iPhone 12シリーズは5G普及の起爆剤になるか 日本市場へのインパクトを読み解く:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
iPhone 12シリーズは、「iPhone X」の登場以降、初めてベースのデザインを大きく変えたフルモデルチェンジの端末になる。特に大きなトピックが、5Gへの対応だ。AppleのCEO、ティム・クック氏が「新しい時代のiPhoneの幕開け」と語っていたことが、その期待感の大きさを表している。
リーズナブルなiPhone 12、12 miniに対し、5Gの魅力を引き出したProシリーズ
5G対応のスマートフォンとしては、価格もかなり“頑張った”ように見える。最安となるiPhone 12 miniは64GB版が7万4800円(税別、以下同)で、ミドルレンジ上位のAndroid端末と同程度か、やや高いレベルに抑えられている。7万4800円は、1年前に「iPhone 11」が発売されたときと同価格。iPhone 12は11よりも1万1000円高い8万5800円だが、その下に「mini」という新カテゴリーを作ることで値上げ感は払しょくした。
ミドルレンジ上位のAndroidと比較したが、iPhone 12シリーズに搭載されるプロセッサは共通の「A14 Bionic」で、処理能力は競合(恐らくQualcommのSnapdragon 865を指しているとみられる)より50%高いとのこと。5nmのプロセスルールで製造された最新のプロセッサで、AIの処理を担うニューラルエンジンも16コアになるなど、大幅な強化が図られている。ディスプレイも、4機種共通で有機ELを採用する。iPhone 12 miniはサイズこそ小さいが、れっきとしたハイエンドモデルなのだ。このスペックの5G対応端末としては、コストパフォーマンスが抜群に高い。
クック氏は、イベントで「iPhone 11は最も(販売台数的に)ポピュラーなスマートフォンになった」と語っていたが、これは価格戦略が市場のニーズにはまった側面も大きい。iPhone X以降のiPhoneは高価格化していたが、Appleは2018年に液晶を搭載し、カメラもシングルカメラに抑えつつ価格を下げた「iPhone XR」を導入。2019年には、このiPhone XRの後継機を“標準モデル”に格上げしつつ、「iPhone XS」や「iPhone XS Max」の後継機を“プロモデル”に位置付け直した経緯がある。
日本でもこの戦略が当たり、iPhone 11はヒットモデルになった。4月に発売された第2世代の「iPhone SE」が販売で健闘しているため、若干印象は薄くなってしまったが、3月までは、販売ランキングでも各キャリアのモデルがベスト10の過半数を占めていた。iPhone 12シリーズではやや価格の上がったiPhone 12と、iPhone 11の価格を維持したiPhone 12 miniに分かれてしまったため、売れ行きは分散することになりそうだが、フルモデルチェンジが図られ、ディスプレイのクオリティーが大きく上がっているだけに、再びヒットする可能性は高い。
価格で攻めたiPhone 12、iPhone 12 miniだが、“5Gならでは”を味わえるのは、“プロ仕様”をうたうiPhone 12 ProやiPhone 12 Pro Maxだ。特に2機種は撮影機能が大幅に強化された。静止画は、Appleが開発した独自フォーマットの「Apple ProRAW」での撮影が可能。動画は、Dolby Visionに対応した60fpsの4K HDRでの撮影を行える。スペシャルイベントでも、プロが撮影機材として使えることが度々アピールされていた。
単に撮影するだけでなく、撮影から編集、配信までを一貫して行えるのが、iPhone 12 ProやiPhone 12 Pro Maxの魅力だ。いわば、通信機能付きの撮影機材といったところだが、いずれの新機能も、データサイズの増大に直結するため、高速通信を売りにする5Gが生きてくる。5Gのスペックをどう生かしていくのかは、端末メーカーに突き付けられた課題だが、Appleは映像制作が一気通貫で行えるプロ仕様のiPhoneで応えたといえる。
関連記事
「iPhone 12」シリーズは何が進化した? iPhone 11シリーズとスペックを比較する
iPhone 12シリーズの4機種は、前モデルのiPhone 11シリーズから何が変わったのか。シリーズ共通の違いと、11と12/12 miniの違い、11 Pro/11 Pro Maxと12 Pro/12 Pro Maxの違いを見ていきたい。サイズ感やカメラはどう変わったのか。「iPhone 12/12 mini/12 Pro/12 Pro Max」は何が違う? 4機種のスペックを比較
新型iPhoneとして「iPhone 12」シリーズが発表された。ラインアップは4機種あり、一見すると違いが分かりにくい。iPhone 12シリーズ共通の特徴、12と12 Proの違い、12 Proと12 Pro Maxの違いを確認した。5Gに対応した「iPhone 12」シリーズ、どのキャリアとバンドで使える?
「iPhone 12」シリーズがついに5Gに対応した。日本ではドコモ、au、ソフトバンクが扱うことが決まっており、これら3キャリアの5Gネットワークが利用できる。具体的な対応バンドを確認した。「5G」に「mini」も iPhone 12シリーズはココが新しい 発表内容まとめ
「iPhone 12」シリーズがついに発表された。ラインアップは「iPhone 12」「iPhone 12 mini」「iPhone 12 Pro」「iPhone 12 Pro Max」。全て5Gに対応し、iPhoneで初めて「mini」を冠するモデルもそろえた。iPhone 11よりも安い? 「iPhone 12」シリーズ価格まとめ(Apple Store編)
いよいよ発表された2020年の新型iPhone。その価格は2019年モデルの発売当初と比べてどうなのか。Appleの直販価格ベースで比較してみよう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.