ソフトバンクとドコモの決算を振り返る ahamoやLINEMOなど新料金の影響は?:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
ソフトバンクは8月4日、ドコモは8月6日に第1四半期の決算を発表した。業績自体は好調ながら、どちらも2月、3月以降の料金値下げや新料金プランの導入が響き、通信料収入は減収に見舞われている。一方で、ソフトバンクとドコモを比較すると、中身には少々違いがある。
ドコモは増収減益、料金値下げが響くも端末販売などでカバー
対するドコモも、売上高(営業収益)が1兆1596億円、営業利益が2444億と前年同期から増収減益になった。セグメント別に見ると、通信事業の売上高は9041億円と523億円の増収を記録しているものの、営業利益は1845億円で349億円の減収になった。増減要因を見ると、モバイル通信サービス収入の減が97億円と大きいことが分かる。NTTの代表取締役社長、澤田純氏によると「『ahamo』だけでなく、一昨年(2019年)にスタートした『ギガホ』や『ギガホ プレミア』をまとめた料金値下げの影響」だという。
ドコモは、ギガホ、ギガライトといった新料金プランを2019年6月に導入している。その後、2020年には5Gの導入に合わせ、「5Gギガホ」や「5Gギガライト」を開始。2021年4月にはギガホと5Gギガホの料金を一段下げた「5Gギガホ プレミア」や「ギガホ プレミア」に料金プランを改定した。中容量を主軸にしたサブブランドへの移行が進んでARPUが低下している他社とは少々異なり、メインブランドでの値下げが効いている割合が大きいというわけだ。同時に、ahamoも180万契約を突破しており、徐々にその影響が出始めている。
ただし、コロナ禍でショップを閉じていた2020年と比べ、端末の販売は伸び、476億円の増収になった。その分の販売費用が512億円かかっているため、営業利益はマイナスになっているものの、通信料収入の落ち込みをある程度カバーできていることが分かる。ahamoによって、他社からユーザーを獲得できるようになったこともポジティブな要因だ。澤田氏は「月々の数字はお話しできないが、第1四半期としては純増した。ドコモ内の移行の方が多いが、外(他社)からも来ている。他社からは全然来ないと思われるかもしれないが、そうではない」と語る。
ドコモも、「何らかの政策や戦略で、モバイル通信(収入)を上昇に変えたい」(同)という点は、他社と同じだ。そのためには、5Gのエリアを広げると同時にユーザーを増やし、トラフィックを上げていく必要がある。第1四半期でドコモの5G契約者数は535万に達したが、8292万の総契約者数の1割にも満たないため、ARPUを上昇に転じさせるにはまだ時間がかかりそうだ。澤田氏も「願望を言えば明日から変わってほしいが、政策や施策をどうするかにはかなりの時間がかかる」と語る。
ahamoを導入して純増傾向に転じたドコモだが、KDDIのUQ mobileやソフトバンクのY!mobileに該当するブランドはなく、低容量の料金プランは手薄になっている。4月以降で見ると、UQ mobileが「でんきセット割」を6月に導入した他、LINEMOも3GBの「ミニプラン」を7月に開始した。いずれも料金は990円で、水準としてはMVNOに近い。
こうしたブランドに対抗するため、ドコモは「エコノミー」と位置付けた料金をMVNOとともに展開する予定だったが、導入が遅れ、現時点でもサービスが開始されていない。澤田氏は「あまり(データ容量を)利用されないセグメントに適したサービスは、どこかの時期にそろえなければいけないと思う」と語っていたが、第2四半期以降、この影響がどう出るかは注視しておいた方がいいだろう。
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