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ドコモの「パケ詰まり」は解消した? 都心でスマホ4社の速度とエリアを徹底検証【2024年3月編】(2/3 ページ)

2024年3月末に携帯電話会社4社、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンク、楽天モバイルについて、都心部の混雑スポットでのスピードテストと、山手線を中心とした移動中の接続テストを実施した結果についてご紹介しよう。

再開発の進む繁華街は、街の変化が通信に影響を及ぼすことも

 渋谷、新宿、池袋の繁華街エリアは通信環境を改善しつつも、再開発エリアでは不安定な箇所が見られた。なお、ドコモは2023年10月までにこのテスト地点のうち渋谷駅前、新宿駅前、池袋駅前に関して5G設備増設などの対策を行ったとしている。

 渋谷のスクランブル交差点は海外の観光客にも知られる日本有数の混雑地帯で、テスト時は2023年夏からさらに多くの人が滞在していた。混雑で有名なスポットだけあって各社とも力を入れて整備しているが、特にドコモの結果が良好だった。KDDIとソフトバンクは高速ではないが利用に問題はない。楽天モバイルは5Gの表示にはなるがエリア端だからかすぐに4Gに切り替わる。だが、実際の通信は上りが高速だからか問題はなかった。渋谷駅とその周辺は今も大規模な再開発が続いており、今後の状況は良くも悪くも変わる可能性がある。


渋谷スクランブル交差点は人の混雑が観光名所にもなっており、カメラを構える人も多い

 新宿駅東口アルタ前は2023年夏から状況が変わっている。立体に見える猫の動画で知られる「クロス新宿ビジョン」には、目当ての広告動画の撮影待ちをする人が目に付くようになった。一方で、KDDI(au)、ソフトバンク、楽天モバイルのアンテナ表示の本数が1本少なくなり、スピードテストの結果も悪化している。ドコモは2023年7月にこの地点をパケ詰まりの対策箇所としたこともあってか若干良好だ。

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左側の「クロス新宿ビジョン」に注目が集まる一方、新宿アルタは2025年2月28日に営業を終了する。その右側のビルは現在建て替え中だ。今後数年でこの風景も大きく変わるだろう

 新宿駅周辺のエリアは、駅や周辺のビルなど1970~80年代の施設が建て替え時期に入っている。特に駅周辺施設は、西口や南口の再開発を皮切りに「新宿グランドターミナル」として2040年代にかけて大きく変貌する見込みだ。再開発中は周辺の建物の高さや人の導線がめまぐるしく変わり、通信事業者も細かいエリア整備や基地局を設置する場所の確保が必要になる。今後は、今回のテストのように街や駅ホームで、一時的にスマホの通信が不便になるスポットが出てくるだろう。各社の対応に注目だ。


新宿駅周辺では各社が開発計画を発表している。画像は東日本旅客鉄道「新宿駅西南口地区の開発計画について」から。大規模な開発計画やビルの建て替えが始まると、通信事業者は周辺の5Gや4Gのエリア整備を見直す必要がある

 新宿の歌舞伎町は大規模開発が一段落し、スピードテストの結果も特に問題はない。ドコモも5Gエリアが広がり、楽天モバイルもテスト箇所の通信に問題はなく少し場所を変えれば5Gにつながる。

 池袋駅東口は各社ともおおむね良好だ。テスト時間が夏のテストと若干異なるので18時台はもう少し混雑する可能性もあるが、5Gスマホならそこまで問題にはならないだろう。ソフトバンクは2月に高速な5G通信を利用できたのだが、3月末のテスト時にはつながらなかった。今後また変化する可能性はある。

山手線沿線を中心に、移動中の動画視聴をテスト

 次に、東京都内の山手線を中心とした電車で移動中に、4社の回線で快適にYouTubeのライブ動画を視聴できるのかを確認した。エリアを点(スポット)と線(鉄道路線)と表現した場合、線のエリアのテストだ。


電車内でYouTubeのライブ映像を再生し、どれだけ途切れずに再生できるかをテストした。また、5Gエリアの広さを確認している

 鉄道路線に対する5G整備はKDDI(au)が5G開始後すぐに「鉄道路線5G化」として力を入れている。ドコモも2023年10月の説明会にて対策を発表し、2月には改善したとしている。これもあり、今回はより混雑する17~19時台の電車でテストを行った。


SNSでは電車での移動中にも「パケ詰まり」が起きやすいと話題になっていた。ドコモは2024年2月に対策を実施したと説明している

 この表でまず見るべきなのは、接続は5Gでも4Gでもいいので移動中に動画を安定して再生できているのかという点だ。その観点で見るとKDDIが良好だが、ソフトバンク、ドコモ、楽天モバイルも決して悪くはない。各社とも山手線を中心とした沿線の対策に力を入れているといっていいだろう。

 このテストでは、5Gエリア整備状況の参考として、駅間を移動するさいの接続表示がおよそ3分の2以上5Gだった箇所を5Gと表記している。ドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクはカバーエリアが狭いが高速5GのSub-6帯に加えて、従来の4Gエリアの周波数帯転用した低速だがカバーエリアの広い転用5Gを利用できる分、この表を5Gで埋めやすい。ドコモの5Gのエリアが急激に増えているのも、高速な5Gの整備に加えて転用5Gのエリアを広げたことも一部寄与している。

 一方で、新規参入の楽天モバイルは高速だが、カバーエリアの狭いSub-6帯の5Gのみでエリアを構築せざるを得ない。このため、この項目で他社と比較するとかなり不利といえる。とはいえ、それでも一部のエリア状況を5Gで埋められており驚きだ。今後、後述する3.7GHz帯の制限緩和が進めば、5Gにつながるエリアがより広がるかもしれない。

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