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11型「iPad Pro(M4)」を使って実感した快適さと課題 高い処理能力を生かした“提案”が欲しい石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

第3世代でプロセッサが初めてMシリーズになったiPad Proを利用していた筆者は、iPad Airと悩みつつも11型iPad Pro(M4)を購入した。購入から約2週間たっているが、動作の軽快さはもちろん、ディスプレイの美しさや軽さには満足している。一方で、13型のiPad Pro(M4)と比べると、そのインパクトはやや薄れてしまうようにも見えた。

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処理能力は大きく向上したが生かすアプリが少ない、WWDCにも期待が高まる

 個人的に便利だと感じたのは、設定変更でスクリーンショットを取れるようになることだ。コロナ禍のころと比べると減ってはいるものの、ZoomやYouTubeを使ったオンライン発表会はいまだに残っている。記者会見が中継されることも一般化した。こうしたイベントに参加する際には、スクリーンショットを取っていたが、画面が切り替わる前にサッと記録するのはなかなかハードルが高かった。


ショートカットアプリで作成したショートカットを割り当てることが可能。これを利用し、Apple Pencil Proを握るだけでスクリーンショットを取得できるようにした

 筆者はMagic Keyboardでショートカットを使っていたが、キーボードは持ち歩いていないこともある。ショートカットは3つのキーを同時に押す必要があるため、メモを取りながら急いで操作すると失敗してしまうことも。電源キーと音量の上を同時に押すのは、さらに面倒。重要な場面でスクリーンショットを取れないこともありうる。このような時に、Apple Pencil Proのスクイーズは便利。握るだけなの、キーボードショートカットより失敗も少ない。

 スクリーンショットは、スクイーズの動作にショートカットを割り当てることで設定できる。ツールパレットの展開とは排他で、どちらか一方しか選択できないものの、オンライン発表会のときだけ設定を切り替えればいいだろう。準備に設定変更のひと手間がかかってしまうものの、それだけでオンライン発表会により参加しやすくなる。

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ツールパレットの展開とショートカットはどちらか一方しか選べない。利用するアプリによって、切り替えながら使うといいだろう

 薄くて軽く、アクセサリーも使い勝手がいい11型iPad Proだが、13型iPad Proと同様、パフォーマンスも高い。M4チップを搭載しており、ベンチマークでは軒並み高スコアをたたき出している。とはいえ、筆者の用途はテキスト作成やPhotoshop、Lightroomを使ったちょっとした画像処理、動画視聴などが中心。正直なところ、これまで使っていた第3世代の11型iPad Proでも十分快適に動作していた。むしろ、パフォーマンスを持て余している感もある。


左がこれまで筆者が使用していた第3世代の11型iPad Pro、右が11型iPad Pro(M4)。ベンチマークスコアは、確かに大きく向上しているが……

PhotoshopのiPad版。動作はスムーズだが、写真編集程度であれば、M1搭載の11型iPad Pro(第3世代)でも十分快適だった

 ゲームでもすれば話は別かもしれないが、iPad Proはどちらかといえば仕事で活用することの方が多い。同時に発売されたiPad Air(M2)に買い替える手もあったが、同モデルはProMotionに対応しておらず、スクロールの滑らかさに欠けるところがある。120Hz駆動を見慣れてしまうと、やはり60Hzのディスプレイには戻れない。先に挙げた新しいiPad Pro用のMagic Keyboardも利用できない。


ProMotion以外では、Face IDに対応しているのもiPad Proだけ。キーボード利用時に自然にロックが解除されるため、Touch IDのiPad Airよりスムーズに操作できる

 性能の高さは数値だけで競うものではなく、アプリという応用例があってこそ生きてくる。このような“提案”が少なかったのは、残念なところだ。先に述べたように、特に11型のiPad Proは、13型のそれと比べ、薄さや軽さといったハードウェアの進化が分かりづらい。アクセサリーを除けば、処理能力がこれまでのモデルとの最大の差と言っても過言ではない。


現在のiPadOSは17.5.1。iPadOS 18にメジャーアップデートされたわけではないため、ソフトウェア的な進化は少ない

 M4の38TOPSという高いAI処理能力を生かし、オンデバイスでボイスメモの録音を文字起こしできたり、FaceTimeで打ち合わせした内容を要約してくれたり、写真アプリで不要な写り込みを消去できたりといったことが可能であれば、もっと評価は高くなっていただろう。その意味では、今後、iPadOSにどうAIを取り込んでいくかで真価が決まることになる。これらを踏まえると、6月10日(現地時間)に開催されるWWDCは、iPad Proにとっても重要なイベントになる可能性が高い。最終的な評価を下すのは、その発表を見てからでも遅くはないだろう。

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