「iPhone 16e」実機レビュー カメラや処理性能、独自モデム「Apple C1」による通信品質はどうか(2/2 ページ)
iPhone 16eは、iPhone SE(第3世代)の後継モデルと呼べる存在だが、iPhone 16のファミリーとして登場。これまでiPhone SEシリーズの特徴だったホームボタンを廃している一方で、処理能力の高さは受け継がれている。実際の使い勝手を確かめるべく、発売に先立って試用できた実機をレビューしていきたい。
処理能力はiPhone 16譲りでメモリもSEから倍増、ただしこれは廉価なのか
iPhone 16と同じ「A18」を搭載していることもあり、処理能力は高い。ただし、CPUはiPhone 16と同じ6コアなのに対し、GPUはコアが1つ少ない4コアになっている違いがある。iPhone 16 Proに搭載されていた「A18 Pro」はGPUも6コアという違いがあった。同じA18という型番だが、グラフィックスの処理に関してはiPhone 16とiPhone 16 Pro程度の違いはあるというわけだ。
実際、ベンチマークでもその違いが浮き彫りになった。「Geekbench 6」で計測したiPhone 16eのシングルコアスコアは3343、マルチコアスコアは8226で、この数値はiPhone 16 Proと大きくは違わない。対するGPUのMetalスコアは、iPhone 16 Proが3万3337だったのに対し、iPhone 16eは2万4226と、9000点程度の差があった。筆者の過去記事を参照すると、iPhone 16は2万6583だったので、それより低い数値だ。とはいえ、その差は小さく、GPU性能をギリギリまで使うゲームなどをしなければ、体感はできないだろう。
ちなみに、Geekbench上ではメモリ容量が8GBと表記されていた。この容量は、iPhone 16などと同じ。iPhone SE(第3世代)からはもちろん、「iPhone 15」からも底上げされていることが分かる。iPhone 16eは、Apple Intelligenceに対応したモデルだが、これを駆動させる上で必要な要件を8GBに設定していることが分かる。この点では、廉価モデルとして大きなスペックアップを果たしたといえそうだ。
iPhone 16eは、初の独自開発となる「Apple C1」モデムを搭載していることでも話題になった。試用した際には、ドコモのeSIMおよびOCN モバイル ONEのSIMカードを利用したが、どちらも基本的な動作には問題がなかった。別のドコモ回線から電話してみたが、きっちりVoLTE(HD+)でつながり、音声もクリアだった。通話中にデータ通信が途切れるといったこともない。使い勝手の面では、Qualcomm製のモデムを搭載していた従来モデルと変わりはない。
5Gにもきちんと接続できた。比較用に、ドコモの「Galaxy Z Fold6」と速度を比べてみたが、渋谷の街中で200Mbps以上を記録していた。ただし、iPhone 16eは大手3キャリアの1.5GHz帯に非対応。ドコモ回線の場合、LTEのBand 21を利用できない。こうした事情もあり、場所によっては速度が半減してしまうケースもあった。
例えば筆者の事務所内(東京都渋谷区)やその周辺の飲食店では、ドコモのBand 1(2.1GHz帯)、Band 3(1.7GHz帯)、Band 21(1.5GHz帯)を代わる代わるつかむことが多い。電界強度を見ると、周波数が高い分、Band 1だとやや接続状況が悪くなる。この際に、GalaxyはBand 3もしくはBand 21をつかみ、かつキャリアアグリゲーションすることで速度が60Mbps程度まで上がっていたが、iPhone 16eはBand 1をつかんだまま離さず、23Mbps程度にとどまってしまっていた。
これでも十分通信はできるため、大きな問題はなかったものの、よりトラフィックが逼迫(ひっぱく)しているようなエリアでは、もう少し差が出てしまう恐れがある。少なくとも、対応周波数が多い機種よりは不利になることは間違いない。東名阪は上記のようにBand 3があるため速度は出しやすいが、それ以外の都市部ではBand 21に頼らざるを得ないケースも存在する。Band 21はiPhone SE(第3世代)でも対応していた周波数帯。ここが省かれてしまったのはやはり残念だ。
冒頭から廉価版と書いてきたものの、128GB版が9万9800円(税込み、以下同)の端末を廉価と呼んでいいのかどうかも、正直悩ましかった部分だ。iPhone SE(第3世代)は堂々と廉価版と書けたが、iPhone 16eの約10万円はもはやハイエンドの価格帯だ。iPhone 16との価格差は約2万5000円。この価格差なら、個人的にはより多機能かつ、デザインも洗練されたiPhone 16を選ぶ。
ただ、UQ mobileやY!mobileのようなサブブランドを使っていると、キャリアで機種変する際にiPhone 16という選択肢がない。キャリア版はMNPを組み合わせることで、実質価格も限りなく無料に近づけているため、取りあえず最新のiPhoneを(安く)使っていたいと考える人には、安心してお勧めできる端末に仕上がっている。子どもや親に持たせるにも、いい端末だ。お勧めできる人は選ぶかもしれないが、iPhoneの裾野を広げる効果はありそうだと感じた。
(製品協力:アップルジャパン)
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