シャープ「AQUOS R10」はなぜ“生々しい”のか 開発陣に聞く「撮る・見る・聞く」の進化(1/4 ページ)
シャープが2025年夏、日本市場で売り出す「AQUOS R10」と「AQUOS wish5」の2機種。AQUOS R10は2024年のフルモデルチェンジを経て開発されたミッドハイでシリーズの標準モデル。R10のコンセプトから、カメラやディスプレイ、それにAI機能に至るまで、シャープで商品企画やソフトウェア開発、機構設計に関わった方々にインタビューした。
シャープは2025年夏、「AQUOS R10」と「AQUOS wish5」の2機種を投入している。
AQUOS R10は、2024年のフルモデルチェンジを果たしたハイエンドモデル「AQUOS R9」の後継機で、「生で見るより生々しい」というコンセプトのもと、ディスプレイ、カメラ、スピーカーを強化している。価格は10万円前後。
今回はAQUOS R10について、シャープで商品企画やソフトウェア開発、機構設計に関わった以下の方々にインタビューした。なお、エントリーモデルのAQUOS wish5についても、別途インタビュー記事をお届けする。
- 通信事業本部 パーソナル通信事業部 商品企画部 係長 原泰祐氏
- 通信事業本部 パーソナル通信事業部 商品企画部 主任 鎌田隆之氏
- 通信事業本部 パーソナル通信事業部 システム開発部 技師 関文隆氏
- 通信事業本部 パーソナル通信事業部 第一ソフト開発部 技師 文元英治氏
- 通信事業本部 パーソナル通信事業部 回路開発部 技師 三島啓太氏
AQUOS R10の開発意図 エンタメ重視で進化を心掛けた
―― 好調だったというAQUOS R9を受けて、AQUOS R10はどのような意図で開発したのでしょうか。
鎌田氏 2024年のAQUOS R9とAQUOS wish4はデザインを象徴的に刷新しました。ブランドとしてはAQUOSの提供価値として「最高最新の映像体験をあらゆるシーンでお楽しみいただくスマートフォン」と定義して、多くの方々にお届けしようと考えました。
その結果、広告も含めて賞をいただき手応えを感じていました。AQUOS R10の商品企画を検討する際に、なぜそこまでデザインも含めて評価いただけたのかを調べました。どのようなワードをネットで検索されるのかに着目したところ、映画や音楽、漫画を含めてエンタメ情報を収集されていることが分かりました。そのような背景を踏まえて、エンタメ体験を重視した進化を心掛けてきました。
また、もう1つの観点として、R9とR10の間には、シャープが2024年10月29日に発表したAQUOS R9 proがあります。そのモデルで培ったカメラの技術や新機能をどのようにRシリーズにも展開していくか、というところも意識しています。
―― プロセッサをAQUOS R9と同じSnapdragon 7+ Gen 3を搭載した理由を教えてください。
鎌田氏 プロセッサの選定は皆さんが興味を持たれているところかと思います。選定は毎回悩むところではあります。最も大きな理由の1つは、Snapdragon 7+ Gen 3という7の中でも高い性能持ったプロセッサの後継が具体的に出なかったことです。
加えて、シャープが2024年11月7日に発売した「AQUOS sense9」のSnapdragon 7s Gen 2と比べてもCPUで約2倍、GPUで約4倍と高い性能を持っていることも踏まえて、もう1度やりたいことはできそうだと思い、R10でも引き続きSnapdragon 7+ Gen 3を採用しました。
―― ちなみに、MediaTekは検討しなかったのでしょうか。
鎌田氏 先ほどもプロセッサの選定は難しいと話しましたが、正直開発のだいぶ前から検討の俎上(そじょう)には乗っています。つまり、われわれとしてもMediaTekのプロセッサについては、常に注目して検討しています。しかしながら、今回のAQUOS R10でMediaTekのプロセッサを選ばなかったのは、AQUOS R9でご好評いただいた「エンタメを楽しむ」というテーマをいかに進化させるか、そしてAQUOS R9 proもQualcommのプロセッサで開発していたという点が大きく関係しています。
ただ、MediaTekのプロセッサを検討していないわけではありません。引き続き検討は行っています。
基本的なデザインはAQUOS R9を踏襲しながらブラッシュアップ
―― AQUOS R9からサイズやデザインがほぼ変わっていないが、あえて変えなかった理由はありますか。
鎌田氏 AQUOS R9のデザインは、おかげさまで多くの方からご好評をいただきました。特に、アニメのキャラクターに似ているというようなバズり方をしたことには驚きましたし、市場での反響も非常に大きかったです。
デザイン面では、グッドデザイン賞のベスト100に選出され、ドイツのデザイン賞であるiFデザインアワードも受賞しました。これは、スマートフォンの枠を超え、デザイン全体として高い評価をいただけた証だと考えています。
AQUOS R10では、AQUOS R9で確立したデザインを継承しつつ、さらにブラッシュアップすることで、ブランドの刷新を図るとともに定着を狙って、お客さまにご満足いただける製品をお届けできると判断しました。
実は、R10のデザインにはいくつか手を加えています。例えば、新たに搭載したスペクトルセンサー部分にはダイヤカットの処理を施し、本体との一体感を高めています。また、本体カラーも今回は3色展開とし、お客さまの選択肢を増やしています。
―― カラーバリエーションを2色から3色に増やした理由を教えてください。
鎌田氏 AQUOS R10で増やしたカラーバリエーションには、より多くのお客さまにお届けしたいという思いが込められています。AQUOS R9のグリーンは非常に好評をいただきましたが、お客さまから「黒が欲しい」という声が多かったのです。スマートフォン全体でブラックの需要が高いこともあり、今回はホワイトとブラックをしっかりとご用意しました。
R9のグリーンも深みのある独特な色で「癖になる」というお声を多くいただきましたが、今回、特徴的なカラーとしてトレンチベージュを採用しました。この色は、スマートフォンではあまり見られないような色味だと思います。
スペクトルセンサー部のデザインは、完全な円でも四角でもない曲線にしており、大きさを変えると見え方が大きく変わるというこだわりがあります。miyake designの協力を得て、その大きさやバランス感、配置については細かく監修していただきました。少し大きさを変えるだけでもデザインが成り立たなくなるほど、緻密に設計されています。
関連記事
シャープの「AQUOS R10」「AQUOS wish5」で“進化の方向性”が違う理由 iPhoneからのユーザー獲得にも意欲
シャープは、ミッドハイでシリーズの標準モデルとなる「AQUOS R10」と、エントリーモデルの「AQUOS wish5」の2機種を発表した。AQUOS wish5は特に強化しており、若年層の獲得や海外でのシェア拡大を見越している。AQUOS R10はマイナーアップデートの印象が強いが、10万円前後という価格の維持に努めた。「AQUOS R10」はAIで半歩先の体験を、「AQUOS wish5」は幅広い世代に訴求 “深化”したシャープのスマホ戦略
シャープは5月29日に「AQUOS R10」「AQUOS wish5」を発表。自社スマートフォンのフラグシップモデルとエントリーモデルだ。それぞれのコンセプトや特にアピールされた機能は何か。約10万円~の新フラグシップ「AQUOS R10」発表 ピーク輝度3000ニトの明るいディスプレイ搭載、スピーカーも強化
シャープが新型スマートフォン「AQUOS R10」を発表。AQUOS R9から約1.5倍明るい、ピーク輝度3000ニトのPro IGZO OLEDを搭載している。大型のスピーカーBOXを本体上下に搭載しており、上部のスピーカーBOXをフルメタルにすることで、音圧が増した。「AQUOS R10」のSIMフリーモデル発表 AI活用型の新ECサービスを搭載 約10万円から
シャープはフラグシップスマートフォン「AQUOS R10」のSIMフリーモデルをオープンマーケットに売り出す。市場での価格は税込みで、256GBモデルが約10万円、512GBモデルが10万円台後半を想定している。日本国内MNOでは、NTTドコモとソフトバンクが取り扱う。グローバル展開も予定されており、台湾、シンガポール、インドネシアでは7月上旬以降に順次発売される見込みだ。ドコモとソフトバンクが「AQUOS R10」を7月10日発売 一括12万円台、2年で7万~8万円台に
NTTドコモとソフトバンクが、7月10日にシャープのスマートフォン「AQUOS R10」を発売する。購入プログラムを適用すると、2年間で7万円~8万円台で利用できる。1万円相当のポイントを還元するキャンペーンをシャープが実施している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.