2位(MM総研調べ)につけている。
この動きと並行して、KDDIはUQ mobileをauのサブブランドと位置付けるようになっていった。方針を明確に示したのは、2017年のこと。当時の代表取締役社長、田中孝司氏(現・代表取締役会長)は、決算説明会で「au+MVNOで、モバイルIDベースの成長を目指す」と宣言した。UQ mobileに加え、傘下のJ:COMやビッグローブの展開しているMVNOも含めたグループ全体での拡大に軸足を移すというが、田中氏の発言のポイントだ。UQ mobileのKDDIへの統合は、この動きを強化するものと捉えることができる。高橋氏は、「今まではauとUQの経営は別だった。それぞれのディシジョンメーキングをそれぞれでやっていた。そこは大きく変わる」と語る。
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