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「格安スマホ」は誰のもの? MVNOが抱える矛盾と課題が見えた1年ITmediaスタッフが選ぶ、2014年の“注目端末&トピック”(編集部村上編)

2014年は「格安スマホ」の認知度が一気に高まった1年だった。スマホ初心者やシニアを狙うMVNOも多いけれど、やはりまだハードルが高い印象が否めない。

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 2014年のモバイル業界で最も注目すべきトピックの1つとして、「格安スマホ」「格安SIM」が挙げられるだろう。この1年でMVNOサービスの数は20社近くなり、1社が料金プランを改定すれば他社がそれに続くという光景が毎日のように続いている。雨後のタケノコのように矢継ぎ早に新サービスも登場するため、その全体像を把握することも困難になってきた。携帯電話などに詳しくない人にはやや難しい印象を受ける分野だが、MVNOはシニアやスマホ初心者といったエントリー層を取り込もうとする動きを見せている。「イオンスマホ」や「freebit mobile」(フリービット)などがその代表例だ。しかし、本当に今のMVNOサービスは彼らにとってスマホ料金を節約する有効策の1つなのだろうか。

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続々と数が増えるMVNOサービス

ユーザーもいずれMVNOに「キャリアショップ」を求める?

 格安スマホを使えば、確かに月額料金は大幅に安くなる。しかし、安くなることでデータ通信容量や通信速度が制限されたり、大手キャリアの「キャリアショップ」のような実店舗がなかったりと、価格とトレードオフになる部分も当然ある。以前MVNOユーザーにインタビューした時には、誰もがスマホ料金の大幅な節約に成功し、「使い勝手についてもおおむね満足」という声が挙がった。

 ここに登場する3人は、どちらかといえばITリテラシーが高いといわれる人たちだ。MVNOを使う時には、「端末の調達」「MVNO・料金プランの選定」「初期設定」「トラブル時の対処」など、自ら処理しないといけないことが多々あるが、3人ともインターネットを駆使して自分で解決している。データ通信専用SIMを使う人は、IP電話を活用する必要も出てくる。また、何より「価格の安さ」と「自分で問題を解決するコスト」をトレードオフとして割り切っている点が最も重要だろう。

 しかし、MVNOがターゲットに据えているシニア・スマホ初心者といった人たちは、あまりスマホの操作や料金プランなどに明るくない。フィーチャーフォンからMVNOに乗り換えた主婦へのインタビューがその一般像に近いといえる。

 ここに登場する女性は、テレビや雑誌などで、スマホの個人情報流出やウイルス感染などの話が取り上げられることで、スマホに対してマイナスのイメージを抱いていた。シニアや非スマホユーザーをターゲットにし、テレビショッピングや実店舗展開を進めるフリービットも、そういったユーザーはスマホに対して「高い、難しい、怖い」などのイメージを持っていると説明している。

 大手キャリアの場合は、ユーザーが何か悩みがあれば相談しに行ける“駆け込み寺”のような役割を担うキャリアショップを構えており、ユーザーにとって心強い存在となっていた。しかし、MVNOの場合はフリービットやU-NEXTなど一部を除き実店舗がない。分からないことはWebサイトで調べるか、コールセンターに電話して聞くか、身近にいる詳しい人に聞くしかない。

photophoto 南青山の「U-NEXTショップ」(写真=左)。東京・渋谷のスペイン坂にある「freebit mobile」のアトリエ(直営店)(写真=右)

 しかし、今メインターゲットにされているシニアやスマホ初心者は、分からないことやトラブルを自ら処理できない人も一定数いる。価格が安いというだけで、そのような人たちが本当に格安スマホを使った方がいいのかは議論があると思うが、間口を広げるための解決策として、キャリアショップの代わりとなるような相談窓口の設置が挙げられる。普段、キャリアショップでさまざまなユーザーの悩みに答えるスタッフを見ていると、現在あるMVNOの相談窓口にもさまざまなバリエーションの質問が飛んできていることも想像に難くない。スマートフォンに詳しくないエントリー層をメインターゲットにうたうからには、MVNO側のサポート体制の充実は急務といえる。裏を返せば、サポートが不十分なままでは、そういったユーザーに訴求しても響かないということだ。

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NTTドコモとJR東日本が開催したシニア向けスマートフォン教室でも、「テレビを見ていて、炎上など、SNSは怖いイメージがある」と話す人がいた

「格安スマホと呼ばないで」――「安さ」に付きまとう“安っぽさ”

 1年間MVNO関連の取材をする中で、印象的だったことがある。それは“安っぽさ”を連想させるため、「格安スマホ」という言葉を嫌うMVNOやメーカーが多いことだ。フリービット、ニフティ、Huaweiなどは、発表会の中で特にその旨を強調している。

photophoto Huawei端末が格安スマホじゃない理由(写真=左)。ニフティも「格安スマホではない」と主張する(写真=右)

 端末やIP電話回線の品質の高さ、サポート体制の充実など、各社が「格安スマホではない」と主張する理由はさまざま。しかし、真っ先に価格の安さを連想できるという分かりやすさもあるため、むしろユーザーにとって親しみのある言葉として今後も浸透していくように思う。その中で「安かろう悪かろう」というイメージを払しょくするためのプロモーションが各社に求められてくるだろう。au回線を使う「mineo」を提供するケイ・オプティコムは、今後はプロモーションに注力することを発表しており、テレビCMで「メジャー感」や「安心感」を全面に打ち出す方針を明らかにしている。


 MVNO側のうたい文句とは異なり、まだITリテラシーが高い人向けの商品だという印象が強い格安スマホ。今後の課題は、サポートのさらなる充実やブランドイメージの構築だ。各社が容量追加や値下げ競争などの料金プラン改定で体力勝負を強いられているが、1年後、そして2020年を迎える5年後に、どれだけのMVNOが生き残っているのだろうか。

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