UQ mobile、J:COM MOBILE、mineo――au系MVNOの最新動向 “サブブランド規制論”も:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
KDDI傘下のMVNOが、動きを活発化させている。「UQ mobile」は春商戦でユーザー数が急増し、「J:COM MOBILE」も地域密着型ビジネスで契約数を伸ばしている。一方でサブブランドの勢力拡大をけん制する動きも見られる。
地域密着型ビジネスの強みを生かし、ユーザーを増やすJ:COM MOBILE
全国展開のテレビCMを放映し、端末バリエーションも一気に広げ、幅広い層にリーチするUQ mobileに対し、ジュピターテレコムの運営するJ:COM MOBILEは、地域密着型で手厚いサポートを売りにするMVNOサービスだ。主に、J:COMユーザーを対象に絞っているため、サービス開始後も大きな話題になってはいないが、契約者数は着々と増え、3月末には14万を突破している。
MVNO事業に参入後、J:COM MOBILEは、徐々に料金プラン、サービスを拡充してきた。2016年12月には、新たに5GB、7GB、10GBのプランを新設。もともと3GBだけだったプランと合わせて、4つのデータ容量から料金を選べるようになった。また、2月から、5分間の通話が850円で定額になる「かけ放題5分」も導入している。かけ放題5分は通常の音声通話で適用され、プレフィックス番号や専用アプリが不要なのが他のMVNOとの違いだ。3月には、「安心端末保証」も導入した。
こうした「多面的なサービス強化」(ジュピターテレコム 井村公彦社長)によって、「認知の拡大と加入者獲得につながる成果を出すことができた」(同)。この勢いを維持しつつ、「他社とは一線を画したMVNOサービスを提供していく」(同)というのが、J:COM MOBILEの方針だ。
J:COMにとって、MVNOサービスは「重要商品と位置付けており、利益面よりもお客さまのリテンション(顧客関係の維持)に効果がある」(牧俊夫会長)という。モバイルサービスがないと、「お客さんがソフトバンクショップやドコモショップに行って、テレビだけを残して(ネット回線を)ドコモ光やSoftBank光に変えてしまう」(同)恐れがある。ケーブルテレビ網でインターネットサービスを提供しているJ:COMにとって、これは大きな痛手だ。ドコモやソフトバンクとは発想が逆だが、モバイルサービスを持つことで、ここに歯止めをかけられるというわけだ。
他のMNOに移る動機の1つになるiPhoneも、J:COM MOBILEとして正式に導入した。販売するのはiPhone 6sの「認定整備済製品」で、広義には中古品だが、「中国の工場でリファービッシュを行っている」(牧氏)ため、見た目は新品そのもの。「アップルストアでサポートを受けることができる」(同)ため、単なる中古とは異なり、メーカーのお墨付きを得たものだ。iPhone 6sを正式に取り扱うのは、MVNOとして「唯一」(同)の存在。「普通のMVNOとは一線を画す、MNOに近い形の強化をしてリテンションの武器にしていきたい」(同)という意気込みで導入した。
一方で、牧氏によると、売りとしていたカウントフリーは、まだあまり効果が出ていないという。当初導入したのが、LGエレクトロニクスの折りたたみ型スマートフォン「Wine Smart」で、フィーチャーフォンとして使うユーザーが多かったためだ。こうした状況に対し、J:COM MOBILEでは、同じLGエレクトロニクスの「X screen」を導入。iPhone 6sに加え、シャープの「AQOUS L2」も取り扱うようになり、いわゆるスマートフォン然とした機種を増やしている状況だ。
このように見ていくと、J:COM MOBILEは、UQ mobileとうまくユーザー層のすみ分けができていることが分かる。この2ブランドに加え、プロバイダーとしての規模が大きく、ネット販売に強いBIGLOBEの3本柱で、他のMVNOやサブブランドに対抗していくというのがKDDIの方針になる。規模の上ではまだY!mobileや上位のMVNOには及んでいないが、春商戦ではその勢いを加速させている。
ただし、auのサービスとは現状、まったく連携していない。田中氏が述べていたようなモバイルIDベースでの成長が達成できても、「au経済圏」の拡大には寄与しないため、今後は改善が必要になってくるだろう。そのときに向け、auのサービスを徐々にオープン化していく必要もあるはずだ。
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