「エリア拡大」「ZERO宣言」でユーザー増も、課題山積の楽天モバイル 有料化までに解消できるか:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
楽天モバイルの申し込み件数が160万を突破し、徐々にユーザー数が拡大している。自社回線エリアの拡大と各種手数料を無料化した「ZERO宣言」がじわじわと効いている印象だ。エリアについても前倒しで進めているが、不安がゼロになったわけではない。
まだまだ山積みの課題は、有料サービス開始までに解消できるか
順調なユーザー数の拡大をアピールする楽天モバイルだが、まだまだ課題は多い。もともとは2020年内に300万契約を目指すという意味を込め、1年間の無料キャンペーンを展開していたものの、今のペースだと、達成できるかどうかはかなり危うい。9月や10月と同程度の純増数では、300万契約には届かないからだ。また、料金無料に引かれてお試しで契約していたユーザーが、どの程度残るのかも見えていない。満足度を高め、定着率を上げていくのは急務といえる。
山田氏は、「1年間の無料が終わってユーザーがいなくなってしまうのが一番困るため、満足度を非常に重視している」と語る。ユーザーの満足度は「ずいぶん上がってきた」(同)といい、MMD研究所の実施した総合顧客満足度調査では、4キャリア中1位になっていたことを紹介した。ただ、同調査の内訳を見ると、料金の安さでは他社を圧倒している一方で、サービスや通信品質、サポートでは他社の後塵を拝していることも分かる。無料から2980円に料金が上がったとき、この評価がどう変化するのかも不透明だ。
エリアについても、前倒ししているが、不安がゼロになったわけではない。人口カバー率で表せるエリアと、体感でのつながりやすさは必ずしもイコールではないからだ。楽天モバイルが持つ1.7GHz帯は、1GHz以下の周波数帯と比べるとビル内などへの浸透力が弱く、エリア化されていると見なされていても、圏外になってしまったり、通信品質が著しく低下したりすることがある。地下鉄やトンネルなど、キャリアが共同で整備しているところはいいが、「個別の大きなビルは、1件1件アンテナを設置していかなければならず、各テナントの了承を得て変えていくため、もう少し時間がかかる」(同)。
実際、楽天モバイルは一部のエリアで人口カバー率が70%を超え、KDDIとのローミングを終了しているが、場所によってはこれまでつながっていた場所で、突如圏外になった、電波が弱くなってしまったといった声が挙がっている。「基本的にはローミングがなくなったことで、つながらなくなることはないが、ごくごく少数そういったユーザーもいる」(同)といい、そのようなユーザーには、ドコモ回線を使うMVNOの端末を貸与するなどの対策を取っているという。
これらに加え、端末のラインアップも拡充していく必要がありそうだ。特に、日本で最もシェアの高いiPhoneシリーズを扱えていないのは、競争上、かなり不利に働く。
SIMロックフリーで購入したiPhoneにeSIMのプロファイルをダウンロードして使うといった手もあるが、現時点では、やはりキャリアから端末を購入するユーザーの方が、圧倒的に多い。新モデル発売後に検証するまで、実際に使えるかどうかが分からないのも、アーリーアダプター以外のユーザーにはハードルが高い。現にiPhone 12シリーズでは、せっかくサービスを開始したばかりの5Gが利用できなかった。こうした不満点を、無料キャンペーンが終わり始める4月までにどこまで解消できるかが、定着率を左右しそうだ。
関連記事
楽天モバイルの申込数が160万を突破 三木谷氏は“携帯料金値下げ”の動きを歓迎
楽天モバイルの累計契約申込数が、2020年11月時点で160万を突破した。MVNOからの乗り換えはまだ進んでいないが、2021年夏に人口カバー率96%を達成することで、移行も進むと三木谷氏はみている。月額2980円で使い放題という料金プランは、他社にはマネできないだろうと自信を見せる。4キャリアの満足度調査、楽天モバイルが総合トップ MMD調べ
MMD研究所は、11月9日に「2020年11月大手4キャリアの満足度調査」の結果を発表した。総合満足度1位は「楽天モバイル(Rakuten UN-LIMIT)」で、利用する際の最重視点は「月額料金の安さ」「データ通信のつながりやすさ」「データ通信速度」となった。お得なのはどこ? 「楽天モバイル」「UQ mobile」「Y!mobile」の料金と端末を比較
月額2980円で自社エリアのデータ通信が使い放題の楽天モバイル。そこに「スマホプランR」で対抗したのがUQ mobile。Y!mobileもその動きに追随した。そこで、3社の料金プランと取り扱い端末、iPhoneの対応状況などを比較してまとめた。楽天モバイルは2021年夏に人口カバー率96%へ、5Gは「大々的に発表する」と三木谷氏
楽天の三木谷浩史会長兼社長が、8月11日の決算説明会で、MNOサービス「楽天モバイル」の現状を説明した。基地局は2021年3月までに70%、2021年夏頃までには96%の人口カバー率を達成する見込み。9月末に提供予定の5Gサービスの料金プランは「驚きもある」という。「楽天モバイル」の課題は“認知不足”? 三木谷氏がサービス開始後の1カ月を振り返る
楽天の三木谷浩史会長兼社長は、4月8日に本格サービス開始した「楽天モバイル」について「順調な門出をした」と評価した。契約獲得の進展は想定通りだという。2021年3月までに楽天エリアの人口カバー率70%を目指す。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.