「3社間競争より気がかりなのはMVNO市場」 「au WALLET」やミャンマー事業で新市場狙うKDDI
「au WALLET」の申込数が300万を突破し、順調な滑り出しを見せるKDDI。決算発表会で田中孝司社長は、オフライン決済市場やミャンマーへの進出など、新事業への意欲を見せた。
KDDIは7月30日、2015年3月期の第1四半期決算説明会を開催。田中孝司社長は、「連結営業利益は1948億円で、2期連続2桁成長に向けて順調な進ちょく」と話し、「auスマートパス」などの付加価値売上が伸びたことや、au通信ARPU、解約率の改善などがあり、モバイル通信料収入は大きく成長した。
ただキャッシュバック戦争があった春商戦に比べて夏商戦ではそこまで多くの新規ユーザー獲得は望めなかった。「iPhone発売があるため、どうしても下期に重きを置いた計画になってしまう。現時点でまだ先は見えない」と田中社長は話す。KDDIは今後もユーザー数(ID)とARPU拡大の両軸展開をしていく方針だ。
モバイル通信料収入については、8月1日から提供される新料金プラン「カケホとデジラ」に注目が集まる。田中社長は「まだ先は読めないが、7月1日から実施している先行キャンペーンは予想通り」と語った。新料金プランでは、2〜13Gバイトの6段階からデータ通信プランを選べるほか、12月からは家族間で余ったデータ容量を贈り合える「データギフト」も提供予定だ。さらに、「auスマートバリュー」の対象として、新料金プランを適用したauケータイが追加される。
ネットワークの強化にもますます力を入れていくことを明言。2014年6月末時点で「実人口カバー率は800MHz帯で99%、2.1GHz帯で90%を達成」(田中社長)した。3.5GHz帯についても「当然(総務省に)申請する」と田中社長は語った。
ARPUの改善については、「au WALLET」の利用が後押ししているようだ。5月21日のサービス開始から41日で申込数が300万を突破し、「決済額についても予想以上」(田中社長)だという。機種変更や新規契約時に付随的に加入することが多い「auスマートパス」(2014年6月末時点で1070万会員)と異なり、au WALLETは端末購入に依存せず、幅広いユーザーを獲得できる強みがある。またコンビニなど実店舗での支払いにも使えることから「これまで主戦場としてきたオンライン市場に加え、これからはオフライン市場も開拓していく」と田中氏は意欲を見せた。
新市場開拓という面では、ミャンマーでの通信事業参入にも注目が集まっている。ミャンマー国営郵便・電気通信事業体であるMPTに対し、KDDIの現地法人KSGMがマーケティングや技術・運用のノウハウを提供し、新規設備や資金投資などをしている。ミャンマー国内の携帯電話契約数は2013年時点で683万契約で、普及率はわずか10.5%。「今後伸びしろのある非常に魅力的な市場」と田中社長は捉えている。
7月29日に開催されたドコモの決算説明会でも解約率の改善が発表されたが、KDDIも同社水準で過去最低の0.54%まで下がったことを明らかにした。「キャッシュバックによるMNP戦争が沈静化したことで、3社間でユーザーが流動する動きが減ってきた」と田中社長は分析している。
質疑応答では総務省のSIMロックフリー解除や3社間の新料金プランなどについての質問が飛び交ったが、田中社長は「3社間競争よりも気になるのはMVNO市場。そちらの利用が浸透すると、旧来の枠組みと異なるところで大きな変化が起こる。あまり影響がないという意見もあるが、先が読めない」と心中を語った。ドコモが先行してサービスを提供しているVoLTEについては「現在試験中」とし、新サービスの有無や提供時期などについては明かされなかった。
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