モバイル×ナビは約20年でどんな進化を遂げたのか ナビタイムとともに振り返る(2/2 ページ)
今から19年前の2003年10月、世界初のケータイを使った歩行者ナビサービスとしてスタートしたのが、auの「EZナビウォーク」だ。ケータイを片手に目的地まで迷わずたどり着けるEZナビウォークは、モバイル業界に大きなインパクトをもたらした。しかしスマートフォンの普及により、モバイル向けナビサービスは大きな転換を迫られることになる。
スマホとともに押し寄せたオープンインターネットで苦戦
EZナビウォークとEZ助手席ナビのユーザー数は、2009年7月に300万人を突破。2010年7月には自動車向けの通信カーナビ「カーナビタイム」も提供されるなど、ナビタイムジャパンは事業を拡大させていく。一方で2008年7月には「iPhone 3G」が上陸。ガラパゴスとやゆされた日本のケータイにも、オープンインターネットの大波が押し寄せる。EZナビウォークは「auナビウォーク」として、「EZ助手席ナビ」は「au助手席ナビ」として現在もアプリが提供されているが、ケータイ×ナビのビジネスは大きな転換を迫られることになる。
事実、大手キャリアの公式サービス、公式アプリとして提供されていたコンテンツには、オープンインターネットの波に飲み込まれ、今ではその名前を聞かなくなってしまったものも多い。公開されているデータによれば、2018年9月時点のナビタイムジャパンの月間UU(ユニークユーザー)数は5100万人、有料会員数は480万人となっている。同社はどう波を乗り越えたのか。
「当初アプリストアで月額課金ができるのは、雑誌などの購読に限られるという縛りがあり、キャリアさんにスマートフォン向けの月額課金の仕組みを作ってもらうまでは確かに大変でした。一方で、われわれもこれまでのトータルナビに加えて、細かなニーズに対応できるように、自転車やオートバイ向けなどアプリケーションのバリエーションを増やしていきました」
例えば、トラックドライバー向けの「トラックカーナビ」というアプリがある。車高・車幅・大型車規制などを考慮したルート検索ができるが、これは地元警察や自治体が所有する道路の情報を収集し、ナビタイムジャパンがデータ化したものだという。走行中の位置共有も可能で、経験の浅いドライバーもベテランからルートなどの情報を得られる。同アプリは、ドライバー不足などの課題解決につながっている点が評価され、2016年にグッドデザイン賞を受賞している。
「ケータイでは限られた画面サイズ、メモリの中で制限されていたことが、スマートフォンになってできるようになった。ビジネスとしては確かに、移行の3年くらいの間は大変な時期もありましたが、可能性は大きく広がったと考えています」
差別化のポイントは「足で得たバス情報」 地道な努力が実を結ぶ
一方で、オープンなインターネットにはライバルもひしめく。Googleマップなど、OSが標準提供する無料のマップサービスでもドア to ドアの検索が可能だが、大西氏は「きめ細かさが違う」と自信を見せる。その根拠の1つになっているのが、バスだ「NAVITIME」は路線バス、コミュニティーバスの全国カバー率100%を誇る。
「電車と徒歩だけならそう難しくはないのですが、バスやフェリーが入ってくると経路検索はけっこう大変なんです。日本にある駅が1万ほどなのに対し、バス停は30万以上。われわれは全国515社の路線バス会社を1社1社回って、バス停の位置情報や時刻表データを集めています。そんなふうにデータを整備しながら、一方でアルゴリズムをより最適化、高速化する技術開発を続けてきた。この努力の差は大きいと思っています」
近年はインバウンド向けのアプリや、旅行サービスにも注力。コロナ禍で移動が制限される厳しい状況も続いたが、2022年7月にはNAVITIMEアプリを大幅にリニューアル。飛行機や新幹線、レンタカー、シェアサイクルなどの移動手段に加えて、ホテル、アクティビティーなどの予約や予約確認ができる機能、経由地の滞在時間設定ができる機能など、旅行に役立つ機能を追加している。
「独立当時に父から、10年ごとに予想もしないような波が来るから備えろと言われていたんですよ。実際に2000年から始めて、2010年にスマートフォンの時代が来ましたが、あまり準備できていなかったので3年ぐらい苦労しました。今度また2020年も波が来るだろうということで、実はいろいろと準備をしていた。もしこれが旅行とか乗り換えだけだったら厳しかったかもしれませんが、経路検索の技術をベースに物流などB2Bにも事業を広げてきたおかげで、2020年を乗り越えることができました。われわれは人と物が移動する限り、その役に立つことをやるだけ。次の2030年に、また何が起こるか分かりませんが、引き続き努力していきたいと思っています」
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