“ツカミ”がうまい、さすがURoadシリーズ──薄型9時間のWiMAXルータ「URoad-SS10」の実力チェック:“WiMAX Speed Wi-Fi”レビュー(2/2 ページ)
WiMAXヘビーユーザーにファンが多い「URoad」シリーズ。小さく、軽く、薄くなった新モデル「URoad-SS10」はその特性を受け継いでいるか。実通信速度やハンドオーバー性能を旧モデル+ライバル機とともに実力を検証する。
スマートフォン用ブラウザに対応したWeb UIも準備
ポータブルルータをバッグやポーチ類に入れたまま運用する人は多い。その場合、バッテリー残量の確認のためだけにバッグから取り出すのは面倒だ。
そこで便利なのがWeb設定ツールである。スマートフォンより本機のWeb設定ツール(http://192.168.100.254/ など)にアクセスすると、それに適したUIで表示される。手元のスマートフォンで、WiMAXの電波状況やバッテリー残量を1%単位でチェックできる。
このほか、休止状態への移行や電源オフの操作も可能で、これらが1つの画面内に収まっている。AtermWM3600RはAndroid/iOSともに専用アプリで同様のことはできるが、ブラウザさえあればできる本機のような仕組みで機能は十分ではなかろうか。ログイン操作が必要なのが難点(AtermWM3600RのアプリはIDなどを登録できる)で、WiMAX電波状態とバッテリー残量のチェックだけはログインなしでできてもよいのにとは思う。
URoadシリーズならではの「弱電界での粘り」と「良好なハンドオーバー性能」
続いてWiMAXルータとしての通信能力をチェックしよう。今回は旧モデルURoad-8000と、ライバル機 AtermWM3600Rを同時に用い、WiMAX電波状態が良好な強電界エリアと、あと1メートルも移動すると接続できなくなる“ギリギリエリア”の2カ所で通信速度を計測する。なお、利用者増によるトラフィックに影響されにくい早朝に、速度計測サイトはピーク速度が反映されやすい「speed.rbbtoday.com」を利用した。
下り速度は、平均値で比較するとAtermWM3600Rの値が良好。次いで、本機、URoad-8000の順となった。本機も平均16.5Mbpsと、モバイルブロードバンドとしては十分すぎる値である。ちなみにURoadシリーズはもともとピーク速度を追求する仕様ではない傾向だが、URoad-8000よりは良好な値が出るようだ。
一方、上り速度は本機とURoad-8000が並び、AtermWM3600Rが若干劣る結果となった。こちらも歴代URoadシリーズの傾向。本機はURoad-8000よりさらに小型となったが、上り速度の性能がほぼ同じだったのは立派といえる。
WiMAX電波がギリギリ入る弱電界エリアでの傾向もほとんど同じだ。本機は下り速度こそAtermWM3600Rに劣るが、上り速度がぶっちぎりで良好だった。こちらは誤差の範囲か、あるいはURoad-8000比でWiMAXハイパワー仕様であることも有効に働いたと思いたい。また上り速度にこれだけ差があったためか、同じスマホでもWebサイト表示や、Twitterアプリなど一般的な利用における体感値にも意外と差があった。もちろん動画のストリーミングなどでは下り速度が重要だが、WebアクセスにせよTwitterにせよ、ひんぱんにデータの送受信が発生するものは上り速度が極端に遅いと全体的な使い勝手に影響を及ぼすこともある。
次はハンドオーバー性能をチェックする。歴代のURoadシリーズ(シンセイ製端末)はハンドオーバー性能が良好で、筆者もUD01SS(USBスティック型)、URoad-5000、URoad-8000と3モデルをこれまで常用端末の1つとして、円柱ボディのURoad-9000も短期間使ってきたが、ハンドオーバー性能で不満を感じることはなかった。本機もこの点は体感としては同様である。まず基本的に、東京23区内の地上なら鉄道での高速移動中もハンドオーバーがスムーズに行われ、セッションが完全に途切れてしまう事態はまれである。
計測は、JR東海道線 品川駅〜川崎間の列車高速移動中に、ノートPCでFTPサーバに接続して3つのファイルを同時に受信しながら、平日始発直後の時間帯に品川から川崎方面へ移動。この間のデータの受信量をWindows 7のパフォーマンスモニターを利用して結果を記録した。加えて、測定は早朝の時間帯に行ったが、それぞれまったく同時・同時刻の検証ではなく、品川駅〜川崎駅間はノンストップ区間とはいえ同じ速度で走行するわけではないので、まったくのイコール条件でないことは了承願いたい。
結果は、4秒以上の通信途切れは1回だけ、あとは1〜2秒程度が何回かという感じだ。もちろんセッションは途絶えず、FTPでのデータ受信は中断されなかった。一方、URoad-8000も最大で2秒、あとは1〜2秒の途切れとなり、その傾向はほとんど変わらない。もちろんまったく同じ条件で測定したわけではないが、本機はURoad-8000と同様に優れたハンドオーバー性能を持っていると言って差し支えないだろう。
日常生活でのバッテリー動作時間参考値 | 1日目 | 2日目 | 3日目 |
---|---|---|---|
URoad-SS10 | 9時間20分 | 8時間45分 | 9時間10分 |
(参考)AtermWM3600R | 10時間40分 | 10時間25分 | ─ |
(参考)Mobile Cube(無線LAN電波出力設定:強) | 12時間10分 | 11時間50分 | ─ |
※省電力機能はオフ、それ以外は初期設定のまま。電源は入れっぱなしで運用 |
バッテリーの実動作時間は、スマートフォンを3台無線LAN接続したまま1日外出し、それぞれのスマートフォンで待ち時間・移動時間中に随時ガツガツ利用、PCでも数時間自宅利用時と同様に利用して計測。結果は最長で9時間20分だった。
9時間を切った日は、移動が少なくPCで3〜4時間ほどカッツリ利用した例。PCでじっくり利用すると相応に動作時間は短くなり、約10時間動作となるライバル機と比べると見劣る印象を受けるかもしれないが、それでも大半の人の1日分の行動時間をカバーすることは可能だ。ともあれ、長時間動作の部分は他社LTE対応ルータと比べると、2012年3月現在のWiMAXルータはかなりアドバンテージがある。
ちなみに、バッテリーが完全に“カラになった状態でも”5ボルト/500mA出力タイプのUSBポータブルバッテリーで動作できた。動作時間が心配であれば、スマートフォンの充電用も兼ねたUSBバッテリーを1つ携帯しておくだけで大丈夫だ。
最後に、あえて本機の不満点を挙げるなら「無線LAN出力が低め」であること、USB/LANともに有線接続できる手段がないこと、そして太陽光下で「インジケータを視認しにくい」ことか。無線LANの出力はモバイル利用だけであれば気にする必要はないが、それが比較的高めであるAtermWM3600Rと比べると無線LAN電波の届く範囲はやや狭い。同じく低めな傾向のURoad-8000と同程度かそれより少し狭い感じだ。こちらは基本的な利用シーンを想定し、省電力化のために許容範囲まで割り切った部分だろう。
有線接続については、例えば、PCと有線接続してUSBモデムとして利用する使い方がある。こちらは、無線LANの電波が混雑している場所で特に有効なのだが、本機のUSB端子は充電用途のみしか利用できない。
インジケータの視認性は……些細なことではあるのだが、URoad-8000と同様に常時点灯ながら太陽光の差す日中の屋外ではほとんど見えず、手で影を作らないと視認できなかったりする。本機は手元のスマートフォンで動作状態をチェックできるので実利用であまり困らないといえばそうだが、それならばより輝度を上げて視認性を高めつつ、AtermWM3600Rなどのように常時点灯/一定時間後に消灯を選択できるよう設定項目を設けてくれてもよいかなと思う。
最後に、前面にある電源ボタンの位置のせいか、あるいはボタンのエッジ部分がわずかに表面より出っ張っているためか、バッグの中で何度か勝手に電源がオン/オフされてしまうことがあった。バッグにモノを詰め込みすぎなせい(笑)でその可能性を高めているのも分かっているが、運用時には少し気をつけてほしい。
URoadシリーズの正常進化形 「つかみのうまさ」はそのままに、さらに小型軽量に
旧モデルのURoad-8000は、デザインや機能的に派手さはないがヘビーユーザーから実力派として評価されたモデルだ。何よりハンドオーバー性能が良好で、エリア内ならクルマや電車での高速移動中も不満なく使えるのが気に入っていた人は多いだろう。対する不満点は、本体サイズ──特に厚さ。そして高速起動モードを備えなかったことだ。
対して新モデルであるURoad-SS10は、URoad-8000のいいところをそのままに、いくつかの不満点を一気に解消したと思えるできだ。サイズこそ2012年3月現在のWiMAXルータで最軽量となる「Mobile Cube」(レビュー:“ちっこい”、そして“つかみ”もうまい──10時間動作のWiMAXルータ「Mobile Cube」実力検証)比でわずかに見劣るが、フラットフェイスの薄型ボディは、ポケットやポーチ類にも収まりがよい。バッテリーは内蔵仕様となったが、そもそも連続9時間レベルで持つうえで小型・薄型化したとなれば喜ばしいことだろう。
最後に、ハンドオーバー性能はURoad-8000とほぼ同等で、間違いなく優秀だ。WiMAXルータは、ピーク速度に優れるタイプとハンドオーバー性能に優れるタイプが存在するが、本機はどちらかというと後者。移動中にスマートフォンの通信手段として活用する機会が多いユーザーに勧められる、実力派のWiMAXルータといえる。
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