「料金合戦はもう終わりだと思っている」――U-NEXTが仕掛ける次の一手:MVNOに聞く(2/2 ページ)
LTE通信の定額サービスをいち早く始め、6月末時点で「U-mobile」の契約数が38万を突破するなど好調のU-NEXT。今回は取締役 通信事業担当役員の二宮康真氏に、これまでの歩みと今後の戦略を聞いた。
訪日外国人に好評のプリペイドSIM
―― U-NEXTさんは、プリペイドにも力を入れている印象があります。こちらについては、いかがでしょうか。
二宮氏 順調ですね。インバウンドのマーケットも伸びていますが、その中でもシェアは高いと思います。何をしているかというと、空港や現地の旅行代理店と手を組み、現地でお申し込みいただけるようになっています。東南アジアや中国などが多くなっていますが、プリペイドでいうと、たぶん今、シェアは1位なのではないでしょうか。
代表(宇野康秀氏)も言っていますが、弊社も今インバウンド需要強化ということで動いています。プリペイドが認知され始めたころには、現地との契約も結んでいました。おそらく、他社が参入されるケースもあるとは思いますが、全面的に現地の方と組んでやるというケースはなかなかないのではないでしょうか。
―― プリペイドの料金はどうなっているのでしょうか。
二宮氏 比較的リーズナブルにしています。各社とも利用期間が長い中で、実際に調べてみると旅行者は7日間ぐらいの滞在が多い。そこで、いち早く7日間プランを打ち出しました。外国の方々はSIMカードを差し替えることには慣れていますし、違和感がないのだと思います。
―― 海外出張の際に、SIMカードが販売されているのを見かけたことがあります。ただ、あまりU-mobileであることを訴求していないようにも見えました。これはなぜでしょうか。
二宮氏 確かにサービスは提供していますが、名前は変えていただいています。一方で、U-mobileというブランドも、一部海外では浸透し始めています。特に東南アジアですね。今はU-mobileブランドの方が売りやすいと、名前を変えたところもあります。あちらは日本以上に口コミがすごく、実際に来られた方から一気に広まっていきました。
―― 国や地域では、どこが多いのでしょうか。
二宮氏 一番多いのは中国、台湾、あとは東南アジアですね。
―― 国内向けには、あまりやられていないようですが。
二宮氏 そうですね。国内ユーザーはあまりいません。プリペイドを使う方もいるにはいるのですが。中にはゲームで一時的に使う方がいます。また、キャリアさんの帯域を使い切ってしまったとき、プリペイドでしのぐという方もいるようです。
―― ちょっと意地悪な質問かもしれませんが、38万契約の中に、プリペイドがたくさん含まれているということはありませんか。
二宮氏 いえいえ。もちろん契約の中には含まれていますが、プリペイドはあまり純増には貢献しません。期限が切れると、マイナスになってしまいますからね。ポストペイドは直近でも安定していて、ずっと出ている状態です。
料金合戦はもう終わりだと思っている
―― MVNO市場を見渡すと、料金もだいぶ下がってきました。U-NEXTさんも定額を打ち出した後は、料金的にインパクトを出しづらいのではないでしょうか。次の一手として考えていることがあれば、教えてください。
二宮氏 正直申し上げて、料金合戦はもう終わりだと思っています。8月からは、違う軸でサービスを設計しようとしているところです。弊社はいち早く映像のポイントが付くようなこともやってきましたが、それ以外にもメジャーだからこそできるサービスがあります。使い放題を打ち出している以上、いかにこれを使ってもらうかは重要なポイントになりますからね。コンテンツを絡めた商品設計を、8月にはスタートしたいと考えています。
―― おっと。では、インタビューもその後にした方がよかったですかね(笑)。映像や電子書籍のようなものでしょうか。
二宮氏 近いですが、ちょっと違います。
―― では、発表を楽しみにしています。ところで、U-mobileのトラフィックを使ってU-NEXTの映像を見るという方は、やはり多いのでしょうか。
二宮氏 U-mobileのトラフィックで映像を見ている方はあまりいないのですが、純粋なU-NEXTユーザーになる方がけっこういますね。どうせポイントが付くならこっち(大画面)で見ようということで、ご利用いただけるようになるケースが比較的多くなっています。U-NEXTのサービスが、テレビでしっかり見られるような対応になっているのも効いているのだと思います。
―― 最後に、8月以降の展開を教えてください。
二宮氏 今後のモバイルについては、戦略の軸が3つあります。1つ目は、今までの料金競争ではないサービス設計を、8月、9月と打ち出していくこと。もう1つが固定との連携で、これはかなり強化していくつもりです。3つ目はマーケティングもそうですが、うちの強みは流通経路をしっかり作っているところにあります。キャリアさんがやってきたように、きちっとした戦略を立て、店舗やアライアンスは強化していきます。
取材を終えて:地道な努力は好印象、次の一手にも期待
これまであまり表に出ていなかったが、実はユーザー数を急激に伸ばしていたU-mobile。その背景には、料金プランの独自性に加え、取扱店の拡大など、販路をきっちり整備している同社の努力があった。
一方で、二宮氏が指摘していたように、MVNOの料金競争は行き着くところまで来た感がある。MVNO業界全体に、何か次の一手が求められているのかもしれない。U-NEXTは映像配信を得意とする会社だけに、コンテンツをモバイルとうまく連動させたサービスも期待できる。少なくとも、毎月の料金に対してポイントが付く以上の何かは打ち出せそうだ。8月に発表を予定している新戦略にも、注目したい。
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