「使いやすさとデザインを重視」 日本参入を目指すSmartisanは文科系ユーザーを狙う:山根康宏の中国携帯最新事情(2/2 ページ)
次々と生まれる中国のスマホメーカー。その中でも特に異色なのが、“元英語教師”のルオ・ヨンハオが創業したSmartisanだ。デザインや使い勝手を強化する独自路線の狙いを聞いた。
このように各社が同じ方向を向いていく中で、われわれはAppleと同じ文科系ユーザーをターゲットにした製品作りをしていこう、と考えました。この道を進もうと明確に考えたメーカーは恐らくたった1社、われわれだけです。つまりわれわれからすれば文科系ユーザーという市場はApple以外にライバルはなく、レッドオーシャンではなくブルーオーシャンであり、まだまだ無限の可能性がある市場と考えているのです。
それは、私たちSmartisanがAppleをまねるとか、Appleと同じような企業になるという意味ではありません。テクノロジー系の会社は理科系の人がトップに立ちますが、スティーブ・ジョブズ時代のAppleや、あるいは盛田社長時代のソニーのように、テクノロジーだけではなく文科系への造詣にも長けた会社を目指したいと思っているのです。
ちなみにわれわれの初代スマートフォン「T1」のユーザーにアンケート調査を行ったところ、約40%のユーザーがT1の前にiPhoneを使っていたと答えています。文科系のユーザー層をターゲットにするという考えは間違っていなかった、とその時感じました。T1発売後はT1の写真をSNSでシェアするユーザーも多く、T1と一緒に並べられる製品はMacBookなどが目立っていました。それもあり、AndroidとMacの間で簡単にデータ転送できるアプリ「SmartFinder」も開発しました。本当ならPCも作りたいところですが、既にPCは成熟産業で参入するには遅すぎるでしょうね。
日本参入の意図はどこにあるのか?
―― 2015年8月に若者をターゲットにしたモデル「U1」(JianGuo)を発表した時、日本市場参入の話をされたとのこと。どうして日本を狙うのでしょうか?
ルオCEO われわれは製品の品質に自信があります。実際に日本の関係者に「T1」と後継モデルの「T2」を見ていただいたところ、大きな興味を持っていただきました。しかしまだまだ中国でもグローバルでも認知度は低いままです。日本という先進市場に製品を投入し、成功すれば、製品の評価も高まると考えています。
―― 日本への参入はいつくらいになるのでしょうか?
ルオCEO われわれの製品は周波数が完全に日本向けに対応していませんから、それを対応させる必要があります。また販売チャンネルの調整なども必要です。2015年秋に進出の話をしながらまだ時間がかかっているのは、必ず成功すると自身が持てる製品の準備を完了してから日本市場へ参入したいと考えているからです。
―― 日本でも「Smartisan」ブランドで製品を販売するのでしょうか?
ルオCEO ブランドに関しては柔軟に考えています。例えば欧米の有名メーカーとの提携や買収なども考えられます。われわれは自分たちの製品そのものを世界中の人々に知ってほしいと思っています。そうであればブランドを変更して日本に進出する可能性もあるかもしれません。このあたりは今後じっくりと検討していきたいと考えています。
ところで製品に対するブランド信仰はどこの国にもあります。私自身がスマートフォンの開発現場で、サプライチェーン側から「日本製と韓国製のチップセットがない」と言われたとき「なぜ? それではだめだ」と当初は言ったんです。それから後になって自分自身で気が付いたのですが、ブランドに対するイメージやある種の偏見にも実は合理性があると思います。消費者は製品を購入する際、全ての情報を詳細に調べる時間はありません。例えば自動車を買う時にドイツ製を選ぶ、といったブランド信仰は製品の選択にかける時間のコストを節約してくれます。
イメージや偏見を消費者の皆さんになくしてほしい、ということではありません。私たちが考えているのは、どうやってよい製品を作るか、そしてそれをどうやって多くのユーザーに届けるか、それだけなんです。私たちは既に素晴らしい製品を持っていると自負していますから、それを多くのユーザーに送り届けるために、最適なビジネス手法を採用したいと考えているのです。
―― 日本に対しての印象はいかがですか?
ルオCEO 日本にはさまざまなデザインブランドがありますし、特に私の好むミニマリズムを追求したシンプルなデザインのものが多いですね。インダストリアルデザインの面でも非常に勉強になります。日本のインテリアショップや雑貨店は、何日間訪れても飽きません。
―― スマートフォン以外の製品展開の予定はありますか?
ルオCEO もちろんいろいろな計画はあります。ですがまだわれわれのスマートフォンビジネスは成功を収めていません。そのためまずはスマートフォンのビジネスに集中することを考えています。それと並行しながら、スマートフォンを中心とした関連製品の研究も行っています。
例えばスマートフォンと連携する空気清浄機、スマートロックなど、これら関連製品のラインアップも将来的には増やしていきたいと思います。少なくとも1〜2年以内にはその計画を始めたいですね。
インタビューを終えて
中国の新興メーカーと言えばXiaomi(シャオミ、小米科技)が有名だ。XiaomiのCEOのレイ・ジュン(雷軍)氏はそのカリスマ性から「中国のジョブズ」とも言われている。一方、Smartisanのルオ・ヨンハオCEOは、インタビュー中に急に立ち上がってホワイトボードを使い手書きの図を使った説明を始めるなど、その振る舞いは人を引き付ける「人気教師」という感じだ。
デザインやUI/UXを独自に学び、使いやすいだけではなく美しい製品づくりを目指すSmartisan。ルオCEOの熱い思いが込められた製品の日本投入は大いに期待できるものになりそうだ。
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