UQ mobile、J:COM MOBILE、mineo――au系MVNOの最新動向 “サブブランド規制論”も:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
KDDI傘下のMVNOが、動きを活発化させている。「UQ mobile」は春商戦でユーザー数が急増し、「J:COM MOBILE」も地域密着型ビジネスで契約数を伸ばしている。一方でサブブランドの勢力拡大をけん制する動きも見られる。
「au+MVNOで、モバイルIDベースの成長を目指す」――KDDIの田中孝司社長が語ったこの戦略に呼応するように、UQ mobileやJ:COM MOBILEなど、KDDI傘下のMVNOが、動きを活発化させている。UQコミュニケーションズは、6月1日に夏商戦に向けた新製品や新サービスを発表。ジュピターテレコムも、6月7日に今期の戦略を語った。
MVNO、サブブランドではドコモやY!mobileに押されがちだったKDDIだが、反転攻勢をかけつつある。一方で、サブブランドに対し、MVNO、特にauのネットワークを借りる会社からは、けん制の声もあがっている。そんなau系MVNOの最新動向を掘り下げていこう。
春商戦でユーザー数が急増したUQ mobile、夏からは家族の獲得を強化
au VoLTEに対応させたSIMロックフリースマートフォンをそろえ、2016年の秋冬商戦では大幅に端末を拡充させたUQ mobile。テレビCMも大々的に展開した結果、無名に等しかった知名度は急速に上昇した。UQコミュニケーションズの野坂章雄社長によると、24%程度だったUQ mobileの認知度は、テレビCMを契機に「一気に90%ぐらいまで持ってくることができた」という。
同時に、UQスポットや家電量販店などの顧客接点を強化したことも相まって、契約者数は急増。実数は明かされなかったが、3月の新規契約者数は2016年6月と比べ、数倍の規模で伸びている。KDDIによると、同社傘下のMVNO契約者数は3月末時点で87.4万。J:COM MOBILEが14万(決算での公表値)、BIGLOBEが40万強(MM総研の調査から推計)だと考えると、UQ mobileも30万契約は突破した可能性が高い。
そのUQ mobileは、夏商戦で、家族向けの料金割引「UQ家族割」を導入した。割引内容はシンプルで、2人目以降、料金が500円引きになるというもの。Y!mobileも同様の割引を行っており、これに対抗した格好だ。家族契約で割引を提供するメリットは、新規契約の獲得と、解約率の低下の両面にある。先に家族割を導入しているY!mobileでは、「5人に1人、家族を連れてくる」(ソフトバンク Y!mobile事業推進本部 執行役員本部長 寺尾洋幸氏)という効果が出ているそうだ。
家族で契約するユーザーに向け、サービスも拡充した。「家族みまもりパック」がそれで、「みまもりサービス by Family Locator」と「filii」をセットにしたもの。家族の位置を検索できたり、子ども用のスマートフォンにフィルタリングをかけたりといったことが可能になる。サービスでは、同時に「UQあんしんサポート」と「クラウドバックアップby AOS Cloud」「UQ SNSセキュリティ by MyPermissions」がセットになった、「UQあんしんパック」の提供も開始した。
さらに、新端末も3機種導入した。シャープの「AQUOS L」、京セラの「DIGNO V」は、ライトユーザーを狙うモデル。販売が好調な「P9 lite PREMIUM」の後継機にあたる、ファーウェイの「P10 lite」もラインアップに加えた。野坂氏は「iPhoneも売れているが、シャープと京セラ、それからファーウェイはやはり人気がある」と言い、好調なメーカーを軸に端末バリエーションを増やした形になる。若年層に強いiPhone SEを導入したうえで、その家族を獲得できるAndroidのラインアップを手厚くした格好だ。
勢いに乗るUQ mobileは、年度内に90万の契約者を獲得することを目標に据える。ただし、これはMVNO市場全体を300万と見積もり、そこに30%をかけた数値。野坂氏も「MVNO市場が300万どころか、400万、450万になれば、そこに0.3をかけるともっと違ったことになる。90万で満足してはいけない。大台(100万)に達したいところはある」と本音をのぞかせる。
ショップの数や、本腰を入れ始めた時期に違いがあるため、直接的な競合となるY!mobileとはまだまだ大きな差はあるが、「絶壁だが背中は少し見えたところ」(野坂氏)だといい、ショップなどの販売面を強化していく構えだ。UQ mobileのショップである「UQスポット」は、「年度内に120店舗に持っていきたい」(同)という方針を取る。
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