「Pixel 10/10 Pro」はスマホの使い方をどう変えるのか “スペックシートに表れない”進化が差別化に(3/3 ページ)
Pixel 10シリーズは、外観やスペックなどが前モデルの「Pixel 9」から大きく変わっていないようにも見える。全面に打ち出されているのはAIのGeminiだ。こうした端末のコンセプトから、Googleの戦略や狙いを読み解いていきたい。独自チップ「Tensor G5」が可能にする機能が差別化要素になる。
垂直統合でGoogleのAI戦略を色濃く反映、プロモデルは生成AIをカメラに取り込む
また、プロモデルのみの機能になるが、超解像ズームもAIによって進化している。それが、「超解像ズームPro」だ。Pixel 10 Pro/10 Pro XLの望遠カメラは、前モデルまでと同じ光学5倍の画角。画素数も4800万画素となっており、望遠のための仕様は変わっていない。ところが、超解像ズームProを使うと、これまで最大30倍までだったズームが100倍まで上がる。
Googleによると、超解像ズームProには拡散モデルを活用しているという。拡散モデルとは、イラストや写真を生成するためのAIモデル。ノイズの付加される過程を学習させていき、それを元に画像を作り出す技術だ。連写合成などを活用し、AIによって劣化を抑えていた従来の仕組みとは大きく異なる。大本の写真を元に、生成AIで画像を作り出しているというわけだ。
拡散モデルを端末上で動作させるには、かなりのマシンパワーが必要だが、Pixel 10のプロモデルではオンラインに接続していないときでも、その処理を行える。こうした機能が実現したのは、Tensor G5の処理能力と、16GBというメモリ容量があってこそだ。ここまで大胆に生成AIを使った写真は果たして写真と呼べるのか……という疑問はつきまとうが、他社のズーム機能とは一線を画していることは確かだ。
捉え方によってはフェイク画像と紙一重のように思えるかもしれないが、こうした懸念を払拭(ふっしょく)するため、カメラアプリ側がスマホで初めてコンテンツの来歴記録を残す「C2PA」にも対応している。AIによる加工だからやらないのではなく、AIによって書き足した写真であることを画像内にしっかり埋め込み、第三者が判別しやすくした。
これまでのPixelにも、AIを売りにした機能は搭載されてきたが、Googleのサービスと混然一体となっている部分があった。Gemini Liveへの対応や、Googleフォト上の「消しゴムマジック」「編集マジック」は、Pixel固有の機能ではなく、あくまでGoogle自身のスマホという立ち位置を生かした先行搭載という側面が強かった。実際、現時点ではここに挙げた機能の全てが、他社のAndroidスマホだけでなく、iPhoneにも対応している。
対するPixel 10シリーズのAIは、Tensor G5の上でGemini Nanoを使って構築されているものが多く、Pixel固有の機能としてハードウェアにしっかりひも付いている。プロセッサから端末、AIサービスまで、全てを垂直統合的にGoogleが作り上げていているといえる。その姿は2024年のPixel 9シリーズと大きく変わらない一方で、中身は別物になっている。その意味では、Pixel 10はよりGoogleの戦略を色濃く反映した端末と言うことができそうだ。
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