日米共同開発でシナジーを最大化 シャープの技術を結集させた「AQUOS CRYSTAL」:国産スマホの反撃なるか
業界初のフレームレス液晶を搭載したシャープ製の「AQUOS CRYSTAL」。ソフトバンクとSprintのシナジー効果とスケールメリットを最大限生かすことで、独自性を打ち出しつつ、開発コストの削減にも成功したという。
ソフトバンクモバイルは8月18日、米Sprintと共同開発したシャープ製のAndroidスマートフォン「AQUOS CRYSTAL」を発表した。国内では8月19日から予約受付を開始し、8月29日に発売する。
また米国向けモデルを、Sprintおよび同社のプリペイド携帯電話ブランドであるVirgin MobileとBoost Mobileでも販売する。Sprintはソフトバンクが2013年7月に買収した全米シェア第3位の携帯電話キャリア。新端末発表会に登壇したソフトバンクモバイル マーケティング・コミュニケーション本部 マーケティング戦略統括部 統括部長の田原眞紀氏は、「(買収完了から)この1年、ソフトバンクグループは世界最大級のモバイルインターネットカンパニーとしてシナジーを最大化するべく取り組んできた。その成果の第1弾が『AQUOS CRYSTAL』で、グループで独占販売する」と説明した。
AQUOS CRYSTALは、「業界初」(ソフトバンク)のフレームレス構造液晶を搭載しているのが最大の特徴。表示画面だけを持つ感覚でWebブラウジングを楽しめるほか、カメラもファインダーと被写体の境目も限りなく細いため「背景を切り取るように撮影できる」(田原氏)という。なお解像度はHD表示(720×1280ピクセル)で、パネルはIGZOではなくS-CG Siliconを採用している。
フレームレス構造はボディサイズのコンパクト化にも貢献しており、同じ5型液晶を搭載した「AQUOS PHONE Xx 206SH」と比べて、幅で4ミリ、高さで7ミリのダウンサイジングを実現。田原氏は「従来の大画面スマートフォンは女性の手では片手操作が難しかったが、AQUOS CRYSTALなら片手操作や文字入力も簡単に行える。私自身も本当にコンパクトで使いやすいと感じている」と自信を見せた。
もう1つの特徴が、音にこだわった点。AQUOS CRYSTALはHarmanの音楽復元技術「Clari-Fi(クライファイ)」を内蔵しており、AACやMP3などの圧縮音源やYouTubeなど動画共有サイトのサウンドを高音質化して再生できる。その臨場感あるサウンドをすぐに楽しめるよう、製品にはharman/kardonのBluetoothスピーカー「harman/kardon ONYX STUDIO」を同梱する。
田原氏はこのほかに充実の基本機能として、実使用時間で3日間超のバッテリー持ちやスマホのカメラをかざすことで英語語・韓国語・中国語を翻訳できる「翻訳ファインダー」、VoLTEおよび高音質な通話ができるHD Voiceをソフトウェアアップデートでサポートすることなどを挙げた。しかし米国市場も視野に入れた製品開発のためか、日本独自機能と呼ばれているおサイフケータイやワンセグ/フルセグ、赤外線通信には非対応だ。
そこで、国内限定の“プレミアム”モデル「AQUOS CRYSTAL X」も同時に発表された。こちらはフレームレス液晶を5.5型のフルHD表示(1080×1920ピクセル)ディスプレイにサイズアップし、おサイフケータイとワンセグをサポートしたハイスペック版。発売は12月以降を予定しており、ソフトバンクのVoLTEへ最初に対応する機種になるという。
発表会にはシャープの高橋興三社長も出席し、「シャープはスマートフォン事業だけでなく、その核となる通信技術を非常に重要視している。スマホ以外のフィーチャーフォンはもちろん、白物家電や自動車、インフラと連携する通信技術の分野で地位を築くには、一番進んでいる米国市場へ挑戦しなければならない。今回、ソフトバンクモバイルそしてSprintと一緒に米国で戦うチャンスを頂いたことは大変深く感謝している」とあいさつ。「AQUOS CRYSTALはシャープが持つ要素技術を結集したもの。今までにない視覚体験と高音質なサウンドを楽しめる」と自信を見せた。
Sprint買収から1年 日米共同開発の成果第1弾
AQUOS CRYSTALとAQUOS CRYSTAL Xの開発では、ソフトバンクグループが新たに導入した共同開発プラットフォームが使われた。田原氏はそのメリットを、「端末開発の効率化だけでなく、調達スケールを拡大させ、競合優位性がある独自仕様の端末を提供できる。今後にもぜひご期待いただきたい」と強調した。
日米のグループ間で共同開発されたのは端末だけでなく、同日発表された「App Pass」も同様。こちらもスマホ同様、日米のユーザーに対して世界中のコンテンツパートナーのアプリを提供可能だという。日本では月額370円(税別)で、総額4万円以上のアプリが使い放題になるだけなく、有料アイテムの購入に使える500円分のチケットがもらえる。こちらも8月29日から国内でサービスを開始する。
では共同開発でどれくらいのコスト削減ができたのだろうか? プロダクト・サービス本部 商品企画統括部 統括部長の足立泰明氏は「端末開発の具体的な金額は差し控えるが、動作検証や仕様策定のパートを2社で分けることで、工数を減らすことができた」と明かす。そしてユーザーにとってのメリットとして「やはりコストの部分が一番大きい。調達コストが下がればユーザーにも還元できる。またApp Passもそうだが、グローバルのスケールメリットを生かした端末やサービスを独占的に提供できるのがメリット」という考えを示した。なおAQUOS CRYSTALの販売価格は、番号ポータビリティ(MNP)利用時に実質0円になる見通しだ。
新型iPhoneが9月に登場すると観測される中でのAQUOS CRYSTAL発売について田原氏は、「準備ができたのでこの次期に販売させていただく。競合との状況を考えると、Android端末は独自仕様のもののほうが引きが強い。AQUOS CRYSTALが我々の戦略商材と考えていただいて問題ない」とコメント。国内向け機能に対応していないなど、共同調達によってグローバルモデル的なスペックになっているが、「(おサイフケータイなどを)必要としているユーザーは多いが、必ずしも必要ではないというユーザーも結構な数がいる。そしてコスト面で、調達スケールの効果を最大化するために(このスペックでの)投入を考えた」(田原氏)と説明した。
共同開発のパートナーとしてシャープが選ばれたのは、「この端末の特徴はフレームレス液晶だが、これを日米で独占販売できる点を重視したため」(足立氏)だという。足立氏はほかのメーカーと共同開発する可能性に対し、「いろいろなご提案は頂いているが、現時点で決まっていることはない」とコメントした。
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