KDDIが月額2700円の「カケホとデジラ」を投入――「3社横並び」よりも罪が深い「プラン一本化」:石川温のスマホ業界新聞
KDDIが音声定額プランを発表し、キャリア3社による“3つどもえ”の状態になった。1つの定額プランしか選べないことはユーザーにとってどんな意味を持つのだろうか。
6月25日、KDDIは新料金プラン「カケホとデジラ」を発表した。音声定額プランが月額2700円ということで、結局、NTTドコモ、ソフトバンクモバイルの3社で「横並び」となってしまった。
一部には「ケータイ業界には競争はないのか」という指摘があり、それはもっともな事だと思う。田中孝司社長自身「ちょっと高いと思う」と発言しているのを見ると、確かにここで、先行した2社よりも安い値付けをするという冒険もできたかも知れないし、また、音声定額プランに関しても、独自の切り口で勝負するというのもあったろう。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2014年6月28日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額525円)の申し込みはこちらから。
しかし、KDDIが2500円といった料金で仕掛ければ、当然、他社は同額まで下げてくるだろうし、結局は同じ金額で横並びになるのは明白だ。
また、あまりに違った切り口で攻めるとなると、今度は消費者が「他社との違いがわからない」ということで、KDDIとしての差別化の意味がなくなってしまう。過去の新料金プランや学割キャンペーンを振り返ると、1社が尖ったことをしても、他社が真似するので結局は横並びになる歴史を繰り返してきた。
今回、KDDIはデータプランにおいて「ギフト制」と「パケット容量を細かく設定する」という2つで差別化を図ってきた。パケット容量を細かくするのは他社でもすぐに真似できるだろうし、ギフト制もKDDIのスタートが12月1日ということを考えると、それまでに真似されることもあるだろう。下手をすると他社のほうが先にギフト制を導入する可能性だってあり得そうだ。
今回の料金戦争で「3社横並び」を嘆くよりも、既存の料金プランを廃止するというほうが、よっぽど消費者に対してのマイナス面が大きいと思われる。
KDDIこそ既存プランの廃止日を未定としているが、先行2社に至っては8月に廃止になると明確にアナウンスしている。これこそ、KDDIの真似をして、3社で廃止日を延期し続けるという競争をやってもらいたいものだ。
誰もが月額2700円しかできないというのでは「単なる値上げ」と非難されても仕方ない。これでは、MVNOへのユーザー流出が加速してもおかしくない。
NTTドコモは「カケホーダイ&パケあえる」を企画した際、「アメリカのベライゾンやAT&Tを参考にしてプランを設計した」(料金施策担当者)とのことだった。
実際、自分はベライゾンのポストペイド契約をしているが、ベライゾンの場合、月額70ドルで話し放題のプランが用意されている一方で、最低設定の40ドルでは450分の通話がついたプランも選ぶことが可能だ。
ユーザーは自分の利用頻度に応じて、毎月、話し放題にするか、従量制にするかを選べるのだ。
データ通信に関しても、今月は「テザリングが使える4GB」という契約をしつつ、「今月はあまり使っていないな」と気がついたら、ウェブ上で「テザリング不可の2GB」という設定に変更が可能だ。しかも、翌月適用も選べれば、開始日をさかのぼって、月の初めから変更後の料金プランを適用させるということもできてしまうのだ。
実際のところ、ベライゾンで契約すると最低でも音声が40ドル、データ通信が30ドルと日本の2700円に比べてかなり高い値付けになっている。とはいえ、やはりベライゾンは自分の必要とするプランが自由に選べるので、納得感があるのだ。
もちろん、ベライゾンが高いと思えば、ほかにもMVNOはいくつもあり、安いプランを選ぶこともできる。
日本のキャリアが消費者に優しくないのは、一つのプランしか残さず、消費者に全く選択肢を与えないという点がある。確かに、プランが多ければ、今度は「多すぎて選べない」という不満につながるので、キャリアとしては舵取りが難しいのかも知れない。
ひょっとすると、今回の新料金プラン戦争は、最後まで既存のプランを残し続けたキャリアが多くのユーザーの支持を集めるというのもあり得そうだ。
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